疲労を放置すると、老化が加速する!?
外見の老化、臓器の老化など「生理的な老化」は誰にでも起こる自然現象です。
一方、多くの日本人、とりわけ40代50代女性の多くが抱える「疲労」に関する悩み。これが「老化」と密接な関係にあることがわかってきました。疲労と老化は別々の現象に見えますが、実は「慢性炎症」が元になっているという共通点があります。
そもそも「疲労」とは…
臓器・組織・細胞の中で酸化(錆つき)が起こり、それが高じて細胞が慢性炎症している状態のこと。
対して、近年では老化の大きな原因の一つも、慢性炎症であることが解明されてきました。
脳と体のオーバーワークによる炎症が疲労を引き起こし、その疲労を放置しておくことが老化につながるというのです!
ここに着目したのが一般社団法人ウェルネス総合研究所で、この度【抗疲労∞抗老化 啓発プロジェクト】を発足。今回はその発表会を兼ねたセミナーでした。
「抗疲労∞抗老化」啓発プロジェクトとは?
「炎症を抑えて、疲れにくい体と老けない体を叶えること」をテーマに、さまざまな情報を発信することを目的にしたプロジェクトです。公式サイトはこちら
「疲労を見える化する時代」渡辺先生が語る新しい健康のカタチ
まずは、疲労研究の第一人者である渡辺恭良先生(日本疲労学会 理事⻑、神⼾⼤学⼤学院 科学技術イノベーション研究科 特命教授)が登壇。
「疲労は万病のもと」という視点から、疲労、老化、病気のメカニズムとその解決策に関する最新研究の講義です。
渡辺先生らが取り組んできたのは、元気になったり疲れたりという波のある健康状態が、だんだん病気に向かって悪くなっていく…。この辺をはっきり捉えようということ。
体内のさまざま炎症が元になり、疲労と老化につながる。しかも、疲労、老化、病気の3つは1つのライン状にある。
「疲労を先に何とかすることができれば、老化も防げる、病気も防げる」というわけです。
印象的だったのは「疲労って何?」という話。
研究上では「疲れ・倦怠」は、「作業能率の低下状態」と定義されているそうで。
「疲れてるなぁ」という主観的なものではなく、客観的な指標によって疲労と呼ぶのです。
特に注目されたのは「疲労の見える化」。
疲労研究の成果として、体内のバイオマーカー(ものさし)を使い、疲労状態を測れるようになったということ。これにより、今後、個々の健康状態に合わせた疲労対策が可能になるといいます。
抗疲労∞抗老化 啓発プロジェクトの公式サイトにも、疲労度を点数化できるページがありました。
サイト上で当てはまるものをチェックしていくと、あなたの「疲労点数」の合計と、診断結果が表示されます。ぜひやってみましょう。
「疲労は我慢せず、きちんとケアすることが大切です」と、力強く語る渡辺先生の言葉に、参加者の多くがうなずいていました。
「健康寿命を延ばす食のチカラ」満尾先生の栄養学アプローチ
次のお話は、アンチエイジング医療に取り組んでいる満尾正先生(満尾クリニック 院長)。
「抗老化を実現する食と栄養」をテーマに講演されました。
ポイントは老化スピードをいかにゆっくりにするか、炎症をどう抑えるか? です。
抗疲労、つまり抗老化の3つの柱は「心・食・動」です。
心は心の持ち方、食は食事の内容・栄養素のとり方、動は運動。
そして、4つめの柱として睡眠も重要。
特に、何を食べるか、どういう日常生活を送るのかによって老化のスピードに大きな差がつくといいます。
【満尾先生による老けない食べ方のコツ】
■空腹時にだけ食べる
時間が来たからと1日に3食食べる必要はない。空腹になると細胞内の不要物を分解するオートファジーというシステムが働き始めるのがメリット。
■一物全体食(食材を丸ごといただく)
魚なら頭から尾まで、野菜なら皮まで食べることで、摂取ビタミン・ミネラルの偏りが減る。
■積極的に食べたい食材
・小型の魚:血流改善に効果のあるオメガ3脂肪酸
・野菜やキノコなどの食物繊維:血糖値上昇予防、腸内環境改善
・粘り気のある芋類:若返りホルモンDHEAを増やす
・海藻類:ミネラル豊富
・納豆、味噌、糠漬け、酢などの発酵食品:腸内環境を整える働き
■食べ過ぎに気を付けたい食材
・白米・白いパン・うどんなど
・哺乳動物の肉:消化しにくく腸内環境を乱し、炎症リスクもある
・マグロカツオなどの大型魚:水銀を多く含む
■甘いものは緑茶・コーヒーと一緒に
緑茶の苦味成分カテキン(ポリフェノノール)が糖質の吸収を抑え、血糖値上昇を緩やかにする。
コーヒーには抗酸化作用・抗炎症作用があるクロロゲン酸というポリフェノールが多い。
そしてここ、重要!
■健康効果の高い野菜は「GGOBE」と覚えましょう。
Garlic(ニンニク)・Gnger(ショウガ)・Onion(タマネギ)・Broccoli(ブロッコリー)・Egg(卵)の頭文字です。
これらに共通して含まれる栄養成分は、硫黄。硫黄成分は解毒につながります。
「医療と日常生活を融合させることで、誰もが無理なく健康を手に入れることができます」と満尾先生。明日からでも実践できるヒントが満載でした。
「ニンニク由来成分で疲労回復!」小菅先生のSAC研究
最後に。小菅康弘先生(日本⼤学薬学部薬学科 教授)が、期待の成分「S-アリルシステイン(SAC)」の研究成果を発表。
疲労回復と抗老化に効果があるとされるSACは、ニンニクに含まれる機能性成分の1つで、正式名称は「S-allyl-L-cysteine」。
この成分は生ニンニクや乾燥ニンニクにはほとんど含まれないとても希少な成分。熟成する過程で生成される天然のアミノ酸の一種です。
ポイントは、なぜニンニクではなくてSACなのかというところ。
ニンニクにはよく知られたアリシンという硫黄化合物が含まれています。アリシンにもさまざまな効能がありますが、刺激臭・不快臭が強いうえに胃腸を荒らしやすい物質でもあります。
その点、SACにはそういった報告はなく、安全性が確認されています。
そういえば、最近スーパーでもよく見かけるようになった「黒ニンニク」は、まさに熟成されてSACが増えている食品。ますます注目されそうです。
報告されているSACの作用として、酸化や炎症を抑えることで脳神経を保護し、脳機能の維持・改善をもたらす、など。
他に、睡眠改善作用、テストステロン産生促進作用、血流改善作用、抗がん作用、肝保護作用など、健康を増進させるさまざまな働きについてもメカニズムが解明されてきている期待の成分です。
日常生活に取り入れやすい食品やサプリメントとしての可能性、継続的に摂取することで以下の効果が期待できると説明がありました。
【抗疲労・抗老化★今回の学び】
●疲労と老化は一線上にあると心得て!
●疲労を感じたら、体調を「見える化」してみましょう。
●食事を見直す第一歩として『GGOBE』野菜を取り入れたい。
●SAC(S-アリルシステイン)を含む食品やサプリメントを上手に活用。
忙しい日々を送る女性にとって、どれもすぐにでも取り入れられるヒントばかり。
毎日の習慣を見直すきっかけになりそうです。
取材・文/蓮見則子