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骨粗しょう症を防ぐには、カルシウムと同じくらいタンパク質が重要だった!

更年期以降になると気になってくるのが、骨粗しょう症の問題。この予防というと真っ先にカルシウムが浮かぶと思いますが、実はそれ以上にタンパク質の摂取が重要だと知っている人、意外と少ないのでは? そこで最新の分子整合栄養学に詳しい管理栄養士の金津里佳さんに、その理由や、骨粗しょう症予防に必要な栄養素について伺いました。

カルシウムをしっかりとっていても、タンパク質が不足していると骨の強度は弱くなってしまう

閉経後にエストロゲンが減ることで上がるのが骨粗しょう症のリスク。

今のうちから予防のためにと、カルシウムを意識してとっている人も多いと思いますが、実はタンパク質をとることも重要なのだとか。

 

「昔から、“骨といえばカルシウム”ということが刷り込まれているので、皆さん、そればかりを重視しがちですが、同じくらい大切なのがタンパク質です。

骨の体積の半分はコラーゲン、つまりタンパク質です。骨を鉄筋コンクリートにたとえると、鉄筋の部分がコラーゲンで、そこに流し込むコンクリートがカルシウムです。

コラーゲンは、柔軟でありながらもとてもしっかりしたもので、タンパク質が原料です。なので原料であるタンパク質が不足するとコラーゲンの強度が弱くなり、骨もぐにゃりともろくなってしまいます。

ですから、カルシウムと同じくらいタンパク質も重要なのです。

 

それなのに、なぜカルシウムばかりが重視されているのかというと、骨密度測定検査の影響もあると思われます。骨粗しょう症のための骨密度測定検査は、骨量、つまりコンクリート部分を測るものなので、骨密度の低下=カルシウム不足と判定されます。

これがカルシウムばかりが重視されるようになった理由のひとつだと思います。

実際は、鉄筋部分のコラーゲンが減っていても骨はもろくなるのですが、コラーゲン量はこの検査では測れません。

そのため、骨粗しょう症検査で問題がなくても、コラーゲン不足によって骨がもろくなってしまっているということが起こり得ます。

骨密度測定検査で問題がなかったのに、骨折しやすいというような人は、タンパク質不足の可能性があります」(金津里佳さん)

 

つまり、いくらカルシウムをしっかりとっていても、タンパク質が不足していたら丈夫な骨にはならないということ。さらに、骨を作るためにタンパク質が必要な理由はほかにも…。

 

「カルシウムは、アルブミンというタンパク質によって運ばれるので、タンパク質が不足するとアルブミンも不足してカルシウムを運べないことになり、血中のカルシウムが不足します。このためにもタンパク質が必要なのです」

丈夫な骨をつくるために必要なそのほかの栄養素とは?

また、骨粗しょう症を防ぐためには、そのほかにも必要な栄養素が。

 

「コラーゲンを生成するためにはタンパク質のほかに、ビタミンCと鉄が必要なので、これらをしっかりとることも大切です。

また、カルシウムも単独でとるのはよくありません。カルシウムはマグネシウムと“ブラザーイオン”と呼ばれ、拮抗関係にあります。

ですからカルシウムをとるときは必ずマグネシウムもバランスよくとることが大切。骨粗しょう症予防のために牛乳を意識してとっている人もいると思いますが、牛乳はカルシウムとマグネシウムのバランスが11:1くらいの比率なので、とると血中のカルシウム濃度が上がり、マグネシウムとのバランスをとろうとして大腿骨などの大きい骨からカルシウムを減らしてしまいます。

つまりカルシウムだけを多くとると、逆に骨のカルシウムが減ってしまうのです。

 

オランダなど酪農が盛んな国で大腿骨骨折をする人の比率が高いというデータがあるのも、これが関係していると思われます。※

ですから、カルシウムは、マグネシウムとのバランスが1:1といわれている魚介類や海藻類などの食品からとるほうがよいのです。

そのほか、骨粗しょう症予防には、腸管からのカルシウムの吸収を助ける働きがあるビタミンDや、カルシウムの骨への沈着を促すビタミンKも大切です」

コラーゲンはサプリやドリンクから補ってもいいの?

ちなみに、コラーゲンをサプリやドリンクなどで補うのはよいのでしょうか?

 

「コラーゲンをサプリやドリンクで補っても、体内でバラバラに分解されて体に取り込まれ、違うものに再合成されるので、コラーゲンとして使われるわけではありません。

近年、分解されずに取り込まれたコラーゲンが生成・増殖につながったという報告がありましたが、“分解されず”というのは消化器に負担がかかりますし、この報告はまだまだ研究段階ということですので、現段階ではコラーゲンそのものを外から補うことはできないと考えたほうがいいでしょう」

 

では、骨粗しょう症を防ぐためのタンパク質のとり方とは?

「やはり、肉や魚、卵を中心に、タンパク質食品をしっかりとることです。

ただしこの連載の第1回でもお話ししたように、タンパク質をちゃんと消化できていない人も多いので、食べても胃もたれなどの不調を起こさないことを目安に、少しずつ量を増やして、消化吸収できる量を増やしていきましょう」

 

※参考:『牛乳は子どもによくない』佐藤章夫著 PHP新書

 

 

【教えていただいた方】

金津里佳
金津里佳さん
管理栄養士

医療法人美健会 ルネスクリニック東京・管理栄養士。北陸学院大学短期大学部食物栄養学科卒業。産科婦人科、人工透析科、栄養療法を主とする自由診療クリニックでの勤務を経て、2019年より現職。「人の身体はみな同じではない」をつねに意識し、日々の栄養カウンセリングに臨む。「食事は治療」との信念から一生続く食事という行為を根本治療ととらえ、論拠が納得できる正しい情報を届けたいという思いから、書籍などで情報を発信。著書に『9割が間違っている「たんぱく質」の摂り方』(青春出版社)がある。 金津さんphoto/久富健太郎

 

 

写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂

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