人間誰しもコンプレックスはあるもの。もちろん私にもいっぱいあって、長い間持ち続けているものもあれば、今となっては気にならないもの、最近新たに出現したものなど、さまざまです。いつまでも悟れないというか、悩みはつきないですね(笑)。
とはいえ年齢を重ねるにつれ、コンプレックスとは適当につきあうようになりました。10代、20代の頃は“コンプレックス=克服すべきもの”という意識が強くて、結果を出せない自分にいつもげんなり。それでまた落ち込むという悪循環に陥るので、コンプレックスに対して熱くならなくなったような気がします。
前置きが長くなりましたが、なぜこんなことを書いたかというと「私は“絵がヘタ”というコンプレックスを一生持ち続けるんだろうな」と思ったから。
絵を鑑賞するのは大好きですが、描くセンスはまるでなし。子どもたちが小さい頃犬の絵を描いてあげたら、我ながら「どう見てもウサギ」と思ったほど。当時も今もそれを克服しようという熱さがないので、「今後もずっとヘタ」をしみじみ確信した、というわけです。
さて、ここからが本の話。伊藤理佐さんの漫画を読むと、「絵のセンスがあるってこういうことなんだ」と、いつもほれぼれします。
ジャンルで言えば、ヘタウマなのかもしれません。でも、簡略化した線でひょいひょいと描かれている(ように見える)のに、「その人がどんなポーズをとっていて、何を考えているか」がひとめでわかる! 伊藤さんご自身を描く場合は“目も口も眉も一本の線”なのに、長さや角度を微妙に変えて、感情の種類や起伏を豊かに表現してる! 「プロだな~」とつくづく思います。
そんな絵だから、ステキな女性になるための伊藤さんの格闘(!?)の記録『女のはしょり道』シリーズは、ビミョーな女心が軽妙かつ的確に表現されたエッセイ漫画になっています。
何より素晴らしいのは、
「はしょる」
という魅力的な言葉に注目したこと! 「はしょる」には省略する、省いて短くするなどの意味がありますが、そのウラには「省いても結果はあまり変わらない」という意味が隠されているような……。だったら面倒なやり方より、はしょるほうを選びたくなるのは当然。それがステキになる方法だったらなおさらです。
またこの本は、
“イタくなくてキレイなアラフォー女性になる”
という大問題にも挑んでいます。つまり“楽して自然なステキさを身に着ける”という、誰もが持っている(!?)野望がテーマ! だから「わかるわかる」がいっぱいだし、一生懸命さがけなげだし、でもちょっと笑えるし……というわけで、何度でも読んでしまいます。
ステキさを身に着けるといっても漠然としていますが、ここでは伊藤さんが日常生活の中で「これではいけない」とハッとしたことがお題。第2弾の『また!女のはしょり道』ではざっくり分けて
“きちんとしなきゃ系”
“美容・ファッション系”
このとき伊藤さんが妊娠・出産の時期だったので
“妊婦・ママ系”
に分けられます。
個人的には、乳児連れママの美人度ヒエラルキーの話がクスクス笑いが止まらないほど面白かった! 身につまされたという意味では、きちんとメイクしすぎると“自分じゃないヒト”になってしまう話と、自分の横顔・横カラダを見て愕然とする話が2トップ。うなづきながら、ため息をつきながら、やっぱり笑ってしまいましたが……。
「私はキレイになるためにパーフェクトな生活をしている」と自信満々な方以外は、この本を読むと思い当ることが多々あって、「ドキッ!」とすると思います。でも伊藤さん同様、「どうせ私は……」と諦める気にはならず、ちょっとずつでも頑張ってみようと意欲がわくはず。ダメさや迷いに共感すると、何だか楽しくなるだけでなく、「よし、ここからがスタート!」という気持ちが生まれるような気がするのです。