結婚する時、相手の両親と合うかどうかは気にしても、「いつか介護する
対象」としては考えませんよね。
「父母が2組もいる?老後の世話が大変だからやめなさい!」
複雑な家庭に育った夫との結婚を両親に反対され、
「そんなの先の話だし、何とかなる」
と思っていた20代のハルコさん。
その後、父がガンになり、夫の実父・養父と次々に倒れ、ドミノ式に介護がスタート。彼女はなんと6人の介護をすべてひとりでこなそうと奮闘しますが、過労やストレスで体調不良に、、、明日は我が身の介護問題、「介護と排泄」「介護のお金」「介護施設選び」
それぞれの専門家に聞いてみましょう。
介護で最もしんどいのは、異性の義父母のシモの世話
(小牧市民病院泌尿器科・排尿ケアセンター部長 吉川羊子さん)
「介護は家族がするべき」という認識がまだまだ社会にはありますから、それで苦しくなる人が多いと思います。
医学的に「介護負担尺度」という評価法があって、その調査によると、排泄の問題を抱えている高齢者を介護している人と、自力でトイレができる高齢者を介護している人を比べると、前者の方が圧倒的に介護負担が高く、精神的疲労感や身体的疲労感を訴えるケースが多いことがわかっているんですよ。
もちろん家族のお世話は大事です。だけど、子どもの排泄の世話だったら、いつか本人ができるようになって手がかからなくなるけれど、高齢者はそうじゃない。いつまで続くかわからないから精神的に消耗してしまう。特に異性の義父母はハードルが上がるので、そこに労力を費やして疲弊するのではなく、上手にプロを利用して他のお世話に力を使ってあげられるといいですね。
元気なうちに、親の預金額をさりげなく聞き出すには
(「元気が出るお金の相談所」所長 安田まゆみさん)
Q親の介護に没頭するあまり健康を害してしまったハルコさん。介護で働きに出られなかった経済的損失と、彼女が負担した医療費の経済的負担をどう埋めるべきでしょう
か?
親の介護は「親の財布から」が基本です。
親がまだ元気なうちに、預金額をさりげなく聞き出すには、こんなふうに切り出してみてください。
「万一に備えて、キャッシュカードの暗証番号を書いた紙を封筒に入れて、決めた場所に保管しておいて、その場所を教えて」
いきなりお金の話をされてご両親は戸惑うかもしれませんが、
「お父さんやお母さんが倒れた時に開封するからね」
と言えば納得してもらえるのではないでしょうか。
次に実家へ帰ったら、忘れずに実践してください。
親を入所させる高齢者介護施設選びで、見学の際のポイントは
(千葉県松戸市の宅老所「ひぐらしの家」代表・安西順子さん)
施設によっては「里心がつくから、入所後しばらくは面会に来ないでください」という保守的な考えの所がたまにありますが、うちでは「できればしょっちゅう会いに来てあげてください」とご家族にお願いしています。面会に来て「ここに来ると実家に帰ってきた気分になる」と言ってくれるご家族もいます。
ご家族の価値観は千差万別「どんな施設がいい」とはなかなか一律に言うのは難しいですね。
ただ、施設の見学でチェックすべきは「臭い」だと思います。施設に入った時の匂いで、その施設の介護の質がわかる気がします。食事と排泄物が混ざったムッとする臭いがするところは、汚物の処理や清掃が充分にできていないことが考えられるので、どんなに設備や調度品がステキで洗練されていても個人的には勧めません。
さて、最初にご紹介した6人の介護に奮闘したハルコさんは、その後どうなったのでしょう?
ハルコさんの奮闘と、今回ご紹介した専門家3人のアドバイスは、『半ダース介護 6人のおジジとおババ世話日記』で詳細をどうぞ!井上きみどりさんがOurAgeに連載していた介護コミックエッセイにきみどりさん自身の介護体験ほか、大幅に加筆した1冊です。
『半ダース介護 6人のおジジとおババ世話日記』
(井上きみどり著 集英社刊 定価:1200円(本体)+税)