【教えていただいた方】

幼少期に病気がちだったことから健康に興味を持ち、国立大学で薬を作る研究を行う。しかし、自身が椎間板ヘルニアになり、寝たきり状態の日々を経験。手術するしかないと言われるも、整体の技術により完治。柔道整復師・鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の3つの国家資格を取得し、滋賀県草津市に慢性腰痛専門「整体院 智-TOMO-」を開院。YouTubeチャンネル『ストレッチ整体師とも先生』は、登録者数58万人超え(2024年)に。著書に『「バナナ腰」を治せば、体の不調が消える! 腰痛・脊柱管狭窄症・ぽっこりお腹・ストレートネックを改善!』『「バナナ腰」を治せば、血圧が下がる! コレステロール値も改善! 』(ともに小学館)がある。
あなたもきっと「バナナ腰」! まずはセルフチェックを
「OurAge読者の皆さん、こんにちは! 整体師ともです。腰痛専門整体師としての僕の使命は、“バナナ腰”と名づけた反り腰を治すため、簡単なストレッチを習慣化してもらい、多くの人の健康寿命を延ばすことです」
バナナ腰とは、「腰がバナナのように反りすぎている“反り腰”の状態」のことで、とも先生によるネーミング。バナナ腰になると、腰はもちろん、体全体に歪みが生じてしまい、40代、50代特有のさまざまな不調を引き起こします。
「尿もれ、頭痛、睡眠の質低下、首こり&肩こり、冷え、むくみ、便秘などの不調については、以前の連載でもご紹介させていただきました。
そこで今回は、このバナナ腰を治したことで、本来の不調はもちろん、なんといつのまにか血圧やコレステロール値(LDL)*も下がっていた!という驚くべき結果に焦点を当てて、お話をしたいと思います」
*悪玉コレステロール(LDL)を指します
さて、まずは自分がバナナ腰になっていないかどうか、簡単なセルフチェックを行ってみましょう。
バナナ腰を治すと、薬に頼らなくても、血圧やコレステロール値が下がる!?
とも先生の整体院を訪れた多くの患者から続々と聞こえてきたのは、こんな声だったといいます。
「バナナ腰(反り腰)が改善されたら、血液検査で、血圧やコレステロール値も下がっていたことが判明しました!」
とても気になる結果ですが、とはいえ、「バナナ腰(反り腰)と、血圧やコレステロール値がいったいどう関係するの?」と疑問に思う人は多いはず。とも先生としては、そこは想定内だったのでしょうか?
「解剖学・生理学的に考えれば、バナナ腰を治すことで、血圧やコレステロール値が下がることはわかっていました。でも、僕自身は普段は腰や膝など、痛みの治療をメインに行っているので、血圧やコレステロール値が下がったことの患者さんの喜びまでは、あまり意識してなかったですね。その分、予想外のリアクションがあり、うれしかったです」
なるほど。では、バナナ腰と血圧やコレステロール値との相関関係について、わかりやすく教えていただけますか? そもそも私たちには、反り腰がいかに体に悪影響を及ぼしているのか、という意識自体があまりないんですよね。
「バナナ腰というのは、ひと言で言えば、骨盤が歪んでいる状態です。でも一般の方にとっては、歪んだ骨盤を元に戻せば、血液検査の数値が変わる、なんていうことは理解できなくて当然だと思います。ただ、内臓も血液の流れも、それらをしっかりと支えて正常に働かせている土台は何かというと、実は骨盤なんです」
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骨盤は体の土台! その歪みは、血管の不調も引き起こす
つまり骨盤が、血圧やコレステロールの数値のカギを握っている、ということですか?
「はい。体の根本を支えているのは骨格であり、特に骨盤はそのベースです。骨盤の上に背骨、さらに頭がのることで体はバランスを保っていますが、骨盤が歪むとその影響で背骨や頭の位置くずれ、姿勢全体が歪んでしまいます」
↑右から「骨盤の位置が正常」、「骨盤の位置が後傾」、「骨盤の位置が前傾」の状態。左と中が「バナナ腰」に
例えば、猫背の姿勢では前側が圧迫され、胃や食道に負担がかかり、逆流性食道炎になりやすくなります。胃が圧迫されて、胃酸が逆流しやすくなる症状を感じたことがある人は多いですよね。前かがみの姿勢で作業する人にこの症状が多いのもそのためです」
姿勢(骨盤の歪み)と血圧の関係も、逆流性食道炎の例と同じように考えるとわかりやすいですね。つまり姿勢の歪みが血管も圧迫し、影響を及ぼす、と。
「そうです。普段は多少の圧迫があっても問題を感じにくいですが、長年の歪みが積み重なると、内臓や血管への負担が大きくなり、血圧やコレステロール値の上昇につながると言えます。
骨盤の歪みにもいくつかのタイプがありますが、なかでもバナナ腰は、血圧や内臓の働きに影響を与えますね。反り腰の状態では、背骨のS字カーブがくずれ、その結果、腰や背中の筋肉が緊張し、内臓の圧迫、ひいては血流の悪化を引き起こすわけです。
そして背骨のバランスがくずれると、自律神経の働きにも影響が出ます。自律神経は血圧の調整にもかかわっていて、骨盤の歪みから背骨の歪みにつながり、活動的な時に優位になる交感神経が過剰に働くことで、血圧が上がりやすくなってしまうんです。また、姿勢のくずれによって血流が滞ると、コレステロール値の上昇にもつながるともいえますね」
骨盤は「血流のベース」といっても過言ではない
バナナ腰は、単に見た目の問題だけではない、ということがよくわかりました。骨盤の重要性についてもしかり!
「骨盤と血流はしっかり結びついていますし、決して飛躍した話ではないんです。実際に、骨盤が体の土台になっているのは事実で、血流だけでなく、内臓の働きや自律神経のバランスにもかかわっています。特に女性の場合は、子宮や婦人科系の健康とも深い関係がありますね。女性は出産などの経験を通じて骨盤を意識することが多いですが、血圧やコレステロールと結びつけることはほとんどない気がします。骨盤のケアというと、女性のものというイメージが強いですが、実は男女ともに、健康を支える重要なポイントです」
骨盤は内臓や血流の土台であり、婦人科系の土台であり、骨格や姿勢の土台、そして自律神経の土台でもある、と。めちゃくちゃ大事でした! この土台を整えることで、薬だけに頼らずとも、血圧やコレステロール値を下げる解決策はある、ということですね。
「はい。バナナ腰が治ると、血圧・コレステロール値が下がるという仕組みの大きなひとつが、骨盤の歪みとの関係でした。実はあともうひとつ同じくらい重要な仕組みがあるので、次回さらに深堀りしていきましょう」
イラスト/green k 取材・文/井尾淳子