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ダイエットをスタートして2カ月。ある日体が変わっていた

佐々涼子

佐々涼子

1968年生まれ。日本語教師を経て、ノンフィクションライターに。2012年『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(集英社)で第10回集英社・開高健ノンフィクション賞を受賞。最新刊『エンド・オブ・ライフ』(集英社インターナショナル)、他に『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』(早川書房)など

PHOTO©Hayakawa Publishing Corporation

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ノンフィクション作家・佐々涼子さんのダイエットチャレンジ連載。ジムで筋トレと栄養指導を受け、さまざまな気づきを得た佐々さん。ある日、目を覚ますと…

ジムに通い始めて2カ月が過ぎた頃だろうか。朝、寝ぼけたまま寝返りを打つと体の軽さが全然違う。

 

足をぎゅうっと抱え込んで、もう一度伸ばしてみる。
そして体のあっちこっちを触ってみた。まるで他人の体を触っているような気分だ。
徐々に変わってきたはずなのだが、感覚としては、「次の日起きると変身していた」という感じに近い。カフカの小説みたいだ。カフカの『変身』では主人公は虫になっていたが、私はスリムになっていた。

 

特に肩から背中のあたりはまったく別ものだった。ほんの数カ月前までもっさりとしていた。長年、そんな体型をしていたので、これはきっと骨格に違いないと思い込んでいたのだが、その謎の丸みがごっそりなくなっているではないか。驚きだった。「骨じゃなかったのか」あまりに体が変わったので、魂が抜け出て他人の体に入った感じに近い。

 

あれは身長が伸び盛りだったころの小学校の夏休み。寝床から起きあがって立ち上がると、床が少し遠く見えたものだ。あの時も「あれっ?」と思ったものだ。しかし、最近では老化の方向に転がっていくことはあっても、若返る方向に変わることなんてなかった。

 

無理な絶食でやせたわけではないので、げっそりやつれた感じはなかった。
何しろ毎日栄養素を計算して、三食きちんと取っている。肌は弾力があるし、髪も爪も健康になっていた。
そして何より筋肉がつくと体が安定し、居住性がよかった。
朝も、子どものようにおなかがすいて起きる。すがすがしかった。

佐々さん ジムで自撮り

↑ジムにて自撮り。確かに締まってる…

 

トレーナーの吉田さんはうまく動けなくてめげるたびに、こう声をかけた。
「できる、できる、できる」
できると信じなければ、はじまらない。マインドは大事だ。
運動とは無縁な生活をしていたので、限界よりちょっと上の運動をしてぶざまにつぶれるたびに、「伸びしろです」と言ってくれた。

 

年齢を重ねるごとにできなくなることが多くなるのも事実だ。
若い頃なら軽やかにできていたことが、今までのように暮らしていたらできなくなることも増えてくる。

 

でも、体は変わる。必ず変わってくる。もちろん個性はあるので、今から水原希子さんみたいにスリムにはなれないだろうし、なる必要もない。

 

でも、自分の体のことをよく知って、この年齢のこの体で、一番いいコンディションでいることはできる。そこは年の功。誰かより競技で勝つことも必要ないし、誰よりも細くきれいになって好きな人の気を惹く必要もない。ただひたすら自分の安寧のため、快適さのために、今の自分にとって最もいいコンディションを目指していいのだ。

 

そう思えた時、自分に生まれた数々のコンプレックスはいつの間にか消えてなくなっていた。自分で自分を認められ、自分で自分を愛することができたら、人生勝ったも同然である。

 

ほかの人とはいずれ別れる。生き別れにしても、死に別れにしても。でも、自分とは最期の一息まで一緒にいることになる。自分を大切にしないで幸せでいられるはずがない。

 

ものすごく大仰に言うと、私はダイエットを通して愛がわかったような気がする。

 

世の中にはたくさんつらいことがある。体と心で仲間割れをしている場合ではない。協力して、私という小さな「家」を守るのだ。体のために、必要な運動をし、栄養のあるものを食べ、睡眠をとる。そして暴飲暴食で体を傷つけないことだ。

 

 

太ってもあしざまにけなさず、「できる、できる」と励まし、何かうまくいかないことがあっても、「伸びしろ」だと慰める。愛とは、自分自身の中での調和だ。たとえ外で嵐が吹こうと、自分自身が自分自身を丁重に扱うことさえすれば、きっとこの苦境は乗り越えられる。

 

そう心から信じることができたのである。それは大きな成長だった。

佐々さん 海外のマーケットで

 

「Yahoo!ニュース | 本屋大賞 2020年ノンフィクション本大賞」の受賞作品が、佐々涼子さんの「エンド・オブ・ライフ」に決定!

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