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40代~50代の女性に多い「腰痛の5つのタイプ」って? おもな症状、原因と対策まで専門医が解説!

更年期世代の体の悩みの代表「腰痛」の症状や原因はさまざま。なかなか治らないという人も多いけれど、どうしたらいいの?脊椎外科専門医の吉原潔先生に、腰痛の5つのタイプを伺いました。自分の腰痛はどのタイプかチェックして、腰痛解決の道を探ってみましょう。

 

 

40代〜50代の女性に多い腰痛、5つのタイプを知って、対策を!

 

腰痛といっても、症状や原因はさまざま。複数の要因が重なっている場合もあり、医師でもなかなか原因を特定するのは難しいこともあります。

痛みが出たら自己判断せず、整形外科できちんと診断してもらうことが大切。

 

ただ、40代〜50代の女性に多い腰痛には、おもに5つのタイプがあり、自分の腰痛の症状などから、自分はどのタイプの腰痛かをある程度、推測できるそう。

 

5つの腰痛の症状により、どうしたらいいのか? 治療法などについて吉原先生に伺いました。

 

タイプ1
歩行困難になりやすい
腰部脊柱管狭窄症が原因の腰痛

おもな症状は?
・安静時に痛みがなくても、少し歩くと下肢に痛みやしびれが生じて歩けなくなるが、しばらく休むと症状が治まる。
・腰を真っすぐ伸ばして立つと、痛みやしびれを感じる。
・体を前に曲げるより、後ろに曲げるほうがつらい。
・自転車に乗るのには支障がない。

 

原因と特徴は?

「腰部脊柱管狭窄症は、腰椎部の神経の通り道(脊柱管)が狭くなることで神経が圧迫され、下肢の痛みやしびれ感、麻痺などが生じる病気。

上記のような症状のほか、立ったり、歩いたりすることで症状が悪化するので、長い距離を歩くことができなくなるのも特徴。

生まれつき脊柱管が狭いため起こることもありますが、多くは加齢による椎間板の変性や骨の変形、靭帯の緩みなどが原因です」

 

どんな人に多い?

「50代から増え始め、高齢者の10人に1人は発症しているともいわれます」

 

対策は?

「症状が軽ければ、鎮痛剤や血行改善薬の内服、神経ブロック注射などで症状を緩和しますが、症状が進んだ場合などは手術も選択肢に。痛みが出ないよう、歩くときに杖をつくなど、前かがみ姿勢が保てる工夫をすることがポイントです。

痛みが強くない場合は、自分でエクササイズをすることで改善しやすくなります」

 

正常な脊柱管

 

腰部脊柱管狭窄症

 

 

タイプ2
女性より男性に多い
腰椎椎間板ヘルニアが原因の腰痛

おもな症状は?
・腰やお尻の痛みのほか、下肢のしびれや痛みがあることが多い。
・神経の圧迫が強いと、脚の力が入りにくくなったり、筋力が低下することがある。
・突出した椎間板が大きい場合、排尿や排便のトラブルが起こることも。
・腰を後ろに反らすより、前に曲げるほうがつらいことが多い。

 

原因と特徴は?

「腰椎椎間板ヘルニアは、上記で示したような症状が起きます。腰椎と腰椎の間にある椎間板という柔らかい組織が変性して突出し、腰椎の中を走る神経を圧迫することで発症します。加齢のほか、腰に負担がかかる姿勢での長時間の作業や、重い物の持ち運びなど、腰椎に過度な負荷がかかることで起こります。また、喫煙で発症率が上がるほか、遺伝的要因もあるといわれています」

 

どんな人に多い?

「20代〜40代に多く、女性よりも男性のほうが2〜3倍起きやすいといわれています」

 

対策は?

「鎮痛剤などの服用や、神経ブロック注射のほか、コルセット装着や理学療法などで自然に回復していくことが多いです。改善しない場合は手術も選択肢になります。痛みが強くない場合には、エクササイズを取り入れることで改善しやすくなります」

 

椎間板ヘルニア

 

タイプ3
スポーツや悪い姿勢などで起きやすい
筋・筋膜性の腰痛

おもな症状は?
・腰の痛みはあるけれど、下肢の痛みやしびれは伴わない。
・腰まわりを強く押したり、運動をしたりすると痛みが出る。
・腰を前に曲げるよりも、後ろに反らしたり、体をねじったりする動きで痛みが出やすい。

 

原因と特徴は?

「筋・筋膜性の腰痛とは、腰の筋肉や筋膜が、慢性的あるいは急激な負荷によって損傷し、炎症が起きて痛みが出るものです。脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアと違い、MRIやレントゲン検査で異常が見られないことが多いので、病院で❝問題ない❞と言われてしまうことも多いです。
腰の肉離れともいえ、押すと皮膚のすぐ下の部分に痛みがある、背中が突っ張るなど、筋肉や筋膜に起因する痛みと思われる場合にこのタイプと診断されます」

 

どんな人に多い?

「スポーツをしている人や悪い姿勢などで筋肉や筋膜に過度に負荷がかかっている人に起こることが多いです」

 

対策は?

「治療は、痛み止めの投薬、ブロック注射、超音波で画像を確認しながら筋膜に薬液を注射し、筋膜の癒着をはがすハイドロリリースを行うことも。

また、リハビリでは、過剰に突っ張っている筋肉の緊張を緩和し、逆に働きが弱い筋肉を強化します。痛みが軽度なら、自分でエクササイズをすることでも改善しやすくなります」

 

 

タイプ4
不安定な姿勢によって起きる
仙腸関節障害が原因の腰痛

おもな症状は?
・仙腸関節(背骨の下部にある仙骨が、骨盤の左右の腸骨と組み合わさってできている関節)のあたりを押すと痛みがある。
・片方のお尻、あるいはそけい部に痛みがある。
・下肢に痛みやしびれがある場合もある。
・あお向けで寝ることができない。
・痛いほうを下にして寝ることができない。
・椅子に座っているのがつらい。痛いほうのお尻を浮かせて座っている。
・足をついて体重をかけると痛む。

 

原因と特徴は?

「仙腸関節障害は、仙腸関節が不安定になって関節にずれが生じたり、仙腸関節部にある靭帯が伸びすぎることで、体重の衝撃吸収がうまくいかず関節に炎症が起き、痛みが発生します。

中腰や腰のひねりなどの不安定な姿勢を続けることで起きやすいです」

 

どんな人に多い?

「齢層は若者から高齢者まで幅広く、男性より女性に多く見られます」

 

対策は?

「治療は、安静、痛み止めの投薬、骨盤ベルトの装着、神経ブロック注射などがあります。リハビリで骨盤の位置を修正し、それを保てるように骨盤まわりの筋肉の強化、股関節や背中のストレッチなども行うと改善しやすくなります」

 

 

タイプ5
椎間関節に何らかのストレスがかかって起こる
椎間関節障害が原因の腰痛

おもな症状は?
・腰を後ろに反らしたり、ひねったりする動きで痛みが起きやすい。
・右か左、どちらか決まった側の腰に痛みを感じることが多い。
・お尻が痛むこともある。
・同じ姿勢を続けていると痛み、姿勢を変えたり、動いていると痛みが軽減する。

 

原因と特徴は?

「腰椎の上下の骨は椎間板と左右の椎間関節と呼ばれる関節によって連結されています。椎間関節性の腰痛は、この椎間関節に過度な圧力がかかって変性が生じたり、炎症が起きたりすることで生じます。前述の筋・筋膜性の腰痛と区別がつきにくかったり、両方が合併していることもあります」

 

どんな人に多い?

「加齢や、腰を過度に大きく動かしたり、繰り返し動かすことなどで徐々に起きることが多いです」

 

対策は?

「治療は痛み止めの投薬や、コルセット着用、理学療法などを行います。

同じ姿勢や、無理な姿勢を長時間とらないようにし、運動不足や肥満を解消することが予防・改善につながります。痛みが強くない場合には、エクササイズを取り入れて積極的に体を動かしましょう」

 

 

 

ぎっくり腰は、どのタイプの腰痛?

そのほか、ぎっくり腰も腰痛ですが、これはどのタイプなのでしょうか?

「ぎっくり腰は、急激に起こる腰痛のことで、正式な病名は急性腰痛症といいます。

原因はさまざまですが、タイプ3の筋・筋膜性の腰痛や、タイプ4の仙腸関節障害、タイプ5の椎間関節障害などが原因で起こることが多く、中にはタイプ1の腰部脊柱管狭窄症や、タイプ2の腰椎椎間板ヘルニアが悪化して起こるケースもあります。

1〜2日安静しても改善しない場合は、受診をおすすめします。痛みが落ち着いてきたら運動を取り入れるほうが早く改善します」

 

 

 

【教えていただいた方】

吉原 潔
吉原 潔さん
脊椎外科専門医、スポーツドクター、フィットネストレーナー
公式サイトを見る

医学博士。アレックス脊椎クリニック名誉院長。日本医科大学卒業後、同大学整形外科入局。帝京大学医学部附属溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、2017年よりアレックス脊椎クリニック院長。日本整形外科学会専門医、日整会内視鏡下手術・技術認定医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザー。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。トレーナーとしての信条は「ケガをしないトレーニング方法を指導すること」。50歳を過ぎてから筋トレでメタボ体型を脱し、ベストボディコンテストに出場、受賞歴多数。著書に『ドクターズスクワット』(アスコム)など。

 

撮影/藤澤由加   ヘア&メイク/佐々木  篤 モデル/SOGYON  イラスト/内藤しなこ 取材・文/和田美穂

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