「もう、年だから」と自分に言い訳しない女性は素敵!
今回は、数々の人気作を生み出した漫画家から声楽家に転身した、池田理代子さんの輝く前向きな生き方をご紹介します。
池田理代子さん Riyoko Ikeda
profile
1947年大阪府生まれ。劇画家・声楽家。
東京教育大学(現・筑波大学)在学中より漫画を描き始め、
1972年に『ベルサイユのばら』の連載を開始、大ヒットとなる。
『オルフェウスの窓』で日本漫画家協会賞優秀賞受賞。
1995年に東京音楽大学声楽科に入学。2005年、ソプラノ歌手として
CD『ヴェルサイユの調べ~マリー・アントワネットが書いた12の歌』を発表。
2009年、フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章を授与された
2014年から’15年にかけて発売された『ベルサイユのばら』11巻・12巻。
マーガレット連載時の本編では描かれなかったエピソード集。
年末には再び「マーガレット」に新作エピソードが掲載される予定。
http://margaret.shueisha.co.jp
©池田理代子プロダクション/集英社マーガレットコミックス
52歳で声楽家に転身、
池田理代子さんのKeep going! な生き方
『ベルサイユのばら』をはじめ次々にヒット作を生み出した池田理代子さんが、漫画家としてのキャリアを捨て、声楽の道を選んだのは40代のとき。「急に体のあちこちが不調になり、専門医にかかっても原因不明。しまいにはうつも。更年期と診断がつくまで、2年近くがたっていました」突然襲った更年期症状は池田さんに、夢を追うにも締め切りがあると、気づかせたのです。
「女性として生まれたからには、出産してお母さんになりたかったのに、間に合わない…!」
そこで池田さんは、真っ白な紙を前に、人生でやり残していることすべてについて、優先順位と可能性を書いたリストを作成。その中から、やり残しているけれどまだ間に合うランク第1位が、声楽家だったのです。とはいえ、当時まだ一般入試しかなかった大学へは、若い受験生たちと同じスタートラインに立たなければなりません。
「正直、かなり悩みました。現役の若い人たちと競って本当に難関を突破できるのかと。でも、ここでやらなかったら、きっと死ぬとき後悔する」と覚悟を決めたものの、筆記試験の勉強はもちろん、体づくりや歌のレッスンなど、音楽大学受験のためにやらなければならないことは、山積み。
その頃の池田さんは身長165㎝、体重45㎏とモデル並みのスリムな体型だったのを10㎏増量。腹筋を鍛えるために、お腹にのせた電話帳(それも4冊!)が動かないように腹式呼吸するトレーニングを毎日繰り返しながら、持ち前の頑張りで2年間の受験勉強を続け、みごと合格しました。入学後も、初めてのイタリア語や長いブランクのあるピアノの実技など、勉強とレッスンに追われる日々。そんなハードな大学生活の中で、若いクラスメートに「一緒にイタリアに留学して舞台に立とう!」と言われ、同じ夢に向かう同志として、認められるといううれしい経験も。
「日本を代表するソプラノ歌手の東敦子先生に、受験生時代から大学在学中まで指導を受けることができたことも、得がたい経験のひとつでした」
卒業後、ようやく念願の歌手として舞台に立てるようになった池田さんを待ち受けていたのは、プロとしての厳しさでした。努力家で何事もいい加減にできない性格は、いまだに夜も眠れないほど池田さんを追い詰めることも。でも、それまで出なかった高い音域が出るようになるだけで、また頑張ろうと思えるのだそう。
「目指す頂上まではたどり着けないでしょう。でも、だからといってギブアップする気にはなれないのです」
歌う喜びは、まだまだ、池田さんをとらえて離さないようです。
次回は、年齢を言い訳にしない、アラフィフの今読んでおきたい本、6冊をご紹介します。
撮影/矢部ひとみ〈池田さん〉 構成・原文/鈴木美穂