骨、歯、皮膚、髪の健康維持や、筋肉・神経の調整、疲れやすさの改善などに欠かせない「ミネラル」。
特にカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛の4つは意識してとりましょう
ビタミン、ミネラルは私たちの体の健康維持、正常な働きのために欠かせない栄養素。
サプリメントを取り入れるなら、まずとるべきなのはビタミンやミネラルであるという話をこの連載の第1回~第5回で紹介しました。
「ミネラルは、ビタミンと同じく不足しやすい栄養素。
特に意識してとりたいのがカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛の4つです。
それぞれ、ほかのミネラルとのバランスを考えてとるなど、とり方にコツがあります」と医師の林巧先生。
重視したい4つのミネラルのうち、この連載の第5回では「カルシウム」と「マグネシウム」について紹介しましたが、今回は「鉄」と「亜鉛」について紹介します。
3)鉄
不足すると、疲れ、イライラ、うつ、不眠、肌あれなどの症状が発生
「ご存じのように鉄は貧血を防ぐために重要なミネラル。
しかしながら女性は不足しがちで、特に生理のある女性は、経血とともに鉄が排出されてしまうため不足している人が多く、大半が鉄欠乏性貧血を指摘されています。
また、閉経後でも鉄が不足している人は多いので要注意。
特に最近多いのが、『隠れ貧血』です。
一般的な貧血は、血液中のヘモグロビン濃度で診断するので、健康診断の血液検査でヘモグロビンの値に問題がなければ貧血と診断されません。
ところが、ヘモグロビンの値は正常の範囲内でも、体内の貯蔵鉄が不足していることがあります。
これが隠れ貧血です。
隠れ貧血かどうかは、血液検査で、貯蔵鉄の量を示すフェリチンの値を調べることで知ることができます。
隠れ貧血になると、通常の貧血と同じように、疲れやすくなったり、イライラや、うつ症状、不眠、肌あれなどが起きやすくなります。
サプリメントや食事でしっかりと鉄をとると、エネルギーレベルが上がって疲れにくくなったり、集中力の向上が期待できるうえ、皮膚や髪、爪の健康にも役立ちます」
記事が続きます鉄には、非ヘム鉄とヘム鉄があります
「鉄をとるときにまず大切なのは種類。
鉄には、植物性食品に含まれる非ヘム鉄と、動物性食品に含まれるヘム鉄があります。
このうち、体への吸収率が高いのはヘム鉄のほうなので、ヘム鉄のサプリメントを選ぶとよいでしょう。
貧血など、鉄不足による不調を改善するには、病院で医薬品の鉄剤を処方してもらうのが最も効果的です。
ただ、医療用の鉄剤(非ヘム鉄)は胃腸に負担をかけやすいので、人によっては胃腸の調子が悪くなることもあります。
このような人はサプリメントを利用するのがおすすめです」
鉄はビタミンCと一緒にとるのがおすすめ
「鉄はビタミンCと一緒にとると吸収率が高まるので、ビタミンCも一緒にとるのがおすすめです。
サプリメントによっては鉄とビタミンCが一緒にとれるものもあるので、そういったものを利用するのもよいでしょう。
注意点としては、鉄は過剰にとると肝臓に沈着して不調の原因になるので、サプリメントでとるときはパッケージに書かれた量を守ってとることが大事です。
それから、鉄と亜鉛は、吸収時に同じ経路を利用するため、同時にとるとお互いの吸収が阻害される場合があります。
ですから時間をずらしてとるのがおすすめ。
特に貧血治療などで鉄を多く補給する場合には、亜鉛不足になりやすいので気をつけましょう。
市販のマルチミネラルのサプリメントには、鉄と亜鉛が一緒に配合されているものが多いですが、お互いの吸収を妨げない程度の分量、バランスになっていることが多いと思われますので、マルチミネラルを利用するのもよいと思います」
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4)亜鉛
免疫機能の強化、傷の治癒、肌や髪、爪の健康維持などに役立つ
「亜鉛は、免疫細胞を活性化させ、免疫機能を強化する働きがあることから、最近改めて注目されているミネラルです。
亜鉛は、体内の300種類以上の酵素に含まれ、細胞の成長と分化にとって中心的役割を果たします。
また、傷の治癒を促進する働きや、味覚や嗅覚を適正に保つ働きがあるほか、肌や髪、爪の健康にも関与しています。
亜鉛が不足すると、味覚障害が起きたり、肌あれや髪のパサつき、爪が割れやすくなるなどの症状が起きるので要注意」
亜鉛と銅はバランスよくとって
「サプリメントでとる場合の注意点は、亜鉛は銅とバランスよくとることです。
亜鉛を過剰にとると、銅の吸収が阻害され、貧血、骨異常、毛髪異常、白血球減少、好中球減少、心血管系や神経系の異常などといった銅欠乏の症状が出やすくなるからです。
そのため、市販のサプリメントでは亜鉛と銅が一緒に配合されたものもあるので、そういったものを選ぶのもよいと思います。
とる量はパッケージに書かれた量を目安にしましょう。
亜鉛は食品では、牡蠣、エビ、帆立貝、ウナギ、レバー、赤身肉、卵、納豆、ナッツ類、チーズなどに多く含まれます。
亜鉛は動物性タンパク質と一緒にとると体への吸収率がアップするので、魚介類や肉、卵などからとるのが特におすすめです」
【終わりに】
サプリメントでミネラルをとるときのコツ、おわかりいただけたでしょうか?
毎日の食事でミネラルが多い食品を意識して取り入れながら、サプリメントもうまく活用して健康を維持しましょう。
【教えていただいた方】

はやしたくみ女性クリニック院長、医師。1966年、北海道札幌市生まれ 。札幌医科大学卒業。札幌医科大学附属病院では更年期専門外来を担当。斗南病院、函館五稜郭病院、NTT東日本札幌病院を経て、2009年「はやしたくみ女性クリニック」を開業。
日本産婦人科学会専門医、日本女性医学学会(旧日本更年期医学会)女性ヘルスケア専門医、日本女性心身医学会認定医、日本抗加齢医学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、日本性差医学・医療学会認定医などを取得。産婦人科、女性内科、性差医療の視点から保険診療、保険外診療の両面で、その人その人に合ったケアを行い、女性のこころとからだの健康をサポートしている。
写真/Shutterstock〈イメージカット〉 取材・文/和田美穂