人生100年時代…といわれていますが、それってホント? そもそも老化はどうやって起こるの? そんな素朴な疑問が湧いてくる「寿命と老化」について、最新の研究でわかっていることを老化研究の専門家が解説します!
大阪大学大学院医学系研究科内科学名誉教授。日本老年医学会前理事長、日本高血圧学会前理事長
人生100年時代というけれど…
自然界の動物の中でも、人間だけが短期間のうちに寿命を延ばしてきました。そしてそれは、この先どこまで続くのでしょうか?
2007年生まれの半数は107歳まで生きる⁉
「『人生100年時代』といわれるようになった発端は、英国の学者リンダ・グラットン氏らの著書です。そこに、『2007年に欧米で生まれた子どもの半数は104歳まで、日本の子どもにおいては107歳まで生きる確率が50%ある』と書かれていました。2023年度の日本における100歳以上の人(百寿者)は、9万人を超えると見込まれており、2050年には約55万人にまで増えると推計されています。
戦後、日本人の平均寿命が延び続けている背景には、栄養や公衆衛生の向上、医療の進歩などにより、乳児や若い人の死亡率が減ったことが考えられ、今後もこうした進歩が続くことを考えると、半数が107歳まで生きることはあり得ると思います」(樂木宏実先生)
●年齢と老化の関係モデル
細胞や臓器の老化は、一般的には20歳以降に始まりますが、その進み方は個人差があります。健康寿命をできるだけ延ばすことが、この人生100年時代には重要になりそう
寿命を決めるのは遺伝が25%、環境要素が75%
よく「長寿家系」という言い方がされますが、長生きできるのは遺伝的要素が大きいのでしょうか? 「確かに、体が丈夫といった純粋な遺伝的な要素はあります。あとは親と一緒に暮らすことで、食事や生活様式などから3歳頃までに受け継ぐ体質や資質の要素と、その後の生活習慣による要素は、遺伝が25%、環境要素が75%ではないかといわれています。
ですから親が早くに亡くなったからと悲観的に考えることはなく、生活習慣などによって長寿を目指すことは十分可能です。特に自立した生活ができる『健康寿命』が、実際の寿命とほぼ同じであることが理想です。中年期からそれに向けての取り組みを行うことが大切でしょう」
●遺伝要素25%
- ・生まれつきの遺伝
●環境要素75%
- ・3歳までに形成される体質
- ・生活習慣
生まれつきの遺伝的な要素と、その後3歳までに形成される体質や生活習慣による環境要素の、寿命にかかわる割合は25%対75%くらい
イラスト/カケハタリョウ 構成・原文/山村浩子