【教えていただいた方】
医療法人社団山本メディカルセンター理事長。2010年に同センターに入職し、皮膚科・形成外科を立ち上げる。アンチエイジング分野にも取り組み、メディカルエステ、ドクターズコスメなどの開発・販売も手がける。2016年山本メディカルセンター2代目院長に就任。皮膚科・形成外科、美容皮膚科、内科、人間ドック、訪問看護ステーションを統括。分子栄養学の観点からメニューを考案しているカフェレストラン「桜山茶寮」も運営。著書に『「内臓脂肪がなかなか減らない!」という人でも勝手に内臓脂肪が落ちていく食事術』(アスコム)がある。
内臓脂肪が増えると、体内で慢性的に炎症が起き、さまざまな病気の原因に!
まずは、内臓脂肪とはどんなものなのか、なぜ増えるとよくないのかについて齋藤真理子先生に伺いました。
「体には2種類の脂肪があり、皮膚と筋肉の間の脂肪が皮下脂肪で、臓器のまわりにつくのが内臓脂肪です。
このうち、増えすぎると問題なのが内臓脂肪です。
内臓脂肪が増えると、脂肪を蓄える機能を持つ脂肪細胞がパンパンに膨れてしまいます。すると、膨れた脂肪細胞から炎症性物質が放出され、体の組織に炎症が起きます。
特に問題なのは、肝臓に内臓脂肪がつく“脂肪肝”です。脂肪肝になると、肝臓が常に炎症を起こした状態になります。
そもそも肝臓には、
①代謝
②エネルギーの貯蔵
③解毒
④胆汁の生成
という4つの役割があります。
脂肪肝になって肝臓が炎症を起こすと、この4つが十分にできなくなってしまいます。
わかりやすく言うと、冷蔵庫に物をパンパンに詰め込むと冷やす機能が落ちてしまいますよね。脂肪肝もそれと同じで、肝臓の機能が正しく働かなくなるのです。
脂肪肝になると肝臓に蓄積された中性脂肪が血管にも流れ出るため、血管を狭めて詰まらせやすくします。その結果、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高めます。
また、脂肪肝が進むと、肝硬変や肝臓がんなど深刻な病気につながることもあります。さらに、脂肪肝の悪影響はそれだけではありません。
体には副腎という臓器があり、炎症を鎮めて修復させるステロイドが生成されます。このステロイドによって各臓器や器官の炎症が抑えられるのですが、肝臓が炎症を起こすとステロイドが肝臓で優先的に使われます。そのため、ほかに修復が必要な臓器にステロイドが回らなくなります。
肝臓に限らず、ほかの臓器に内臓脂肪がついてもこれと同じことが起きます。つまり、内臓脂肪が増えると、体内が傷ついているのに、修復する道具が不足した状態になるということ。これが続くと、さまざまな臓器や器官が弱り、深刻な病気を招くのです」
肝臓に脂肪がつくと基礎代謝が落ち、痩せにくい体になってしまう!
また、もちろん、内臓脂肪はダイエット的な観点からも問題があるそう。
「肝臓に脂肪がついて脂肪肝になると、基礎代謝が低下してしまいます。基礎代謝は、呼吸や体温の維持、内臓の稼働など、生命維持のために体が自発的に行うエネルギー消費で、1日の消費エネルギーの約60%を占めるといわれています。
そして基礎代謝のうちの約30%は肝臓が占めています。脂肪肝になると肝臓機能が低下するので、基礎代謝が落ちてしまい、その結果、痩せにくくなってしまうのです」
このように、内臓脂肪は放置しておくと、デメリットだらけだということ。
自分の隠れ内臓肥満度をチェックしてみよう
そんな内臓脂肪ですが、更年期以降になるとぐっと増えやすくなってしまうそう。
「女性ホルモンのエストロゲンには内臓脂肪の蓄積を防ぐ働きがあるのですが、エストロゲンの分泌が減少する更年期以降は、その恩恵が受けられなくなり、内臓脂肪がたまりやすくなってしまいます。お腹がぽっこり出てくるのはそのためです」
また、一見、痩せているように見える人でも、実は内臓脂肪が増えていることもあるというから要注意。
「見た目は太っていないのに、体の数値を測ると、体脂肪率が高く、肥満の人と変わらないという人、意外と多いのではないでしょうか。
このような場合、内臓脂肪が増えている可能性が高く、“隠れ内臓肥満”が疑われます。
偏った食生活や運動不足、睡眠不足などが続くと、気づかないうちに内臓脂肪が増えてしまいます。以下の項目に該当する人は、隠れ内臓肥満の可能性大です」
隠れ内臓肥満度チェック
□血圧が高い
□血糖値が高い
□悪玉コレステロール(LDL)値が高い
□ダイエットに失敗し、その後リバウンドした
□お腹は出ているが、お腹の肉を手でたっぷりつかめない
□肉が好きで魚をあまり食べない
□甘いものをよく食べる
□睡眠時間が短いほうだ
□糖質量の多いお酒をよく飲む
□タバコを吸う習慣がある
□ストレスが多い
上記で当てはまる項目が3個以下ならまだ内臓脂肪はそれほど多くなさそうですが、4〜8個ならじわじわ内臓脂肪がたまってきている状態。
9個以上なら内臓脂肪型肥満の可能性があります。
写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂