最近、噛みづらいなと思う食材が出てきたり、固いものを思い切り噛めなかったり、ということはありませんか?実は、50代から噛む力が急速に下がるという驚きの調査結果もあるんです!
噛む力が落ちると柔らかい食べ物を選ぶようになり、それが食欲の低下や低栄養につながって筋力が低下し、ゆくゆくは全身の状態が悪化する原因になりかねないんだとか。そこで、噛む力が落ちてしまう原因を知り、今からできることを学ぶべくセミナーに参加しました!
今回登壇されたのは、鶴見大学歯学部教授の花田信弘先生(左)と、宝田歯科医院院長の宝田恭子先生(右)。
「日本人は、80歳で20本の歯を残そうという“8020運動”は目標より前倒しで達成できています。その一方で、厚生労働省が掲げた、“60代で咀嚼に支障がある人の割合を20%まで減少させる”という目標は、達成できていません」と花田先生。つまり、しっかり噛める人の割合が目標より少ない、ということなんだそう。歯を残すだけではなく、きちんと噛めるかが大事で、これは健康寿命を左右するのだとか。
この噛む力を維持するにはどうしたらいいのでしょうか?そのカギとなるのが、「歯の土台」。歯の土台は、歯ぐきとその奥にある骨(歯槽骨)などの歯周組織で構成されています。
「歯の土台は肌などと同様に新陳代謝が繰り返されています」と花田先生。歯槽骨が定期的に壊されて新しく作り変えられることで、歯をしっかり支えることができるんですね。ところが、歯周病になり炎症が広がると、歯槽骨の新陳代謝のバランスが崩れて歯の土台が弱り、噛む力が低下してしまうことに……。
50代は歯の土台危機が急増!
さらにショッキングな事実も。「歯がぐらついたり、抜け落ちるリスクがある歯の土台の状態を指す“歯の土台危機”は、50代で急増します」と宝田先生。ライオンが40~70代の400名に調査をしたところ、40代の現状リスク大の人が15.0%なのに対し、50代になると35.0%に。一気に倍以上もの人が現状リスク大になってしまうとは…。
「私の歯の土台は大丈夫?」と心配になった方は、宝田先生考案のチェックリストでチェックしてみましょう。現在の症状から土台危機へのリスクを判定する「症状編」と、生活習慣から歯の土台の今後の悪化リスクを判定する「生活習慣編」の2つのテストで、今と将来のリスクがわかります!
【1】症状編~症状から「歯の土台危機」への現状リスク度をチェック~
☑歯ぐきが下がってきた(歯が長く伸びてきた)
☑歯並びが悪くなってきた
☑歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなってきた
☑固いものを食べる時に、思わず歯をかばってしまうことがある
〈判定〉
- 現状リスク度「小」(チェックが0個)
気になる症状がまったくないので、今は歯の土台の「現状リスク度」は大きくありません。
- 現状リスク度「中」(チェックが1~2個)
歯の土台が弱り始めている可能性があるので、気を付けて。
- 現状リスク度「大」(チェックが3~4個)
歯の土台が弱り、歯を支える力が低下していて、歯が抜ける可能性が高い状態。
【2】生活習慣編~生活習慣から「歯の土台」の今後の悪化リスク度をチェック
☑甘いものなど間食をよくする
☑ダラダラ飲んだり食べ続けることが多い
☑晩酌・寝酒をよくする
☑食後にウトウトしてしまう
☑野菜は嫌い、あまり食べない
☑あまり噛まずに食べる、早食いだ
☑長時間スマホを見ている
☑睡眠不足だ
〈判定〉
- 悪化リスク度小(チェックが0個)
今のところは将来悪化する危険はあまりないので、今の生活習慣を続けて。
- 悪化リスク度中(チェックが1~3個)
今が大丈夫だとしても、将来、歯の土台が弱る可能性があるので注意を。
- 悪化リスク度大(チェックが4~8個)
将来歯の土台が弱る可能性が高いので、生活習慣を見直しましょう。
しっかりケアをすれば歯の土台の状態も変わります
チェックリストの結果がよくなかったとしても、今から歯の土台ケアを意識することで状態を変えられます。早速、どんなケアをしたらいいのか見ていきましょう。
◆穀類すりつぶし食事法
姿勢を正し、固めに炊いた白米や玄米一口分を口に入れたら、できるだけゆっくり、30回程度すりつぶすようにして噛んで食べます。この時、背筋をピンと伸ばし、一度箸を置くくらい時間をかけましょう。
◆宝田式歯磨き法
歯と歯ぐきの境目に歯ブラシの毛先を斜めに当て、毛先を意識して小刻みに動かしながら1~2本ずつ磨いていきます。ポイントは少しだけ口を閉じて磨くこと。そうすることで、歯ブラシが頬や舌に押されず磨きやすくなります。磨き終わったら舌でチェックしてざらついていたら磨き直しを。ツルツルだったらOKです!
◆宝田式歯ぐきマッサージ法
歯ぐきと唇の折り返し位置と、歯と歯の間の歯肉を、中心に向かって指でなぞるようにしてマッサージ。これを重点的にやると、総ヘモグロビン量と組織への酸素量がグンとアップし、健康的な歯ぐきに。
「きちんとケアを頑張れば、70歳でも歯と歯の土台をいい状態に保つことができます」と宝田先生。こちらのケアに加えて、自分では取ることができない歯石除去をしてもらうなど、歯医者さんでのプロケアを定期的に受けることが大切なのだそう。
歯そのものだけでなく、歯の土台も意識することが、これからのオーラルケアの新常識になりそうですね。ついやってしまいがちなダラダラ飲食などに気をつけつつ、しっかりケアをして、口の中から健康を意識していきましょう!
◆資料提供/歯の土台ケア広報事務局
取材・文/倉澤真由美