全身の代謝にかかわっているだけあって、甲状腺は奥が深いもの。今後、さらに甲状腺と甲状腺ホルモンに注目していけば、なんだかうつっぽい、疲れが取れない…そんな症状も改善できるかもしれません。今回から3回にわたって、甲状腺ホルモンに関する素朴な疑問にお答えしていきます。
教えてくれた先生方
Taisuke Yamauchi
山内泰介さん
1956年生まれ。医療法人山内クリニック理事長。日本甲状腺学会認定専門医、日本外科学会外科専門医、内分泌外科専門医。「主治医が見つかる診療所」（テレビ東京）などメディア出演も多数。著書に『症例解説でよくわかる甲状腺の病気』『ボクは甲状腺』（ともに現代書林）。http://www.yamauchi-clinic.or.jp
Setsuko Nakamura
中村節子さん
1957年生まれ。筑波大学附属病院内分泌代謝内科勤務を経て日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内分泌学会内分泌代謝内科専門医に。2002年より対馬ルリ子氏の立ち上げた女性総合診療における内分泌代謝糖尿病内科を担当。現在、対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座にて内科・内分泌内科外来を担当。http://w-wellness.com/ginza/
Q
甲状腺が悪いのかなと思ったら
まず何科に行けばいいの？
A
甲状腺を扱うのは「内分泌科」です。「内分泌代謝科」という名称のことも。また、甲状腺専門のドクターはあまり多くなく、正式には「甲状腺内科」「甲状腺外科」という標榜科目はありません。「日本甲状腺学会」のホームページでは、認定専門医・認定専門医施設が公開されているので、ぜひ探してみてください。（山内先生）
日本甲状腺学会 http://www.japanthyroid.jp/
Q
甲状腺の病気はほかにどんなものがあるの？
A
甲状腺の病気は大まかに言って「形の異常」と「機能の異常」に分けられます。腫れたりしこりができるのは形の異常。甲状腺の甲状腺ホルモンを作る能力が低下したり亢こう進しんしたりするのが機能の異常です。この組み合わせによって、さまざまな病気に分類されます。例えば、甲状腺ホルモンが少なすぎる「甲状腺機能低下症」の中には、前述の「橋本病」、「特発性粘液水腫」、「無痛性甲状腺炎」や「亜急性甲状腺炎」の回復期の低下…。形の異常の例としては大きく腫れる「びまん性甲状腺腫」やしこりができる「結節性甲状腺腫」がありますが、腫れていて低下症もあれば橋本病が疑われます。（山内先生）
Q
甲状腺ホルモンの材料、
ヨウ素はたくさん食べたほうがいいの？
A
海外ではヨウ素不足が指摘されますが、日本人は日常的に海藻類をよくとるのでヨウ素が不足することはありません。逆に、過剰に摂取すると甲状腺ホルモンの分泌が減り、一時的な甲状腺機能低下症になることも。「日本人の食事摂取基準（2015年版）」（厚生労働省）によると成人女性の１日の推奨量は130㎍（0.13㎎）。食品に含まれる量で一度確認を。（中村先生）
日本人の食事には
ヨウ素がいっぱい！
成人女性の１日の推奨量は130㎍（0.13㎎）。昆布は日本の食卓ではお馴染みの食材ですが、とりすぎて甲状腺機能低下症に陥ることもあるので要注意
海藻の中でも、特に昆布にはヨウ素が大量に含まれます。昆布だし１食分だけでも23日分の推奨量に達してしまうことに。ちょっとびっくり！
ヨウ素（ヨード）を多く含む食材
食材・料理・・・１食の目安量／含まれるヨウ素量
昆布煮・・・・・５ｇ（乾燥昆布）／12000㎍
昆布だし汁・・・１ｇ／3000㎍
ひじきの煮物・・７ｇ／2000㎍
昆布の佃煮・・・15ｇ／1650㎍
ヨード卵・・・・１個正味50ｇ／650㎍
タラ（マダラ）・大１切れ100ｇ／350㎍
ところてん・・・100ｇ／240㎍
わかめの味噌汁・10ｇ（乾燥わかめ）／190㎍
アワビ・・・・・中１個100ｇ／180㎍
海苔・・・・・・２分の１枚１ｇ／60㎍
次回もまた甲状腺ホルモンの素朴な疑問についてお答えしていきます。
イラスト／内藤しなこ 構成・原文／蓮見則子
