いし こんにちは。ぐうたらライターのいしまるこです。
今回は、いよいよ腎臓の老化について迫っていきますよ。
根来 こんにちは。根来秀行です。前回、腎臓は生命維持に大きくかかわる臓器であることをお話ししましたが、その腎臓は、毛細血管に支えられているんですよ。
いし 出た、毛細血管! 根来教授は常々毛細血管の重要性を力説されていますが、中でも腎臓にはたくさんの毛細血管が集まっているため、腎臓は毛細血管の状態に大きく左右されるとおっしゃっていますよね。
根来 はい。腎臓の毛細血管は糸球体と呼ばれるところにありますが、この糸球体の働きによって血液から老廃物が取り除かれ、きれいな血液を全身に送り出すことができるのです。
いし 毛細血管は年とともに劣化したり、減少するんですよね。
糸球体も同じですか?
根来 はい。とはいえ、糸球体は左右の腎臓でトータル約200万個もあって、この予備のバックアップが十分あるから、腎機能はそうそうダメになることはないんです。
いし でも水面下ではじわじわと糸球体が劣化したり、減少している?
根来 ですね。進行すると糸球体の濾過フィルターの目が粗くなったり、詰まったりして、体に必要なものまで漏れ出たり、尿細管の再吸収が上手に
行われなくなってしまいます。
いし つまり、血液中に老廃物がたまったままになる、ということですか?
根来 はい。血液検査で「血清クレアチニン値」が高いと腎機能が低下していると判断されますが、クレアチニンは血液中の老廃物なんです。
逆に、糸球体から漏れないはずのタンパクが濾過されて、尿から出てくることもあります。
いし あっ、タンパク尿ですね!
根来 ご名答。急性の場合は背中に痛みが出たりしますが、慢性腎臓病は自覚症状がなく、血液検査や尿検査で初めて異常が発見されることが多いです。
いし 慢性腎臓病が増えているのはなぜですか?
根来 原因としては、不規則な生活習慣や食の欧米化、肥満、睡眠不足、ストレス、運動不足、喫煙などがいわれていれます。
いし 生活習慣病の原因として、よくいわれることばかりですね。
根来 慢性腎臓病は生活習慣病と切っても切れない関係にあります。
例えば、腎臓は血圧の調節にかかわるホルモンを分泌しているため、腎臓の働きが落ちると高血圧になったり、逆に高血圧が腎臓病を招くことも。また、高血糖の状態が続くと全身の毛細血管レベルでの代謝異常がおきて、腎臓の毛細血管がダメージを受けます。
だから、糖尿病の人は腎臓を悪くしやすいのです。この糖尿病に伴う合併症は「糖尿病腎症」と呼ばれています。
いし 糖尿病腎症は糖尿病の三大合併症のひとつですよね。
ひとたび発症すると、末期の腎不全に至るケースが多いと聞きますが……。
根来 そうですね。ちなみに現在、透析になる人の最も多い原因は糖尿病です。
いし 透析って、一度始めるとやめられないって本当ですか?
根来 少なくとも現代の医学レベルでは、腎移植を受けない限り生涯続けていくことになります。
いし うー、そこまでいく前になんとかしたいですね。
根来 腎臓病はサイレント・ディジーズ(静かなる病気)ともいわれ、かなり進行しないと症状が現われません。
なので、できるだけ早い段階から生活習慣の見直しを始めて、腎機能の低下をできるだけ最小限にするよう努めることが大事になってくるのです。
いし 心します!
根来 それではみなさん、今日も素敵な1日を!
取材・文/石丸久美子 撮影/森山竜男 イラスト/浅生ハルミン