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「乳がん検診は痛い!」という人の新たな選択肢“3Dマンモ”とは?

増田美加さん

増田美加さん

1962年生まれ。女性医療ジャーナリスト。約35年にわたり女性の医療、ヘルスケアを取材。自身が乳がんに罹患してからは、がん啓発活動を積極的に行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』ほか。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員

乳がんにかかる人も、亡くなる人も増えている日本。それなのに検診受診率は上がってきません。女性からの「マンモグラフィが痛いから行きたくない」という声に応えた、3Dマンモグラフィが広がりつつあります。高濃度乳房の人にも有効といわれる3Dマンモとは、どんな検診法なのでしょうか。

乳がんが増えているのに、検診受診率が上がらない日本

 

1年間に9万人を超える女性が新たに乳がんと診断され、毎年約1万6000人の女性が乳がんで亡くなっています*1。もともと欧米に多く、日本には少ないがんだったのに、近年の罹患割合はアメリカでは8人に1人、日本も9人に1人とほぼ同じ割合に。さらに、注目しなくてはならないのが死亡率です。
*1 がん情報サービス 2020年、2022年

 

乳がんによる死亡率が高いアメリカでは、国を挙げてピンクリボン運動などの乳がんに対する啓発と、マンモグラフィを用いた集団検診を推進。50歳以上の乳がん死亡率が20~25%減少しました。

 

しかし、日本は残念ながら、乳がんに対する関心や知識がアメリカほど浸透していません。アメリカの検診受診率は約77%。日本は、いまだ約45%です。そのため、日本の乳がん死亡率は、まだ増え続けています。

 

【世界の乳がん検診受診率】

乳がん検診受診率_グラフ

* OECD, OECD Health Statistics 2022

マンモが痛いから検診に行かない⁉

 

日本の検診受診率が上がらない理由は、いくつもあります。「忙しくて行けない」「費用が負担」など、国や自治体の検診のシステムが、女性たちのライフスタイルに合っていないことも大きいと思っています。

 

さらに、「マンモグラフィが痛いから行かない」なども、常に行かない理由の上位にあがってきます。

マンモは痛いと悩む女性
確かに、透明なプラスチック版で挟まれるのは、痛いですよね。余談ですが、マンモグラフィ検診を受ける前に、胸まわりの筋膜リリースをしてこりをほぐしておくと、「マンモの痛みが減った」「痛くなくなった」という声がありますので、試してみてください。

 

そんななか、「痛い!」という女性の声を反映した、痛くないといわれる検査機器が登場しています。

 

なかでも、検査時の乳房の痛みがかなり軽減されるといわれているのが、3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)です。3Dマンモグラフィに比して、従来のマンモグラフィは2Dマンモグラフィと表現されます。従来の2Dマンモの大きな欠点でもある、乳腺の密度が濃いタイプの「高濃度乳房」だとしこりがあっても見えないという問題も、3Dマンモならクリアできるといわれています。

 

痛くない3Dマンモグラフィ=トモシンセシス

 

従来の2Dマンモでは、白く写る乳腺組織にしこり(病変)が重なって、雪原にいる白うさぎのように病変があっても隠れてしまい、見えないことがあります。

 

しかし、3Dマンモでは、レントゲン写真を異なる位置から撮影して、コンピュータで断層画像を合成します。透明な板で圧迫した乳房の厚さが40mmの場合、40枚の断層画像が生成されます(メーカーによって撮影枚数は多少異なります)。これまでの2Dマンモでは1枚の画像で判断していました。

 

そのため、3Dマンモで撮影すると、CTの輪切りのような断層画像なので、乳腺と重なった病変や乳腺の中にある病変(雪原の中の白うさぎ)を発見する可能性が高くなります。

 

もし病変のような影が写った場合、それが良性なのか悪性なのか、それとも乳腺の歪みや重なりなのかなどの診断の精度も上がります。これまでは、2Dマンモで病変が見つかった場合、精密検査として、針を刺しての細胞診や組織診検査が行われていました。けれども、3Dだと病変の確認が行いやすく、不必要な精密検査を避けられる可能性もあるのです。

 

また、従来の2Dでは、病変が見つけにくいとされていた高濃度乳房であっても、乳腺組織か、しこりかどうかの判断がしやすく、乳がんの発見率が高まるといわれています。
海外のデータでは、3Dマンモを用いることで「進行がんの発見率が41%増加した」「良性疾患を正確に診断する力が40%向上した」という報告もあります。

 

3Dマンモグラフィ=トモシンセシス
3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)は、乳房を強く圧迫する必要がなく、ふわっと押さえて画像を撮影するため、従来の2Dマンモグラフィと比べて、かなり痛みが軽減されるというメリットがあります。デメリットとしては、従来の2Dマンモより撮影時間が少し長くなり、被ばく線量が多少増えるとされています。

 

3Dマンモ_イメージイラスト
乳房は厚みがある立体です。従来の2Dマンモでは、1枚の画像しか撮影できないので、奥のほうの乳腺と重なってしまい、がんがあっても見えにくくなります。でも3Dマンモでは1mm間隔の断層画像なので、奥まったところにあるがんも検出可能となります。

 

国は現在、乳がん検診では、2Dマンモを最もエビデンスがあるとして推奨しています。そのため3Dマンモは、自治体の検診などでは導入されていません。3Dマンモを行いたい場合は、3Dマンモを持っている人間ドックなどの検診施設や医療機関で行うことになります。3Dマンモのほか、MRIや超音波なども新しい機器が続々登場し、検査法は進化しています。

 

私たち女性一人一人のニーズに合った、受けやすい検診法の導入を早く考えてほしいと思います。

 

 

イラスト/かくたりかこ

 

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