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https://ourage.jp/column/life/interview/207546/

コロナの時代に見つめたい、「在宅で死ぬこと」の価値:佐々涼子さんインタビュー〈前編〉

金田ちさと

金田ちさと

フリーランス・エディター。『non-no』、『FIGARO japon』のエディターとして、ファッション、旅・映画などの企画・編集を手掛ける。フリーランスとなり、現在はインタビュー、書評、環境関係などの記事を執筆中。2011年、早稲田大学大学院に社会人学生として入学、政治学・ジャーナリズムを学び修了。趣味は、クラシック音楽とバイオリン演奏。

「家族との潮干狩り」をかなえた、末期がんの女性患者と在宅医療

国内で新型コロナウイルスが猛威をふるっているこの2カ月間ほど、自分だけでなく、愛する家族や親しい人の命があっさり奪われるかもしれない、という状況に、だれもが不安を抱えています。命は人が全く予期せぬことで、不本意なまま終わってしまうこともあるのだと、改めて気づかされる毎日です。

 

そんな中でお話を伺ったのは、ノンフィクション・ライターの佐々涼子さん。

2012年に、海外で亡くなられた方たちを綺麗に修復して国を超えて送り届ける、知られざる存在を描いた『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』で、開高健ノンフィクション賞を受賞されました。その後、2013年から取材を進めたのが、在宅での「終末医療」です。7年もの長きに渡った膨大な取材の記録が、この2月に発売された、『エンド・オブ・ライフ』(集英社インターナショナル刊)です。
 

佐々涼子(ささりょうこ)

神奈川県出身。早稲田大学法学部卒業後、結婚して2人の男の子を出産。日本語教師を経てフリーライターに。2012年『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(集英社)で、第10回開高健ノンフィクション賞受賞。著書は『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』(早川文庫NF)など

 

Our Ageでも連載をしてくださっていた佐々さん。しばらく連載がお休みだったので、どのように過ごされていたのか、気になっていました。

「実は2014年頃から体調が悪く、婦人科で卵巣の摘出手術を受け成功しましたが、以来2018年くらいまで、ずっと具合が良くなかったんです。そのことを連載でも書きましたが、更年期などの体調不良も重なってしまい、しばらくは執筆もすべて休んでいました」。

“もう書けないかもしれない”というところまで行った、という佐々さんですが……。

 

「その後、たまたま入会したジムで面白いトレーナーさんと出会って、厳しく指導してもらい、それがきっかけで、なんと体調はV字回復。(その顛末は、OurAgeの新連載『ようこそ、ダイエットクラブへ 人生立て直し日記』にて執筆中) ちょうどそのころ、ある知らせを受けて……。それをきっかけに、しばらく難航していた本を書き上げることになったんです」。
それが、今回ご紹介する本『エンド・オブ・ライフ』です。「在宅医療」を扱ったこの作品には、がんなどの重い病を患った、終末期の患者さんが多く登場します。
佐々さんが、この取材を始めたのは、体調を崩す前の2013年でした。

「京都で訪問医療を行っている、渡辺西賀茂診療所を訪ねて取材を始めたのですが、最初のころから驚かされました。病院から一時帰宅して、片道3時間の海に潮干狩りに行きたい、という末期がんの患者さんに同行する看護師さんの姿を目のあたりにしたのです」。

 

食道がん末期だった女性(37才)は、京都から愛知県の海まで、念願の潮干狩りに行きたいと希望。その思いをかなえるため、訪問医療のメンバーがボランティアで片道3時間の道のりをともにし、行き帰りに酸素ボンベを携帯して海にたどり着き、帰ってくる、という読んでいてもハラハラする状況の一部始終が、本書には描かれています。

 

最後の時間まで「生ききる」姿に、自分を大切にする力をもらう

 

別の取材では、在宅医療の緩和ケアを選んだ、61才のすい臓がんを患った男性に出会います。命の残り時間は2週間から4週間というときに、診療所の男性看護師の森山さんが企画して、ハープ演奏のホームコンサートを満開の桜の庭で開きます。別れが迫っていても、家族がみんな笑顔。痛みを和らげて最後の時まで大切な人と時間を過ごす、そんな満ち足りた“終末”の時間がそこにはありました。

 

「“終末医療”という言葉から想像していた辛いだけの話とは違い、ここの患者さんたちは、残り時間の最後まで、自分の願いを叶えようとする。そのことに驚き、教えられました」。

 

佐々さん自身、2014年に、7年間寝たきりだったお母さまを亡くされたこともこの本のテーマに影響したようです。

「そもそも訪問看護に興味を持ったのは、母が原因不明の難病を患っていたことがきっかけです。父が自宅で、献身的に手厚い介護をしてきたのですが、ある日母の具合いが悪くなり病院に入ると、父とはまったく違う、規則づくめの看護でした。そのあと母は幸い自宅に戻ることができましたが、ケアする人や環境によって、患者の幸福は左右されるのだと実感しました」。

 

本書には『人に心配りをする母らしく、お盆の日を選んであの世に渡った・・

彼女はこの世に未練などひとつもないだろう。これが家で死ぬこと。これが家で送ること。』

とあります。その一節がこの本のテーマを物語っています。

 

「取材しているときには辛いことも沢山ありました。書いている間も迷い、悩み、葛藤しました。でも、文章にしたあとは、人生の美しさもまた見えてきたのです。彼らの亡くなるまでのエピソードは、ただ悲しいだけのストーリーではなく、むしろ最後の時間まで生き切ろうとする力強さがあります。もっと自分を大切にしていいんだ、と私自身も自然と思えるようになりました」

 

生きている間に、死について深く考察するのは心苦しいところです。でもだからこそ、この本を深く読んで「命の閉じかた」を知りたいと思います。だからこそ、生きているうちに自分にまっすぐに向き合い、もっと真剣に、人生を謳歌することも大事なのでは・・。

 

インタビュー後編は、佐々さんの友人でもある訪問看護師、森山さんの生と死についての話へと続きます。

 

インタビュー・文 金田千里 撮影・山下みどり

 

 

『エンド・オブ・ライフ』佐々涼子 集英社インターナショナル ¥1700(税別)

在宅での終末医療を描いたノンフィクション。命の閉じ方について、末期がんの看護師や多くの素晴らしい患者たちから教えられる、珠玉のストーリーが集められた1冊

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