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タンパク質をきちんと消化吸収するのにまず必要なのは、腸粘膜のケア

40代、50代になると重要になってくるのがタンパク質の摂取ですが、ただとるだけでなく、きちんと消化吸収できることが重要なポイントです。そして、そのために必要なのが、腸粘膜のケアなのだとか。そこで、最新の分子整合栄養学に詳しい管理栄養士の金津里佳さんに、その具体的な方法を伺いました。

 

 

タンパク質は小腸の粘膜上皮が健康な状態でないと、きちんと体に取り込まれない

タンパク質をしっかり消化吸収するためには、最初に腸粘膜のケアをすることが不可欠と話す金津里佳さん。まずは、タンパク質の消化吸収のプロセスについて教えていただきました。

 

「口から入った食べ物は、どこから体の中に栄養として取り込まれるかご存じでしょうか? 『胃かな?』と思う人も多いかもしれませんが、胃は口からまだ外界につながっている場所で、食べ物を初期消化するだけ。栄養を体に取り込む役割は果たしていません。

では、食べたものが体に取り込まれる場所はどこかというと、小腸の粘膜上皮です。口から入ったタンパク質がきちんとアミノ酸に分解されて、小腸の粘膜上皮の状態が健康であれば、初めて体の中に取り込まれます。

 

ですから小腸の粘膜上皮が何らかの原因で炎症を起こしていたり、不健康な状態だったりすると、食べたものの栄養素を体で使えるかたちで取り込めず、利用できないことになります。

つまり、いくら肉や魚を食べてもタンパク質を体に補給できないのです」

 

そして、このプロセスに問題が起き、タンパク質が消化吸収されにくくなってしまうのが、第3回でもご紹介したリーキーガット症候群なのだそう。

 

「本来、健康な腸粘膜は網の目のようになっていて、とても細かく小さなものしか通しません。でも腸粘膜に炎症が起きると網の目が少しずつ開いてしまい、本来は通さないものまで通してしまうようになります。

これがリーキーガット(腸漏れ)症候群です。

 

食べ物に含まれているタンパク質は、アミノ酸がたくさんつながってできていますが、食事からタンパク質をとると、胃の消化酵素によっていくつかに断ち切られます。

次に、小腸の粘膜で膜消化というものが行われ、アミノ酸レベルに切り離されて体に取り込まれます。

ここまででアミノ酸がしっかり切り離されていないと、体の中でほかの成分に再合成できないので、体の原料やエネルギーとして使えないのです。

リーキーガットで腸粘膜の網の目が緩んでいると、いくつかのアミノ酸がつながったままの未消化の状態で取り込まれてしまいます。これではいくらタンパク質をとっても、補給したことにならないのです」

左がノーマルな腸(GUT)、右がリーキーガット(腸漏れ)になっている腸

 

アレルギーなどさまざまな体調不良がある人は、リーキーガットの可能性が

実はこのリーキーガットになっている人は結構多いそう。

 

「日頃からお腹の調子が悪かったり、肉をたくさん食べるとお腹を壊したり、いつもお腹が張っていたり、アレルギー症状があるといった人はリーキーガットの可能性があります。

また、リーキーガットになると、睡眠の質が低下したり、肌の調子が悪くなったり、集中力が落ちて頭がぼうっとしたり、疲れたりといった症状が出やすくなるので、こうした症状がある人も要注意です。

 

また、リーキーガットの状態だと血糖値の乱高下が起きやすくなり、糖尿病をはじめ、自律神経への悪影響などさまざまな不調の原因となります。

自分がリーキーガットかどうかは、遅延型フードアレルギー検査である程度わかります。

 

リーキーガットになると抗体が作られやすいため、遅延型アレルギー反応がたくさん出た人は、リーキーガットの可能性は高くなります。

また、ゾヌリン検査という血液検査でも、リーキーガットの可能性を確認できます。

ゾヌリンとはタンパク質の一種で、これが腸粘膜の網目を緩ませるのですが、それと同時に血中に流れ出すため血中のゾヌリンの量が増えます。

なので、ゾヌリンの量を調べることでリーキーガットかどうかがある程度わかるのです。これらの検査を行っているクリニックはネットなどで検索して探すことができます」

 

つまり、タンパク質をきちんと消化吸収するためには、まずはリーキーガットを改善することが不可欠で、そのために必要なのが腸粘膜ケアなのだそう。

 

「リーキーガットを改善するための腸粘膜ケアとは、いま流行っている“腸活”とは違って、何かを体に“入れる”ことではなく、炎症を起こすものを“入れない”ことがポイント。

まず、リーキーガットの最大の原因となるのが、グルテンを含む小麦製品と、カゼインを含む乳製品なので、これらを食べないということです。

 

具体的には、グルテンが含まれているパン、パスタ、うどん、そば(十割そばを除く)、ピザ、お好み焼き、餃子や焼売、カレーやシチュー(小麦粉でとろみがつけられているもの)、ケーキ、クッキーなど小麦粉を使ったもの全般です。

ライ麦やオーツ麦、もち麦などもグルテン様タンパク質が含まれているので避けましょう。

また、カゼインが含まれているものは、牛乳、チーズ、ヨーグルト、アイスクリーム、生クリームなどです。

ただし、バターはカゼインがほとんど含まれていないので、食べても問題ありません。

また、牛乳のカゼインが問題なのでヤギのチーズやヨーグルトなら大丈夫です」

 

まずは3日間、次に2週間、グルテンやカゼインを完全に断つことから始めよう

しかしながら、これらをすべてやめるというと、“無理”と思う人が多いのではないでしょうか。

 

「それは、グルテンやカゼインには中毒性があるので、多くの人は中毒になってやめられなくなっているからです。

この中毒性を断ち切るため、まずは3日間、グルテンとカゼインを断ちましょう。

少しだけ減らしても中毒から抜け出せないので、完全に断つことが大事。そうすると食べたい欲求がだんだん薄れていきます。

 

さらに2週間続けると中毒症状はほとんどなくなります。

大事なのは“2週間、完全に断つ”ことです。

小麦製品の代替として、最近は米粉100%のパンや麺なども販売されているので、そうしたものを利用するのもよいと思います。

牛乳の代替としては、豆乳やアーモンドミルクなどがよいでしょう。

また、リーキーガットの原因になるものとして、カンジダ菌の増殖もありますが、甘いものはカンジダ菌の餌になるので、甘いものもできるだけ控えましょう。過度のアルコールもリーキーガットを招くので控えめに」

 

このような食生活を2週間続けると、腸粘膜が修復され、緩んでいた網目がタイトになっていくそう。

 

「そうすると、タンパク質だけでなくビタミンやミネラルなどあらゆる栄養素の吸収がよくなるので、多くの人は、睡眠の質がよくなったり、疲れにくくなったりと、体調がよくなることを実感できると思います。

体感があると、グルテンやカゼインをとらない生活が続けられるようになるはずです。この腸粘膜ケアがタンパク質をしっかり体に補給するためには欠かせません。

 

まずは2週間、小麦製品と乳製品をとらない生活を続けて、自分の体で、腸粘膜の炎症が改善するとはどういうことなのか体感してみてくださいね」

 

 

【教えていただいた方】

金津里佳
金津里佳さん
管理栄養士

医療法人美健会 ルネスクリニック東京・管理栄養士。北陸学院大学短期大学部食物栄養学科卒業。産科婦人科、人工透析科、栄養療法を主とする自由診療クリニックでの勤務を経て、2019年より現職。「人の身体はみな同じではない」をつねに意識し、日々の栄養カウンセリングに臨む。「食事は治療」との信念から一生続く食事という行為を根本治療ととらえ、論拠が納得できる正しい情報を届けたいという思いから、書籍などで情報を発信。著書に『9割が間違っている「たんぱく質」の摂り方』(青春出版社)がある。 金津さんphoto/久富健太郎

写真・イラスト/Shutterstock 取材・文/和田美穂

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