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芸術が大爆発 展覧会 岡本太郎

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。

 

今回は、この秋のわたしのイチオシ、「展覧会 岡本太郎」(東京都美術館 ~2022年12月28日)のご案内です。

 

わたしは岡本太郎さんが「芸術は爆発だ」と叫ぶCMをリアルタイムで見た世代です。

「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」というフレーズも懐かしいです。

 

しかし、そのころ、この謎のおじさんがどんな芸術を創造しているのかがよくわからず、知っていたのはせいぜい「大阪万博の太陽の塔を作った人」という程度。その後、あまり関心を持つことがなかったのは、テレビによく出ている通俗的な感じの人というイメージがあったせいかも知れません。

しかし、今度の展覧会を見て、実はそれも岡本さんの「大衆の消費文化の中に体ごと飛び込んで行く」という戦略のひとつであったことを知りました。

 

芸術は一部の知識人だけのものではなく、万人によって造られる万人のためのもの。そんなメッセージが込められた作品の数々を見ているだけでも心が高揚し、前向きな気持ちになってきます。

このごろのアート作品は、事前に説明を読んでおかないと理解できないこともよくありますが、岡本さんの作品は、ただ見るだけでパワーやメッセージが伝わって来るのです。

 

これこそが、岡本さんが言いたかった爆発する芸術ってものなのだと、ようやく理解できました。

 

 

上 光る彫刻 1967年 川崎市岡本太郎美術館蔵

下 若い夢 1974年 川崎市岡本太郎美術館蔵

 

入り口で出迎えてくれるのは、この彫刻です。

子供がほおづえをついて笑っている様子にも見えるし、顔を二つに引き裂いているようにも見えます。

 

 

左より作品C 作品B 作品A
推定 岡本太郎 1931~33年 ユベール・ル・ガールコレクション(パリ)蔵

 

太郎さんは8歳でパリに渡り、その後10年間を過ごしました。ピカソやカンディンスキーなどの作品を見て多くを学びましたが、当時の作品はすべて東京に持ち帰って戦火で焼失しました。

この3点は、近年パリで発見され、岡本太郎作かどうか調査中とのこと。

 

 

 1947年 川崎岡本太郎美術館蔵

 

1940年、岡本さんは招集さ、1946年に復員。自宅は空襲で焼けていましたが、猛然と創作活動を復活しました。

 

これはそのころの作品。背後に短刀を隠した少女が森の前に立つ様子が描かれています。わたしの目には、欺瞞に満ちた社会にひとり立ち向かって行こうとする岡本さんご自身のように見えます。

 

 

燃える人 1955年 東京国立美術館蔵

 

1654年の第五福竜丸事件をテーマにした作品。

左側に翻弄される船、右側に原爆雲と思われるものがあります。

 

 

明日の神話 1968年 川崎市岡本太郎美術館蔵

 

お馴染み、渋谷駅の大壁画「明日の神話」のための下絵。4枚残されているうちの最後のもので、実物の3分の1のサイズです。原爆がさく裂する瞬間を描いたものですが、悲劇として伝えるのではなく、原爆さえも乗り越えていく強さを表現したものだということです。

 

現在渋谷駅に掲げられている「明日の神話」は、長らく行方不明になっていましたが、2003年、メキシコシティで発見されたものです。

 

 

太陽の塔(1/50) 1970年 川崎市岡本太郎美術館蔵

 

日本万国博覧会(大阪万博)の統一テーマ「人類の進歩と調和」を表現するテーマ館の屋根を突き破って聳える神像「太陽の塔」の模型。

実物は現在も万博跡地に残され、訪れる人を魅了し続けています。

 

 

生命の樹 全景模型 1917年 岡本太郎記念館蔵

 

太陽の塔内部のオブジェの模型。

実物は高さ約41メートル、樹の幹や枝には大小さまざまな生物の模型があり、生命の進化を表しています。

 

 

ノン 1970年 川崎市岡本太郎美術館蔵

 

怪獣のような姿のこの像は、両手をこちら側に向けて「ノン」というポーズをしています。

これは、「人類の進歩と調和」という大阪万博のテーマに対する拒否の姿勢を表したものとも言われます。

いかにも太郎さんらしい意思表明ですね。

 

 

TARO鯉 1981年 岡本太郎記念館蔵

 

さまざまな形に商品化された作品も、とても魅力的です。中でもこのTARO鯉は発売当初からインパクトが強かった。

空に力強く舞う鯉のぼりと太郎さんのイメージがぴったり一致した素晴らしい商品企画だと思います。

 

 

雷人 1995年 岡本太郎記念館

 

大阪万博以降、太郎さんの活動は、パブリックアートが中心となり、絵画作品はほとんど発表されていません。しかし実はこの時期に描かれた絵画がアトリエに大量に残されており、その中には50年代に描かれて行方不明になっていた作品の上に上描きしたものも多数あるのだそうです。

 

これは最後に取り組んだと言われる作品です。太郎さんの作品には黒い大きな目が描かれる多いので、目が白いこの絵は未完のように思えますが、それでもものすごいエネルギーを感じる作品です。

「人生の最後まで、芸術は爆発だ!」という力強いメッセージを感じます。

 

 

ミュージアムショップのオリジナルグッズも充実。

生前から商品化されることも多かった岡本さんのアートが、今も魅力的な商品となって大爆発しています。購買意欲も爆発しますが、買い過ぎにご用心。

 

Ⓒ岡本太郎記念現代美術振興財団

 

 

展覧会 岡本太郎

東京都美術館

2022年10月18日(火)~12月28日(水)

公式サイト

 

 

𠮷田さらさ 公式サイト

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