坐骨神経痛
私がお答えします!
平和病院副院長・横浜脊椎脊髄病センター長
田村睦弘さん Mutsuhiro Tamura
医師、医学博士。年間600件の脊椎手術を行い、累計執刀手術件数は9500件以上。日本を代表する脊椎外科医。著書多数
相談
お尻や太ももにかけて、しびれるような痛みがあります。特に腰を反らすと痛みが増し、歩行がつらいこともあります。
答え
坐骨神経痛の原因のひとつ、腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症状を起こしている可能性が。専門医に診てもらうことをおすすめします。
圧迫された坐骨神経に沿って痛みやしびれが出る症状です。
お尻から太もも裏側、ふくらはぎなどに、ピリピリとした痛みが走る…。そんな症状があったら坐骨神経痛かもしれません。
坐骨という名前から、痛みはお尻部分だけに起きると思っている人もいるようですが、実は「坐骨神経」は体の中で最も太く長い神経。腰からお尻、太ももの後ろ側を通り、足先までつながっています。
この神経が通る道に沿って、神経が圧迫されたり血流障害や炎症などが起こることにより、広い範囲に痛みやしびれ、麻痺が生じるのが坐骨神経痛です。時には「間欠跛行(かんけつはこう)」と呼ばれる歩行障害(痛くて歩けなくなり、休むとまた歩けることを繰り返す)が現れることもあります。
坐骨神経痛は病名ではなく、こうした症状の総称で、その原因となる病気はさまざまあります。
そのひとつは「腰部脊柱管狭窄症」で、加齢などで変形した椎間板や骨、靱帯などにより、神経が圧迫されて起こります。「腰を反らすと痛みが増す」「長時間立つのがつらい」「間欠跛行がある」場合は、この病気が考えられます。
もうひとつ多いのは「腰椎椎間板ヘルニア」で、椎間板が変性して起こります。「前かがみになると腰が痛む」「足を上げると脚が痛む」などの症状があります。
前者は50歳以上に、後者は40歳以下に多く見られ、高齢になると、このふたつが合併することも。
ほかにも、40代~60代の女性に増えてくるのが、女性ホルモンの低下による「腰椎変性すべり症」や「腰椎圧迫骨折」で、これも坐骨神経痛を引き起こします。その場合は臀部や脚の痛みだけでなく、腰痛を訴えるケースが多くなります。
病院では、問診、触診、レントゲン、MRI、必要に応じてCTや下肢血流検査、骨粗しょう症検査などを行います。治療は生活習慣の改善、物理療法(温熱療法など)、運動療法、装具療法(コルセットなど)、薬物療法、ブロック療法(局所麻酔薬や抗炎症薬の注射など)、手術などが、症状に合わせて行われます。
最近では、椎間板内に酵素を含む薬剤を直接注射して、ヘルニアによる神経の圧迫を弱める「ヘルニコア」が保険治療に認可されました。
患者本人が注意すべきなのは、禁煙、肥満の場合は減量のほか、長時間座りっ放しの状態を避けること。また、立つ、座る、歩く、荷物を持つなど日常の動作の際もできるだけ正しい姿勢を保ち、腰椎への負担を減らすことを心がけましょう。
自分で行う対策
- ●できるだけ正しい姿勢をとって、腰椎への負担を軽くする。
- ●肥満の人は減量を。
- ●喫煙者は禁煙。
病院で行う治療法
- ●物理療法、運動療法、装具療法、ブロック療法、薬物療法(鎮痛薬、神経阻害性疼痛薬、筋緊張弛緩薬など)、手術ほか。
イラスト/macco 取材・原文/山村浩子