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タンパク質はとっているつもりでも、実はきちんと消化吸収できていない人が多い

健康を維持するためには、タンパク質をしっかりとることが大事という認識が浸透してきた昨今。ところが、実は肉や魚などのタンパク質食材を意識して食べていても、ちゃんと消化吸収できないために、タンパク質不足になっている人が多いとか。その理由を最新の分子整合栄養学に詳しい管理栄養士の金津里佳さんに伺いました。

タンパク質不足だと消化酵素や胆汁酸が不足し、消化吸収されにくくなるという悪循環に

タンパク質をとっても消化吸収できていない人が多いというのは、どういう理由からなのかを金津さんに伺いました。

 

「タンパク質が大事なことはわかっていても、年のせいか肉が食べられなくなってきた…という人は少なくないのではないでしょうか。

また、健康意識が高いことから、肉や油を控えめにしている人もいると思います。

このような理由で40代、50代の女性はタンパク質の摂取量が不足しがちです。実はこのタンパク質の摂取不足が、さらなるタンパク質不足を招いてしまいます。

 

タンパク質をきちんと消化吸収するには、消化酵素と胆汁酸が必要なのですが、どちらもタンパク質を原料として作られるので、体内に十分なタンパク質量がないと、消化酵素と胆汁酸も不足してしまいます。

すると、いくら肉を頑張って食べていても、タンパク質をしっかり消化吸収することができなくなってしまうので、さらにタンパク質不足に陥ってしまうのです。

 

肉をたくさん食べると、消化不良や胃もたれを起こしたり、翌日下痢をしたり、便秘をしたり、お腹が張ったりといった症状が起きる人は、消化酵素や胆汁酸不足でタンパク質が消化吸収できていないサインです。

肉をたくさん食べるたびにこのような不快症状が出ると、無意識のうちに肉を食べなくなっていきます。そして気づかないうちに、タンパク質不足が進行し、どんどん肉が食べられない体になってしまうのです。

 

“年のせいで肉が食べられなくなってきた”というのも、実は年のせいではなく、タンパク質不足で消化酵素や胆汁酸が減っている可能性があります。

この状態で無理にタンパク質をとっても、体の栄養にならないばかりか、消化器に負担がかかってしまいます。

 

逆に、高齢なのにたっぷりのサーロインステーキを食べられる人は、消化酵素と胆汁酸が十分にあり、タンパク質をしっかり消化吸収できているということ。

まさに健康的な状態です。つまり重要なのは、タンパク質の摂取量でなく消化吸収できる量なのです」(金津里佳さん)

 

消化酵素が不足すると、ほかにこんな問題も…

「消化酵素が不足すると、タンパク質が未消化のまま体内に取り込まれます。

これらは体の原料やエネルギーの原料として使えない“異物”なので、炎症を起こしたり、アレルギーの原因になることも。

 

よかれと思ってせっせと食べているタンパク質が、体の栄養になっていないばかりか、アレルギーなどの原因になっていては意味がありません。

ですから、タンパク質は消化吸収を考えたうえでとることが大切なのです」

 

お腹の調子がいつも悪い人は、リーキーガット症候群の可能性も

また、肉があまり食べられなくなってきた人や、食事にかかわらずいつもお腹の調子がよくなかったり、つねにお腹が張っていたり、しょっちゅうおならが出るというような人は、もっと大きな問題が潜んでいる可能性もあるそう。

 

「このような症状がある人は、“リーキーガット症候群”である可能性もあります。

リーキーガットとは直訳すると“漏れている腸”という意味です。

小腸の上皮粘膜が炎症によって粗い網目のように緩んでしまっている状態です。リーキーガットになると、タンパク質がいくつかのアミノ酸がつながったままの未消化の状態で取り込まれてしまいます。

これではいくらタンパク質をとっても体で使うことができないため、不足してしまう状況に陥ります。当然、消化酵素も胆汁酸も不足するので、肉を消化吸収する力もどんどん衰えます。

 

さらに、リーキーガットになると緩んだ腸粘膜の網目から未消化の食べ物や、外部の毒やウイルスなどさまざまなものが体に取り込まれてしまいます。

未消化物の食べ物が入ると、体はそれを排除しようとして抗体を作りますが、抗体はタンパク質に反応するため、肉や魚、卵、野菜や花粉など、さまざまなものにアレルギー反応を起こすようになります。

ですから、アレルギーがひどい人はリーキーガットになっている可能性があります」

左が正常な状態。右がリーキーガットの状態。

 

小麦のグルテンや牛乳のカゼインが、リーキーガットの原因に

リーキーガットになってしまう原因は何なのでしょうか?

 

「特に未消化の食べ物になりやすいものが、小麦に含まれるグルテンと牛乳に含まれるカゼインです。

グルテンは小麦タンパク質のひとつでヒトの消化酵素では分解しにくい構造をしています。

また、牛乳のタンパク質カゼインも同様です。

ですから日常的にパンや乳製品を食べていると、気づかないうちにリーキーガットになっている人は多いと考えられます」

「ほかにカンジダ菌の増殖も原因のひとつです。カンジダ菌はもともと私たちの体にいる常在菌なのですが、病気やストレスなどで免疫力が下がると爆発的に増殖し、腸壁にバイオフィルムを形成します。これによって消化吸収力が落ち、リーキーガットの原因になるのです。

そのほか、過度のアルコールもリーキーガットの原因になります」

 

では、タンパク質の消化吸収力を高めるには?

「この連載で何回かお伝えしていますが、タンパク質の摂取量を少しずつ増やしていくことです。

少しずつ増やすことで、消化酵素や胆汁酸の量も増えていき、消化吸収できる量が増えていきます。

さらに、リーキーガットを改善することも不可欠。

具体的な方法は、次回4月30日配信で詳しくお話ししますが、まずは小麦製品と牛乳の摂取を控えるようにしましょう。

腸粘膜の炎症が改善してくると、タンパク質をきちんと消化吸収できるようになりますので、ぜひこれらの方法を実践してみてください」

 

 

【教えていただいた方】

金津里佳
金津里佳さん
管理栄養士

医療法人美健会 ルネスクリニック東京・管理栄養士。北陸学院大学短期大学部食物栄養学科卒業。産科婦人科、人工透析科、栄養療法を主とする自由診療クリニックでの勤務を経て、2019年より現職。「人の身体はみな同じではない」をつねに意識し、日々の栄養カウンセリングに臨む。「食事は治療」との信念から一生続く食事という行為を根本治療ととらえ、論拠が納得できる正しい情報を届けたいという思いから、書籍などで情報を発信。著書に『9割が間違っている「たんぱく質」の摂り方』(青春出版社)がある。 金津さんphoto/久富健太郎

 

写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂

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