体調不良の原因の多くは体の冷え。体温を上げる生活習慣に切り替えると、体調にうれしい変化が現れます。今津嘉宏先生に冷えのメカニズム、体温を上げる方法などを教えていただきました。
体温を1℃上げると、さまざまな不調が改善!
25年間外科医として、手術前後の患者さんを毎日診てきた今津嘉宏先生。その経験から、病気を患っている人の体温が低いことを実感したといいます。また、患者さんの中には、検査結果では特に異常がないのに、長年体調不良に悩まされているという人も。こうした人たちの不調は、体温を上げる生活習慣を指導することで解消されることも多いそう。
「つまり、体を冷やすことが体調をくずす原因であり、それがやがて病気に進行します。逆に言えば、体温を上げることで多くの病気が予防できます」
(鴨とルッコラの鍋オレンジソース添え)
では、なぜ体温が低いと不調になるのでしょうか。それには「酵素」の働きが大きくかかわっています。
「私たちの体にとってなくてはならないのが酵素。食べ物から取り込んだ栄養を体内で分解して吸収する際にも、不要になったものを分解して排出する際にも、酵素が必要なのです。そこで、体温を酵素が最も活発に働く温度、37 ℃前後にキープし、効果的に酵素を働かせると体調がよくなります」
37℃というのは体の中心の温度。人間の体は外側よりも中心部のほうが温度が高いので、通常私たちが脇の下などで測る温度であれば、36・5℃程度がよいということになります。
「ベストな体温を保つためには、体の内側から温めることが大切。中心部、すなわち消化器官を温めるのが効果的です」と今津先生。冷たい飲食物はできるだけ避けましょう。
「とはいえ、アイスクリームを食べたいとき、冷たいビールを飲みたいときもあるでしょう。そういうときは、10〜30分くらい前に、何か常温の物を食べておきましょう。胃が温まるので、冷たいものが入ってきても極端に胃が冷えることはありません」
そのほか、日々摂取する栄養で冷えにくい体をつくることも大切です。
「体内で熱を生産しているのは筋肉。筋肉量が少ないとエネルギーの生産ができないので筋肉をきちんとつけることも大事です。筋肉を作る材料となるタンパク質を、肉や魚、大豆食品などから積極的にとるようにしましょう」
(酒粕と味噌のタラ鍋)
また、冷えるということは、血流が滞っている状態。「漢方医学では『瘀血(おけつ)』と呼ばれ、女性に起きるさまざまな不調の原因と考えられています」。血液の状態をよくし、血流をよくする鉄、ビタミンB12、銅、葉酸なども十分摂取したいものです。
(カキのみぞれ鍋 ライム風味)
にんにく、長ねぎ、しょうがなどは、代謝を促して体を温める食材。日々の食事に上手に取り入れましょう。
(魚介とセロリのガーリックオイル鍋)
「体を温めるイメージのある唐辛子ですが、温まるように感じるのは唐辛子の痛み刺激によるもの。実は発汗作用によって熱を下げる食べ物なので、食事のスターターに少量加える程度に」
今後、OurAgeの「ヘルシーごはん」内で、料理家沼津りえさんの、
体温をあげる「ひとり小鍋」メニューを順次ご紹介していきます。
この冬は、とびきりおいしい(しかも簡単)あったかレシピで、ヘルシーに過ごしましょう!
撮影/板野賢治 冨樫実和
料理・スタイリング/沼津りえ
構成・原文/瀬戸由美子