今年はすでにインフルエンザが猛威を振るいはじめたようですが、新たな予防のポイントが見えてきたというニュースが!
インフルエンザはご存じのように「ウイルス」が悪さをするもの。ですから、体内に入れない、もしくは入っても出す! これさえできれば、インフルエンザに対抗できるのです。
ではどうすればいいのでしょう。花王ヘルスケアフォーラムで、勉強してきました。
ウイルスの大好物「乾燥と低い気温」に挑むには
教えてくださったのは、帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉科の鈴木雅明教授です。
まずはこちらをご覧ください。東京の冬の空気は、20年前と比較して、20%も湿度が低くなっています。ほか、札幌、仙台、横浜、名古屋、京都、福岡なども同様で、非都市部と比較すると都市部は乾燥化しているそうです。つまり、ウイルスが活発になりやすい環境というわけです。
さらに、気温もインフルエンザ感染リスクと大きく関係します。下のグラフは、湿度が20%、50%、80%で、気温が8℃、22℃、32℃の環境下でウイルス生存率を比較したものですが、温度が22℃を下回ると、生存率が一気に高くなっています。そして、もっとも温度が低い8℃で湿度が20%だと生存率が高いことがわかります。
つまり「加温・加湿」ができれば、ウイルスに対抗できるわけですね。
じつは、その「加温・加湿」を行っているのが鼻だったのです。
鼻は、どんなに冷たく乾燥した空気を吸っても、鼻腔内で加温・加湿し、37℃、湿度100%の空気にして肺に送るのだそう。さらに、鼻の内部は外層粘液(粘液層)と、線毛間液(漿液層)の2層になっており、線毛運動により外層粘液が流され、ホコリやバクテリア、ウイルスを排出する機能があるのです。この加温・加湿は喉にはない機能。つまり、加温加湿機能付きの空気清浄機、ということですね。すごすぎる、鼻。
鼻呼吸がスムーズに行われていれば、健康を維持できるのですが、現代人は乾燥による鼻粘膜の乾燥やアレルギー性鼻炎などもあり、口呼吸をする人が増えているのだそうです。この「口呼吸」が、インフルエンザ罹患へのきっかけに!!
では、普段口呼吸をしていないか、チェックしてみましょう。
□口の中が乾きやすい
□集中している時、無意識に口が開いている
□唇が荒れている、唇が乾いている
□鼻づまりがある
□いびきをかく
□朝のどが痛い
□朝口臭がある
□夜間よだれがでる
□寝起きに口の中が乾燥している
ひとつでも当てはまるものがあれば、無意識に「口呼吸」になっているかもしれません。実は、口呼吸をするのは、哺乳類では人間だけなのだそうです。言語を話すために、口の奥の壁が開いてしまったのだそう。口呼吸はのどにダメージを与えやすく、以下のような弊害がでるそうです。
思い当たるものがいくつもあります。もしや、これらは口呼吸が原因だったのか…。
では、どうすればいいのでしょうか。
できるだけ口呼吸しないためにはどうすればいいの?
ここからは、花王パーソナルヘルス研究所の斉田泰人さんが教えてくださいます。
インフルエンザ対策は、「ウイルスを入れない、入っても出す」のが基本でした。そのためには鼻が空気の加温・加湿をスムーズに行い、線毛運動を活性化させることが重要です。
そのために花王が着目したのが「蒸気」。
蒸気は伝熱効率が高く、蒸気温熱技術により腰痛や肩こりなど、さまざまな不調の改善に役立っていることがわかっています。そして、呼吸制御(のど鼻ケア)にも役立つことがわかりました。
以下は花王の行った実験です。
健常男性37名に、20℃、湿度10%の環境下で加温・加湿できるシートと、普通のシートを鼻から口にかけて装着し、
① のど・鼻の感覚
② 鼻通り
③ 鼻呼吸・深呼吸
それぞれのデータを比較しました。
結果は、加温・加湿できる試験用シートを使用した方がいずれも優位な結果に。
のど・鼻の乾燥感が改善した以外にも、鼻通りがよくなって呼吸が楽になり、鼻呼吸が促進されて深い呼吸に変化したという結果が示されました。
実はこれ、試験用シートの内部環境が、“インフルエンザに罹りにくい湿度”になっているんです。
ちょっと難しそうですが、注目したいのは「絶対湿度」。1㎥の空気中に含まれる水分量のことで、これが11g/㎥を切るとインフルエンザ流行の目安になるのです。被験者が装着した試験用シートの内部は、2時間を過ぎても約25g/㎥の絶対湿度をキープしていました。これにより、鼻腔内の線毛運動が活発になったこともわかりました。異物をどんどん出してくれるわけですね。
インフルエンザリスクを高める口呼吸を防ぐ方法として、鼻(のども含む)の加温・加湿は有効な手段なのですね。今年の冬は、蒸気の効果を味方にして、インフルエンザの猛威に備えましょう!