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前作『ぼけますから、よろしくお願いします。』から4年。その後の信友家は?(インタビュー/前編)

以前、OurAgeのインタビューでも紹介したドキュメンタリー作品の続編として、映画『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』が完成。この春、公開されることになった。

ひとつの作品が観客の共感と支持を集めて、ひとまわりもふたまわりも大きく育っていくなんて、幸せな作品だ。

そしてこの作品は、見る私たちまで幸せにしてくれる。

老老介護、終末医療、延命治療、終活と、誰もがいつかは突き当たるシリアスな問題を描きながら、胸に残るのはほっこりと温かい、人生への力強い賛歌だ。

 

撮影/萩庭桂太 取材・文/岡本麻佑

「ぼけますから、よろしくお願いします。」監督・信友直子さん写真

信友直子さん
Profile

のぶとも・なおこ●1961年生まれ。広島県呉市出身。1984年東京大学文学部卒業。一般企業に入社後、取材を受けたことをきっかけに、映像制作に興味を持ち転職。制作プロダクションを経てフリーに。主にフジテレビでドキュメンタリー作品を手がけた。2007年に乳がんを発症し、その経験はセルフドキュメント『おっぱいと東京タワー~私の乳がん日記』として、フジテレビ「ザ・ノンフィクション」で放映。2018年、両親を撮ったプライベートフィルムをドキュメンタリー作品にまとめ『ぼけますから、よろしくお願いします。』として発表、高い評価を集めた。

 

映像作家の娘が撮った親の病気と介護、

そして幸せな物語

 

撮ったのは、映像作家の信友直子さん。優れたドキュメンタリー作品を作り続けていた彼女が21年前、プライベートで両親の姿を撮り始めたのがきっかけだった。

 

当初カメラがとらえたのは、故郷の広島県呉市で暮らす母・文子さんと父・良則さんの、微笑ましいふたり暮らし。やがて母が80代後半になって認知症を発症し、耳の遠い90代の父が家事を肩代わりしながら妻を見守る、ちょっとスリリングな生活が始まる。

 

そんな中、自身の変調にとまどう母が、港から聞こえる年越しの汽笛を聞きながら、冗談交じりに口にしたのが『(今年は)ぼけますから、よろしくお願いします』という言葉だった。

 

「その映像をまとめて、フジテレビの『Mr.サンデー』という番組の1コーナーとして放映しました。それが評判になり、もっと観たいという視聴者の声に押されてその後の信友家の風景を撮り続けるうちに、まとめて長い作品にしようということで、前作のドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』ができたんです」

 

地味なテーマのドキュメンタリー映画ということで、当初その作品を上映したのは、東京・広島・呉の、たった3つの映画館。だが口コミでじわじわと観客が増え続け、やがて日本全国約100館でロングラン上映されて、20万人を動員する大ヒット作に。信友さんは数々の映画賞を受賞した。

 

そして4年後の今、続編として作られたのが本作『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』だ。

 

前作の劇場公開直前に母の文子さんは脳梗塞を発症し入院。父の良則さんは連日、片道1時間歩いて病院を訪れ、妻を見舞っていた。やがて一時期、歩けるまでに回復したものの、文子さんは脳梗塞を再発し、寝たきりの状態になってしまう。

そんな頃、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、病院での面会すら難しい状況に。それでも父・良則さんは妻の退院後を見据え、妻を支えるために98歳にして筋トレを始めるのだが・・・・。

 

信友さんはその顛末も撮影を続けていて、フジテレビの『Mr.サンデー』や『ザ・ノンフィクション』でも放送されたけれど、映画化までは考えていなかったという。

ところがコロナ禍の自粛生活が、思わぬ形で背中を押してくれた。

 

「ステイホームで自宅にこもっていた時期に、やることがないから押し入れの掃除を始めたんです。すると奥のほうから、昔撮ったテープがでてきた。

私は2007年に乳がんになって、その時のことを『おっぱいと東京タワー~私の乳がん日記』という作品にしたんですが、そのときに呉で暮らしている父と母の様子を知り合いのカメラマンに撮ってもらっていたんです。

両親の日常や呉の美しい景色が映っていて、映画的で叙情的な美しい映像だったので、『あ、今まで撮りためた映像にこれを加えれば、十分映画にできる!』と思いました。

そんなテープがあること、私、すっかり忘れていたんですよ。そのちょっと前に母が亡くなっていたので、母が天国から『こんなとこにテープがあるのを、あんた忘れとるじゃろう』って言ってくれたような気がしました(笑)」

「ぼけますから、よろしくお願いします。」監督・信友直子さん全身写真

前作が母の認知症を中心に展開していたのに対し、その後の日々を綴った本作は、さらにいろいろな課題を巡る物語となった。

 

「終末医療、終末介護、あとは延命治療とか看取りとか終活とか。結果的に家族に認知症患者がいる方だけでなく、どんな方にも当てはまる作品になったと思います。でも私が描きたかったのは、終末とか延命とか、そういうことではないんです。

今作を作るにあたって、改めて父と母のなれそめとか、若い頃の話を聞いて、ああ、そういうことだったのかと、初めて知ることもたくさんありました。ひとり娘の私が東京で働くことを何よりも優先してくれたのは、父が若い頃、やりたいことをやれなかった、その無念さがあったからなんだ、とか。

ですから作り手の私が言うのも変ですが、前作よりも今作のほうが、私自身は気に入っています。人は生きて、生を全うしていく、そのことの美しさが描けたのではないか、と。こういうコロナ禍ですから、ただでさえ気持ちが暗くなってしまう中で、この作品は、慎ましいけれどほっこりとした、ささやかな幸せを感じさせてくれると信じています」

 

 

確かに。映し出されるのは老いであり病であり、介護、医療、終末とつらく重いテーマには違いないのに、どうしてだろう? 観ているうちに胸の中はじんわり、温かくなってくる。

 

「ウチの親は本当に、ごくごく普通の人たちなんですけど、すごく明るいんです。母が元気な頃、よく言ってたのは『人間、楽しまんと、損よ。楽しんだ者勝ちよ』ってこと。日々のちょっとした積み重ねの中で、笑いのタネをいっぱい見つけて、どうでもいいようなことを楽しむ人でした。そういう姿勢は私も受け継いでいると思います。

 

結局、考え方なんですよ。母は認知症になって脳梗塞になって半身不随になってコロナ禍の中亡くなって。すごくかわいそうな人生の最期に見えるかもしれないけれど、でも逆に考えたら、認知症になっても大好きなお父さんに大事に大事にされて、入院しても毎日面会に来てもらって、最後は『あんたが女房で良かった』って言葉を聞きながら旅立ったわけですから、そう考えると幸せだったと思うんです。

 

今の自分の状況を不幸だ、不条理だとネガティブに考えるよりは、自分が幸せになれる考え方を探して、そこを大事にしていきたいなと私は思っています」

 

前作が大ヒット、しかも前作をしのぐ出来映えが評価されて、3月25日から公開されるこの映画、すでに日本全国70館以上での上映が予定されている。

 

「前作を観てくださった方たちが、皆さん、父のことを大好きになってくださって。地元の呉ではちょっとした有名人になったみたいです。最近はこの映画のポスターやチラシを手押しのシルバーカーに乗せて、あちこちに配っているみたい。主演男優兼、有能な宣伝マンです(笑)」

 

101歳にして毎日元気に過ごしている父・良則さんは、どうしてそんなに元気なの? 詳しくはインタビュー後編で!

 

(101歳の父・良則さんの元気の秘密と、直子さんの健康についてのインタビュー後編はコチラ

 

 

『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』

「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえりお母さん~」ポスター

2018年。父は家事全般を取り仕切れるまでになり日々奮闘しているが、母の認知症はさらに進行し、さらに脳梗塞を発症、入院生活が始まる。一時は歩けるまでに回復した母だったが新たな脳梗塞が見つかり、病状は深刻さを極めていく・・。認知症とともに生きる大変さや苦労を含みながらも、実の娘でなければ撮れない温かな眼差しに胸を打たれるドキュメンタリー。

「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえりお母さん~」スチールsub2

2022年3月25日(金)より全国順次公開

監督・撮影・語り:信友直子

配給・宣伝:アンプラグド

©2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会

公式サイト:https://bokemasu.com/

 

 

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