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難しいことほど簡単な言葉で伝える

柘(つげ)いつか

柘(つげ)いつか

作家。東京都生まれ。
『一流のサービスを受ける人になる方法 極(きわみ)』(光文社)が好評発売中。ベストセラーとなった『別れたほうがイイ男 手放してはいけないイイ男』『成功する男はみな、非情である。』はアジア各国で翻訳された。テレビのコメンテーター、トークショー、企業セミナーのプロデュースも行っており、世界50カ国以上を訪れ、各国・各界に多彩な人脈を持つ。日本アカデミー賞協会会員。

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去る12月1日(金)、『現代用語の基礎知識』選「2017ユーキャン新語・流行語大賞」授賞式が、東京の帝国ホテルで開催されました。
これは、この1年間に発生した様々な言葉の中から、より軽妙に世相を表したもの、インパクトを与えたもの(人物や団体)に与えられる賞で、ノミネートされた30語の中から「インスタ映え」と「忖度」が年間大賞に選ばれ、続いてブルゾンちえみの「35億」、「Jアラート」「睡眠負債」「ひふみん」「フェイクニュース」「プレミアムフライデー」「魔の2回生」「○○ファースト」と、トップ10が発表されました。

 

日本人は、アメリカンジョークのような会話は苦手でも、新しい言葉を作ることや、略語を生み出す知恵には長けているようです。

ただし年々負の言葉が多くなっているのが気になるところで、こうなると、果たしてもらって嬉しい賞なのかという気もしてきます。

また、選考委員特別賞は、陸上男子100メートルで10秒の壁を破った桐生祥秀選手の記録「9.98」と、藤井聡太四段の「29連勝」で、数字に絡むものが並びました。

 

この表彰式に、私は今年、久しぶりに参加しました。
主催者とも再会し、かつてこのイベントは現在改装中の東京会館で行われており、昔とずいぶん会場のレイアウトが変わったことや、審査員だった藤本義一さんがご存命だった頃のことなど、懐かしくお話ししました。

SNS時代は、誰もが情報発信者であり、1億総タレント時代。

とりわけ見た目は重要な要素で、「インスタ映え」が大賞を取ったことでもわかるように、食べ物、ファッション、風景など、全ては自分をプロデュースするための小道具なのです。

例え目の前の料理が冷めても、食べきれずに残しても、インスタ映えすればOKという、困った事態も囁かれています。
情報過多で、皆、他人に興味が無い時代です。

何でもすぐに広まるけれど、消費も早い。
そして、たちまちにどんどん、忘れる。
アメリカファーストから始まり、都民ファースト、果ては自分ファーストになっているようです。

「いいね」欲しさに写真を盛りに盛って、自分を偽り続けるために時間もお金も浪費し、面白がりながらもストレスを抱える……狂った状態になっていることが切ないですね。

最後に、もう一方の大賞受賞語の「忖度」という耳慣れない言葉。

これは「他人の気持ちを推しはかる」という意味ですが、「思いやる」ではなく「推しはかる」というところがミソで、「言わなくてもわかるだろう」的な、政治臭漂う、都合の良い言葉として使われているように思います。

 

ニュースを見ていると、他にも普段使わない、実体がない言葉が横行していることが気になります。
例えば「拉致被害」という言葉。

「そんなんじゃない、誘拐なんですよ!」と、被害者の家族と接する機会があった際、私にそう訴えかけられました。

「集団的自衛権」の意味も、きちんと説明出来る人がどれだけいるでしょうか。
私はコピーライター時代に、あの糸井重里先生の講義を受けたのですが、その際、「簡単な事を難しく言うのは簡単だが、難しい事を易しく説明出来るのが本当の賢い人」と教わりました。

言葉を難しくすることで生々しさがなくなり、実態がおぼろげになり、一見解決したように思え、皆がそのことに無関心になってしまうのは、ある意味危険なことです。

言葉のトリックによって、漠然とした不安を抱えさせられてしまう……。

よくわからない言葉に騙されるなと、注意を促したいところです。

 

毎年この時期は、さまざまな賞やランキングが発表されますが、個人的に一つ、嬉しかったことがあります。

アメリカのオンライン辞書のメリアム・ウェブスターの「今年の言葉」に、「フェミニズム」が選ばれたことです。
私が8月に出版した『ガラスの天井のひらき方』(KKベストセラーズ刊)は、まさに私なりにフェミニズムについて言及した書籍だったからです。

勇気を出した第1歩の作品でしたが、自分なりの結果が出たことを喜んでおります。
皆様も、興味がおありでしたら御一読くださいませ。

 

いつか

オフィシャルサイト   itsuka-k.com

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