潰瘍性大腸炎
私がお答えします!
みなと芝クリニック院長。日本消化器病学会専門医。専門分野から救急医、米国のがんセンターなど幅広い臨床経験を積み、東京で「村の診療所」のような、さまざまな症状に対応する、かかりつけ医を目指す
相談
下痢が続いています。過敏性腸症候群と言われていますが、ほかにはどんな病気が考えられますか?
答え
似たような症状では、潰瘍性大腸炎が考えられます。一度、消化器内科で検査を受けるといいでしょう。
大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができて下痢や腹痛、血便の症状が見られる病気です。
下痢を起こす病気はさまざまありますが、最近、増加傾向なのが潰瘍性大腸炎です。これは大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる炎症性の疾患。通常、炎症は直腸から始まり、徐々に大腸全体に広がっていきます。
おもな症状は、ひどい下痢と腹痛、そして血便を伴うのが特徴です。しかし、なかには血便がないこともあり、こうなると他の病気、特に過敏性腸症候群などと区別がつきにくく、発見が遅れることも。
多発する年齢は男女とも20代~30代前半ですが、最近では子どもや50歳以上の中高年にもよく見られます。
食べ物に関係なく下痢が続き、整腸剤が効かない、腹痛がつらい…という症状が1~2週間続く場合は注意が必要です。特に飲酒をする人は日常的に下痢に慣れているケースも多く、血便があって初めて驚いて、病院を受診することが多いようです。
原因は不明とされていますが、発症しやすい体質の遺伝、腸内細菌叢(そう)の悪化、自己免疫反応の異常、食生活の関与などが考えられています。
診断は、まず細菌や感染症、潜血の検査を。これらがない場合は、過敏性腸症候群の薬などで様子を見たり、並行してX線や内視鏡による画像検査を行い、炎症や潰瘍の状態を調べて、総合的に判断します。
治療は軽症~中等症では薬物療法が中心ですが、完治するものではなく、寛解に導くものです。重症の場合は手術で大腸の全摘術を行います。こうなると予後やQOLは著しく低下します。そうならないように、早期発見、早期治療が重要です。
最近は炎症を起こしているさまざまな原因にアプローチする、よい薬がたくさん開発されています。そのため、ほぼコントロールができ、通常の生活が送れます。
薬物療法に加えて、腸内細菌叢を整える食事や、FODMAP(フォドマップ)と呼ばれる、下痢やお腹の張りの原因となる食材を避けていく…といった食事療法を行うこともあります。
また、一部の医療機関に限られますが、他人の健康な便を移植する「便移植」という方法も。しかし、自由診療であることや、効果の持続性などに問題があり、まだ一般的にはなっていません。
患者本人が気をつけることは、規則正しい生活と良質な睡眠の確保、ストレスをためない…といった基本的なことです。私の臨床の経験上、職場が変わったなど、大きな環境の変化があったタイミングで発症している人が多いと感じます。ストレスと上手につき合うことが大切です。
自分で行う対策
- ●食事の内容を見直す。
- ●ストレスをためない。
- ●規則正しい生活と質のいい睡眠を心がける。
病院で行う治療法
- ●薬物療法、食事療法、便移植(一部の医療機関に限る)、最終的には手術。
イラスト/macco 取材・原文/山村浩子