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がん検診「早期発見、早期治療」は、本当に有意義?鳥集 徹さんに聞く

昨今では、がん検診により「早期発見、早期治療」ばかりが推奨されている現状があります。しかしながら、それが本当に有意義であるか? という点に疑問を抱いている医療ジャーナリスト、鳥集 徹さんにお話を伺いました。

 

 

鳥集 徹(とりだまり・とおる)さん

1966年生まれ。出版社勤務 などを経て、2004年より医療問題を中心にジャーナリ ストとして活動。2015年に 著書『新薬の罠 子宮頸が ん、認知症…10兆円の闇』 (文藝春秋)で第4回日本医 学ジャーナリスト協会大賞 を受賞

 

 

がん検診を受けたからといって
寿命が延びるデータはない

がんは「早期発見、早期治療が肝心」という思い込みに疑問を投げかけるのが、医療に詳しいジャーナリストの鳥集徹さんです。
「数多くのがん専門医やEBM(科学的根拠に基づく医療)の専門家に話を聞くうちに、私はがん検診をむやみに推奨するのは間違っていると考えるようになりました」
がんは早期に発見できれば死を免れ、寿命が延びると考えがちです。
「確かに、検診を受けるグループと受けないグループを何十年も追跡した臨床試験で、検診を受けたほうが対象のがんの死亡率が減ることを示せた研究は複数あります。しかし、それによって寿命が延びることを証明できた研究はひとつもないのです」

 

そうなる理由は、早期発見による効果(メリット)を検査や治療に伴う害(デメリット)が打ち消すからだと鳥集さんは説明します。

 

実際、世界的なドイツの研究所が、信頼性の高い臨床研究の結果を集め、がん検診の効果を自然数で示したデータがあります。それによると、50歳以上の女性1000人がマンモグラフィを10年間受け続けたとすると、乳がんで死亡する人が5人から4人に減るという結果でした。その差はたったの1人です。
一方で、1000人のうち約100人が「偽陽性(結果的にがんでなかったのに「疑いあり」とされること)」になり、乳房に針を刺して組織を採取する生検を受けることになります。

 

 

「さらにデメリットが大きいのが、過剰診断です

 

次ページに続きます。

がんと診断される中には命を奪う病変だけでなく、進行がとてもゆっくりで、寿命まで悪さをしないものも含まれます。しかし、現在の医学では区別ができないため、がんと診断されたら、ほとんどが手術などの治療を受けることになります。ドイツのデータでも、不要と思われる手術で組織を切除するケースが1000人中5人。つまり、1000人中1人の乳がん死を防ぐために、5人が無用な手術を受けるとされています
「ある乳がん専門医は私に、 日本でも10〜20%は過剰診断の可能性があると話してくれました」

 

日本では乳がんと診断される人が1年に約9万人と推計されています。
もし過剰診断が10%だとしても、毎年約9000人が無用な治療を受けている可能性があるのです。

 

がんは単純化すると、 「速い」「ゆっくり」「と てもゆっくり」「進行 しない」の4種に分類 されます。すると「速 い」がんは、成長があ まりにも速いので、検 診で見つかった時点で 手遅れで、「とてもゆ っくり」のケースでは、 検診で見つかった時点 で治療は必要ないとい うことも。最も検診が 有意義になるのが、そ の中間の「ゆっくり」 がんということになり ます

 

 

「短期間で命を奪う速いがんはあっという間に進行するので、早期では見つけられないことが多いのです。一方、早期がんとして見つかりやすい進行が遅いがんは、あせって早く治療しなくても結果はあまり変わらないだろうと指摘する専門家もいます。だとしたら、早期発見が必ずしもいいとはいえないことになります。私は『検診を受けるな』と言いたいのではありません。がん検診にはデメリットがあることもよく知ったうえで、自分で選択することが重要なのです。それに人間はさまざまな原因で亡くなります。がんばかりをやたらに怖がらず、まずは日頃から健康的な生活を心がけることがいちばん大切ではないでしょうか」

 

 

 

イラスト/浅生ハルミン 構成・原文/山村浩子

 

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