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決められる力がもたらすもの/50代。乳がんサバイバーになりました。

hijiri

hijiri

都内在住の50代会社員。2019年5月に乳がんと診断される。仕事を続けながら10月までに3回にわたる手術を経て、2020年1月に放射線治療が終了。現在は、10年間にわたるホルモン療法薬の服薬を継続、年に一度の検診で経過観察中。放射線治療中も継続したランニングの趣味が高じて、ランニングアドバイザー、スポーツ医学検定2級、ナヴィゲーションスキル シルバーレベル等の資格を持つ。「琉球茶道ぶくぶく茶」東京分室主催。元おでかけ女史組メンバー。

 

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わたしとわたしたち

 

最近どこかで読んだことなのですが、「わたしたち」が主語の人が増えているのだそうです。
「わたし」が主語であれば自分だけのことなので、なにか決める必要があるときでも比較的簡単に決められるけれども、「わたしたち」だと、他の人の意思も大事になる。だからすぐに決められないのは、けして優柔不断だからではないのだと。

 

もしかしたら細部は違うかもしれませんが、大筋はそんなような内容だったと思います。

 

これを読んだときに、私はとっさに「私は「わたし」だなあ」と思いました。そして、私があまりサバイバーっぽく見えないと言われるのも、一年の手術生活を意外とスムーズに乗り切れた理由はこれかもと感じたのです。

 

そんな気づきから、今回は闘病生活で大事な「決める」ということについて、そしてコロナ禍の中で気づいたことについてもお話してみたいと思います。

 

「わたしはどうしたいの?」

 

私は過去、家族の赴任に伴い、オランダに4年、香港に3年住んでいました。同じ海外生活でも、文化の違いなのか宗教なのか、本当にあれこれ違いとまどったことを今でもよく覚えています。

 

コミュニケーション一つとっても、すぐに距離を縮めてくる割には個人主義のオランダ人と、仲良くなるまでなかなか本音がわからず、けれども一旦仲良くなれば恐縮するくらい世話を焼いてくれる香港人とは全く違うものでした。

 

勘違いしないでいただきたいのですが、どちらがいいとか上とかということではありません。もちろん人によっても違いますし、あえて言えばどちらが自分にあうか、程度の話だと思います。
ただ、歴史的経緯なのか、文化や考え方なのか、明確にアジア人的な考え方とヨーロッパ的なアプローチは違うのだなという印象でした。

 

そんな中で、唯一同じだなと思ったことがあります。

 

「あなたはどうしたいの?」

hijiriさん イラストどうしたい

お店で買い物するとき、友人とご飯を食べるとき、もっといえば日常の細かなあれこれまで、常にこの言葉はついて回りました。冒頭で書いた「わたし」です。

 

「わたし」はこうしたい
「わたし」はこう思う
「わたし」はこれが欲しい

 

英語の主語が必ず「I(わたし)」であるように、あくまで主体は自分。一旦それに「Yes」といえば、その選んだ責任も自分ですから、慣れるまではなかなかヘビーだった記憶があります。

 

日本はどちらかというと「わたし」より「わたしたち」が美しいという文化があると思います。しっかりした”正しい”が共通認識としてあって、それをみんなで守り育てるようなイメージ。
東日本大震災などの大きな災害にあっても、日本では強奪や犯罪が少なく世界から驚かれましたが、これも一つの”正しい”をみんなで守る文化があるからかなと感じます。素晴らしいことです。

 

逆にその分、なにかあると「なにが正解か」「どれが正しい答えか」をつい探してしまうことが多くないでしょうか。

 

でも病を得ると、すべて自分で決めなければいけません。病気というのは非常にパーソナルなものです。今までお話ししてきた通り、主治医や家族がアドバイスや意見をくれても、最終的に決めるのは自分でしかないのです。
それが正解なのかどうかもわからないことが多いのですから。

 

「全員にとっての正しい」に慣れていると、正しい答えが得られないととても不安になります。結果がわからない、正しいのかもわからない。それを自分の意思だけで決めることはとても怖いことだからです。

 

自分が決めたこと、口に出したことに責任を持つ。
どんな結果になっても後悔しない。

 

そんな「決める」という訓練を少し早めにできていたことが、もしかしたらプラスに働いたのかもしれないな、と思ったりしています。

 

コロナ禍ではみんなが決めなければいけなくなった

 

私のように闘病している人だけでなく、このコロナ禍の中で多くの人がつらい思いをしがちだったのは、まさにこの「決める」ということがあったのではないかなと思うのです。

 

出かける?出かけない?
電車に乗る?乗らない?
外食する?しない?
旅行に行く?行かない?
家族に会いに行く?行かない?

 

今までであれば、周りの意見や今までの経験、習慣などで、たとえ何かを選ぶにしても「これが正しい答え」ということがみんなにあったと思います。だから「わたしたち」でも大丈夫だったのかもしれません。
けれども、このウィルスとの戦いの状況の中ではなにが正解か誰も知りません。結局、あまたある情報を自分自身で吟味して、「わたし」はどうするのかを決めなければいけなくなったのではないかと思うのです。

hijiriさん イラストわたし

これからますます「正解がないのに決めなければならない」ということが重くのしかかってくるでしょう。例えばワクチンだって、怖いから打つのか、安全性が担保されるまで様子を見るのかどちらが正解かはやってみなければわかりません。そういう先の不透明さの中で正しさだけを求めてしまうと、とても苦しくなってしまうような気がするのです。

 

「わたしたち」の文化はとても美しいです。けれども、これからはもう少しだけ「わたし」を主体にする必要があるのかもしれません。
正しさよりも自分がどうしたいのかをより考えていく必要があるのかもしれません。
けれどもきっとその力は、なにかあった際にだって自分自身が納得できる力になると思うのです。

 

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