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実は閉経前後に上がる「乳がんリスク」!検査すれば確実に発見できるの?

増田美加

増田美加

1962年生まれ。女性医療ジャーナリスト。約35年にわたり女性の医療、ヘルスケアを取材。自身が乳がんに罹患してからは、がん啓発活動を積極的に行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』ほか。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員

抗がん剤治療中でウィッグをつけながら乳がん罹患を公表した、タレントの梅宮アンナさん。その姿に勇気づけられた人も、また「毎年人間ドックを受けていたのに、検診で見つからなかったの?」と不安や疑問を持った人もいるはず。閉経前後は、乳房の状態も変わる時期。早期発見のための方法を、医療ジャーナリスト増田美加さんがレポートします。

【教えていただいた方】

片岡明美
片岡明美さん
がん研有明病院 乳腺センター乳腺外科医長・トータルケアセンターサバイバーシップ支援室長
公式サイトを見る

1994年、佐賀医科大学卒業。九州大学医学部第二外科、国立病院機構九州がんセンター乳腺科などを経て、2016年より現職。日本乳癌学会評議員、日本サポーティブケア学会妊孕性部会部会長。認定NPO法人乳房健康研究会副理事長、認定NPO法人ハッピーマンマ理事

早期の乳がんには、しこりなどの自覚症状はほとんどない!

 

乳がんは日本人女性の9人に1人がかかる、女性のがんで最も多いがんです。特に更年期世代に乳がんが増えていることを知っていて、心配している女性も多いと思います。早めに乳がんに気づくには、どのような自覚症状に気をつければいいのでしょうか?

 

「早期の乳がんには、自覚症状はほとんどありません。進行すると乳房のしこり、皮膚にえくぼやただれができる、左右の乳房の形が非対称になる、乳頭(乳首)から血液混じりの分泌液が出る、痛みなどの症状が起こります。でもこれらの症状は、早期ではない可能性が高まります」と乳腺外科医の片岡明美先生。

 

先日、梅宮アンナさんが乳がんの中でも約5%という稀な「浸潤性小葉がん」のステージ3Aで見つかったことを公表しました。彼女は毎年検診を受けていたそうですが、「人間ドックの検診でマンモグラフィと超音波の両方を受けていても見つからない乳がんがあるのか…」と不安になりますね。

 

主に乳がんは、乳管というおっぱい(母乳)の通り道にできます。でも、浸潤性小葉がんは、乳房内の小葉というおっぱいを作る部分にできる乳がんです。この浸潤性小葉がんは、通常の乳がんに比べて、複数の乳がんが同時に出現したり、両側の乳房にがんができることもあります。

 

【乳房の構造】

乳房の構造
乳房は、乳腺と脂肪組織からできています。乳腺は、乳頭から放射状に広がり、15〜20の乳腺葉(にゅうせんよう)に分かれています。乳腺葉は、乳管と小葉(しょうよう)からできています。腺房(せんぼう)という小さい組織が集まって形作られているのが小葉です。乳房では、授乳期にホルモンが働くと、腺房が発達して小葉内でおっぱい(母乳)が作られ、乳管を通して乳頭(乳首)まで運ばれます。


早期発見には、どんな検診をどこで受ける?

 

「浸潤性小葉がんを見つけるためには、マンモグラフィでは左右差、乳房の収縮や変形などを過去の検査画像と比較することが大切です。同じ医療機関で、定期的に乳がん検診を受け、前回の画像と比較をすることで、発見につながりやすいといわれています」

 

検診は100%確実なもの、ではありません。画像には映らないがんもあります。ですから仮に、検診を受けた翌日であっても、乳房にしこりやひきつれを感じたり、乳首から血の混じった分泌液が出たりなど、いつもと違う症状を感じたら、次の検診を待つのではなく、すぐに“乳腺外科を受診”しましょう。その症状の原因を突き止める検査や診察をしないと、せっかくのサインを見逃すことになります。自分の乳房に日頃から関心を持っておき、変化に気づくことが重要です。

 

浸潤性小葉がんに限らず、早期の乳がんは自覚症状がほとんどないので、早期発見のためには、やはり乳がん検診が重要です。そこで問題となるのは、更年期世代以降は、どんな乳がん検診をどこで受けるか、です。

 

「乳がん検診は、40歳から2年に1回のマンモグラフィ検査が基本です。セルフチェックで発見できるしこりの大きさは、だいたい2cmくらいです。手で触って何もないからと満足してしまっては、ごく初期の乳がんの発見はできません。乳がん検診では、しこりなどの自覚症状が出る前の早い段階の乳がんの発見が可能です」

 

検診を受ける医療機関は、できれば乳腺専門医のいる施設をおすすめしたいです。【日本乳がん検診精度管理中央機構】という組織で施設認定を行っています。見落としを防ぎ、精度の高い検診を受けるために、ここにある認定を受けた医師・技師・施設のリストをぜひ参考にしてみてください。

 

【特定非営利活動法人 日本乳がん検診精度管理中央機構】

マンモグラフィ検診施設・画像認定施設リスト
https://www.qabcs.or.jp/mmg_eva/list/

【乳房健康研究会】

https://breastcare.jp/search-shisetsu/
医療機関の名前を入れると、医師・技師・施設の3つがそろっている施設が出てきます。3つを別々に探すより便利です。

 

高濃度乳房(デンスブレスト)だったら、どうする?

 

日本人女性の40~70%に『高濃度乳房(デンスブレスト)』と呼ばれる乳房タイプが見られます。
マンモグラフィでは、脂肪組織が黒く、乳腺組織やしこりが白く写ります。そのため、乳腺が多いタイプの乳房では、しこりがあっても白く写るため、しこりの発見が難しくなります。これはまるで、雪原の中で白いウサギを探すようだと表現されます。

 

高濃度乳房の人は、マンモグラフィでは乳がんが見つかりにくいため、精密検査が必要とされる割合が高い傾向にあります。

 

また、特に閉経後の高濃度乳房では、脂肪性乳房と比べて乳がん発症リスクが約3倍高く、肥満の高濃度乳房の人ではそのリスクが約12倍に上るという、日本人女性を対象とした研究結果も発表されています*1。

 

【マンモグラフィでは、がんを見つけにくい「高濃度乳房」】

デンスブレスト
医師は、マンモグラフィの画像を上記の4分類に分けて判定。右ふたつがアジア人に多い「高濃度乳房」で、がんがあっても見えにくいタイプ。欧米人に多い「脂肪性乳房」は乳腺が少なく、がんが見つけやすいタイプ。写真提供/NPO法人 乳がん画像診断ネットワーク

高濃度乳房の人は、マンモに超音波を組み合わせる検診を!

 

では、もしマンモグラフィ検診で高濃度乳房とわかったら、どうしたらいいのでしょうか?

 

J-STARTという日本人女性を対象とした乳がん検診の検証試験の中間報告では、40代女性において、マンモグラフィに超音波検査を組み合わせることで、乳がんの発見率が約70%~約93%に向上したことが報告されました*2。

 

現在、この研究ではさらに長期的な観察を通じて、マンモグラフィと超音波検査を組み合わせることによって、乳がんの死亡率を低減できるかどうかの最終的な検証が進められています。

 

「この結果から、40代の女性はマンモグラフィに超音波検査を組み合わせたほうが、乳がんの発見率が上がることがわかります。

 

また、乳房のタイプ(高濃度乳房かどうか)は年齢とともに変化します。特に、閉経後しばらくすると、若い頃に高濃度乳房だった人でも、脂肪性乳房に変わることがあります。脂肪性の乳房では、マンモグラフィでしこりがよく見えるため、定期的にマンモグラフィ検診を受けることが重要です」

乳がん_女性のイメージ画像

 

*1 Keiko Nishiyama, Narut oTaira, Taeko Mizoo, et al. Influence of breast density on breast cancer risk: a case control study in Japanese women. Breast Cancer. 2020;27(2):277–83.

 

*2 Noriaki Ohuchi,Akihiko Suzuki,et al. for the J-START investigator groups. Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial (J-START): a randomised controlled trial. the Lancet 5th november;2015

乳がんのリスクが高い人は?

 

自分が乳がんにかかりやすい(リスクが高い)かどうか、を知りたいところです。残念ながら、乳がんの原因ははっきりとはわかっていませんが、乳がんの原因のひとつに、女性ホルモンのエストロゲンの影響があるといわれています。

 

「食生活の欧米化に伴い、高タンパク・高脂肪の食事が増え、日本人女性の体格がよくなり、初潮年齢が早くなりました。さらに女性の社会進出により、初産年齢が上がり、出産回数が減少しています。すると、妊娠しない期間に卵巣から分泌されるエストロゲンが乳腺を刺激することにより、乳がんリスクが上がると考えられています。

 

また、遺伝性、家族性の乳がんもあります。血縁者に乳がんや卵巣がんにかかった人がいる場合はリスクが高いといえると思います」

 

【乳がんのリスク因子】

□ 血縁者(特に母、姉妹)に乳がんの人がいる
□ 乳がんにかかったことがある
□高濃度乳房である
□ 初潮が早かった(12歳未満)
□ 年齢が40歳以上
□ 出産経験がない、あるいは初産が30歳以降、授乳経験がない
□ 閉経年齢が55歳以上
□ 閉経後、肥満した
□エストロゲンを含む経口避妊薬、閉経後の長期のホルモン補充療法
□ 乳房の病気(乳腺炎など)になったことがある
□ 子宮体がん、卵巣がんにかかったことがある
□ 飲酒
□ 喫煙
□運動不足
□糖尿病

 

リスクが高い(ハイリスク)と考えられる人は、血縁に乳がん、卵巣がんの人がいる、「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の人。
中間リスク(ミドルリスク)には、乳がんにかかったことがある方、高濃度乳房の人もミドルリスクと考えられます。また、上記のリスク因子にたくさん当てはまる方もミドルリスクと考えてもよいかもしれません。

 

ハイリスクのHBOCの人の検診は、MRI検診が行われるようになっています。詳しくは次回お伝えします。ミドルリスクの乳がん経験者の人や高濃度乳房の人は、年1回のマンモグラフィと超音波検査を行ったほうがよいでしょう。

 

今、日本人女性の乳がんは、40歳から増え始め、60代がピークになっています。乳がんにかかる人が、働き盛りで家族や社会に頼りにされる忙しい年代の40代後半から増えているのは、日本の特徴です。

 

特に閉経前の女性は、高濃度乳房の人の割合が多いことが予測されます。検診では高濃度乳房かどうかを見極めて、マンモグラフィに超音波を組み合わせて受けることを考えてみてもよいでしょう。乳がん経験者の私は、年1回、マンモグラフィと超音波検査を合わせて行っています。

 

このように、今後の乳がん検診は、一人一人のリスクに合わせて検診方法を変えて行う「リスク層別化検診」に向かうべきとする専門家もいます。

 

欧米では、乳がんで亡くなる人の割合(死亡率)は減って来ています。しかし日本では乳がんにかかる人の割合(罹患率)が増えているだけでなく、亡くなる人の割合(死亡率)もいまだに増加しているのです(国立がん研究センター がん情報サービス 2019年データ)。

 

イラスト/かくたりかこ

 

 

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第34回日本乳癌検診学会学術総会と片岡明美先生が所属する認定NPO法人乳房健康研究会が「乳がんを知るための一歩、知らせるための一歩、支えるためにもう一歩」をテーマに、第20回「ピンクリボンウオーク2024」を開催します!

 

増え続ける乳がんに対し、参加者と企業や団体、公共団体が一丸となって、乳がん早期発見の大切さを伝え、乳がんに優しい社会を目指して発信する大会です。
ウォーキングアプリを使うので、全国どこからでも、誰でも参加できます! 10月1日~11月30日までの2カ月間、自分のペースで歩いて、乳がんの啓発活動に参加しませんか?

 

「ピンクリボンウオーク2024」

https://pinkribbonwalk.breastcare.jp/
【対象】趣旨に賛同する方ならどなたでも
【開催期間】2024年10月1日~11月30日(エントリーは11月30日まで受け付けます)
【開催形式】アプリによるオンライン開催
【参加費】1,000円(税込み)、高校生以下無料
【参加賞】ぐんまちゃんピンクリボンバッジ(参加費をお支払いの方)、参加者の中から表彰、賞品あり
【共催】第34回日本乳癌検診学会学術総会、認定NPO法人乳房健康研究会

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