料理の味を引き立てる調味料としてだけでなく、食べ物を傷みにくくしたり、肉や魚の臭みを消すのにもお役立ちのお酢。腸内環境を整える、便秘や血流の改善、コレステロールを低下させるなどの効果があることも知られていますよね。
この日は、そんなお酢…ではなくてお酢と深い関係があるという「酢酸菌(さくさんきん)」をテーマにしたセミナーでした。はて、酢酸菌とは?
「酢酸菌はお酢づくりに欠かせない発酵菌です。しかし、含まれたままだとお酢が濁って見えたり、沈殿してしまうことから熟成後にろ過されています。そのため、市販されているお酢にはほとんど含まれていません」と解説するのは、東京農業大学 応用生物科学部醸造科学科 教授の前橋健二先生。
製造工程で捨てられてしまうという酢酸菌ですが、近年、その健康効果についての研究が多く進められているのだとか。
「発酵菌は、微生物学の分野で2つに分類されます。厚い細胞壁を持つのがグラム陽性菌で、代表的な菌種としては乳酸菌や納豆菌など。酢酸菌は、薄い細胞壁を持つグラム陰性菌です。この薄い細胞壁に存在する特有成分のLPS(リポ多糖類)が免疫細胞マクロファージを活性化するとして注目を集めているのです」
何と! そんないいものを捨てていたとはもったいない〜。これをろ過していないお酢はないのでしょうか?
「バルサミコ酢や香酢、黒酢など伝統的な製法で長期熟成させているお酢には酢酸菌の細胞成分が少量含まれています。また、福岡県の『庄分酢』や青森県の『カネショウ』など、酢酸菌を残したにごり酢をつくっている蔵元もあります」
オンラインショップもあるので、これは要チェックですよ!
花粉症対策にも酢酸菌が効く!?
さて、免疫細胞を活性化となれば、免疫システムのエラーによって発症する花粉症の対策になる?
「今年の花粉飛散量は少ないとされていますが、免疫力が低下していると症状は重くなってしまいます」とは、イシハラクリニック 副院長の石原新菜(にいな)先生。
「花粉症対策の3原則、〈花粉を体に入れない〉〈体質を改善〉〈薬で症状を抑え込む〉のうち、一番大切なのは免疫システムのエラーを予防する体質改善です。それには適度な運動と、さまざまな菌を食べ物から体内に取り込むこと。特に免疫細胞の7割は腸に集まっていますから、食べて菌を直接取り入れることはとても重要です」
食べる菌のなかでも、酢酸菌はほかの菌とは異なるメカニズムで免疫システムのエラーに働きかけることが出来るのだそう。
「腸内には免疫機能を活性化させる免疫スイッチのようなものがあり、ポイントとなるのが『TLR2』『TLR4』の2つです。乳酸菌や納豆菌、ビフィズス菌が押せるのは「TLR2」だけですが、酢酸菌は両方のスイッチを押せるため、免疫バランスを整え、花粉症などのアレルギー症状を抑えることがわかっています」
最新の研究結果では、花粉症による鼻づまりの不快感、ホコリやハウスダストによる鼻の不快感が改善されたという報告、酢酸菌と乳酸菌を併用することで単体よりも倍以上のマクロファージ活性が確認されたという発表もされているのだそう。
酢酸菌を摂取するなら…
では、酢酸菌はどれくらいの量を取り入れるのがいいのでしょう? おすすめは、腸のゴールデンタイムと言われる夜に「にごり酢」を毎日大さじ1杯。但し、酸が強いので空腹時には避けて、と石原先生。そのまま飲むなら食中や食後がいいとのこと。
また、セミナー会場には、花粉症対策レシピとして、管理栄養士の望月理恵子さんによる「にごり酢」を使った料理の展示も。
風味付け&柔らかくするために切ったお肉にお酢をかけ、ザク切りした野菜と一緒にレンジでチン。仕上げにタレとしてもお酢を使った「豚肉とたっぷり野菜のレンジ蒸し」。
千切りした長芋にお酢をかけ、だし汁にもお酢をプラスしてお鍋でコトコト。さらにすりおろした長芋も加えて煮た「長芋のトロトロ汁」。これは身体が温まりそう〜。
酢酸菌と乳酸菌が同時に摂れる「ヨーグルト酢スムージー」には、抗酸化作用の高いポリフェノールを豊富に含むベリーを使って。あらかじめ冷凍ベリーをお酢に漬けておくと、ポリフェノールの苦みが緩和するとのこと。
上記の詳しい作り方は下記のサイトで紹介されています。今や東京では約2人に1人が花粉症と言われている時代。酢酸菌を上手に取り入れて、免疫力アップ!を目指しませんか?
「酢酸菌ライフ」
取材・文/佐藤素美