心の負荷を軽減するにはストレスサインに早めに気づことが大切。医療ジャーナリスト増田美加さんが、精神科医の藤澤大介先生に、落ち込みスパイラルから抜け出す方法を聞きました。
心の不調を予防する「うまくいかない考え方から抜け出す方法」
心の不調が深まる前に予防したいと思いますが、効果的な方法はありますか?
「バランスのとれた食事や睡眠は、心の健康にも役立ちます。最もおすすめしたいのは体を動かすことです。スポーツのような本格的な運動でなくてもかまいません。家事やストレッチなど、座っている時間を減らす試みが大切です。ウォーキングならさらによし。運動は気持ちを外に向け、あれこれ考える時間を減らす効果もあります」
もうひとつ、藤澤大介先生の「うまくいかない考え方から抜け出す方法」がとても役立ったので、ここで紹介したいと思います。
うつっぽいときは、考えの幅が狭くなっています。「よいこともたくさんあるのに、些細なマイナス面にばかり目が向く」「自分に関係のないことまで自分のせいにして、自分を責める」などの考え方になっていたら、視野が狭まってマイナスに偏った考え方に行動や気持ちがはまっている可能性があります。
うまくいかないそんな考え方から抜け出るには、次のふたつを自分に問いかけてみましょう。友人や家族が同じように悩んでいたら、どのように言葉をかけますか? 優しい自分、リラックスしているときの自分だったら、どのように考えますか?
これは、マイナス思考に陥っている自分に気づき、前向きに、プラス思考で考える習慣(癖)をつける「認知行動療法」という方法のひとつ。心を軽くするためには、客観的視点で自分を見る癖をつけるとうまくいきます。マイナス思考のときには、必要以上に過去にとらわれ、未来を心配しすぎているから。
といっても、「客観的視点で自分を見るってどうやればいいの?」と、私も最初は戸惑いました。すると藤澤先生は「マイナスの考え方を雲に乗せて流すようなイメージで、問題から距離を置いてみて」と。
そこで私が行ったのは、広い空の見える川辺で雲と川を見ること。流れる雲と流れる川に嫌なことを流してしまおう! 視界の開けた場所で自分の考えを遠くから俯瞰で見てみたら、客観的視点の取り方が少しずつできるようになりました。
家にこもり近視眼的になりがちなコロナ禍。時には広い場所で空を眺めることも大切です。
お話を伺ったのは
増田美加さん
Mika Masuda
1962年生まれ。女性医療ジャーナリスト。35年にわたり女性の医療、ヘルスケアを取材。自身が乳がんに罹患してからは、がん啓発活動を積極的に行う。著書に『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか多数
藤澤大介さん
Daisuke Fujisawa
慶應義塾大学医学部准教授(精神・神経科/医療安全管理部/緩和ケアセンター)。精神科医、公認心理師。慶應義塾大学医学部卒業後、横浜市立市民病院、国立がん研究センター勤務、米国留学などを経て現職。共編著書に『マインドフルネスを医学的にゼロから解説する本』(日本医事新報社)
心の不調(前編)は、下のリンクから読むことができます。
イラスト/堀川理万子