思うように人と会えない状況が続く中、心の不調を訴える女性が急増中! 医療ジャーナリスト増田美加さんが、精神科医の藤澤大介先生に、心の不調の早期の見極め方を聞きました。
ただでさえ心の不調が起きがちな更年期世代に…
コロナ禍での生活が長くなり、心への負担要素が増えています。更年期世代はただでさえ、心に不調を起こしやすい年代。卵巣機能の低下により、女性ホルモンのエストロゲン分泌が急激に減少することで、体の不調だけでなく、心の不調も起こりやすくなります。
私もコロナ禍で生活様式が一変し、出張ができず、思うように人と会えない状況が長期化。うつっぽさを感じることがたびたびあります。心の不調も体の不調と同じく、早期の対策が大切です。心の不調の早期の見極め方と、ちょっとした工夫で前向きな考え方に変える方法を取材しました。
「更年期世代の心の不調で多いのは、落ち込み、注意力低下、イライラ、不眠などですが、さらにコロナ禍で極端に活動を絞り、行動に制約をかけてしまうことで、心への負荷(ストレス)が過剰にかかっている人も見られます」と藤澤大介先生。
自粛生活の長期化で、心への過剰な負荷を自分で見逃していることも少なくありません。どのようなところにストレスサインは表れるのでしょうか?
「ストレスサインは、“気分”“考え方”“行動”“体調”に表れます」と藤澤大介先生。
気分は「不安、心配、イライラ、焦り、怒りっぽさ、神経過敏」などで表れます。考え方では「自分が悪い、こんなはずではない」など、マイナスなものの見方をすることがストレスサイン。
行動では「人と会いたくない、何かをする意欲が持てない、お酒が増える、過食になる、逆に食べられない」など。
体調は「動悸、胃痛、耳鳴り、肩こり」などで表れます。これらが影響し合い、さらなる悪循環のスパイラルに陥りやすいのです。
「このような心の不調は、更年期障害で起こることもありますが、特に更年期世代はうつ病の可能性もあります。前述のようなストレスサインを感じ、変化に気づいたら早めに医師に相談しましょう。下でご紹介しているうつ病傾向のチェックリストも参考にしてください」
【うつ病傾向をチェック!】
ここ2週間、次のような問題に、頻繁に悩まされていませんか?
- □ 物事に対してほとんど興味がない、または楽しめない
- □ 気分が落ち込む、憂うつになる、または絶望的な気持ちになる
- □ 寝つきが悪い、途中で目が覚める、逆に眠りすぎる
- □ 疲れた感じがする、または気力がない
- □ 食欲がない、または食べすぎる
- □ ダメな人間だ、人生の敗北者だと気にやむ
- □ 新聞を読む、テレビを見るなどに集中することが難しい
- □ 他人が気づくくらいに動きや話し方が遅くなる、逆にソワソワ落ち着かず、普段よりも動き回ることがある
- □ 死んだほうがましだ、あるいは自分をなんらかの方法で傷つけようと思ったことがある
●「こころとからだの質問票」(PHQ-9©1999 Pfizer Inc.)を参考に藤澤大介先生監修
更年期障害のメンタル低下とうつ病などとの見極め方は?
うつ病や不安症は、更年期世代に多く、更年期障害によるメンタル低下との見極めは難しいことが少なくありません。更年期障害の約3割にうつ病が、約1割に不安症が合併するといわれています。
対策としては「まず婦人科を受診して、更年期障害の評価や治療を受けましょう。更年期障害の治療は、HRT(ホルモン補充療法)や漢方薬など。更年期障害の治療で改善しなければ、そのときは精神科や心療内科を受診してみてください。うつ病や不安症の場合、薬物療法と心理療法で改善が期待できます」(藤澤大介先生)。
お話を伺ったのは
増田美加さん
Mika Masuda
1962年生まれ。女性医療ジャーナリスト。35年にわたり女性の医療、ヘルスケアを取材。自身が乳がんに罹患してからは、がん啓発活動を積極的に行う。著書に『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか多数
藤澤大介さん
Daisuke Fujisawa
慶應義塾大学医学部准教授(精神・神経科/医療安全管理部/緩和ケアセンター)。精神科医、公認心理師。慶應義塾大学医学部卒業後、横浜市立市民病院、国立がん研究センター勤務、米国留学などを経て現職。共編著書に『マインドフルネスを医学的にゼロから解説する本』(日本医事新報社)
イラスト/堀川理万子
※後編では、「うまくいかない考え方から抜け出す方法」について、藤澤大介先生に教えていただきます。