放っておくと知らず知らずのうちに健康をむしばむ「高血圧」。でも、日々の生活習慣を見直すことで、血圧はある程度コントロールが可能です。恐れすぎず、でも油断せず。まずは血圧の正しい知識を身につけて!
お話を伺ったのは
市原淳弘さん
Atsuhiro Ichihara
東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科教授。日本内分泌学会内分泌代謝科専門医。日本高血圧学会理事。高血圧治療の第一人者として、日々患者に向き合う。著書に『食べ方、座り方、眠り方で下がる! 血圧リセット術』(世界文化社)など
「上140以上・下90以上」どちらか超えたら高血圧!
健康診断で「血圧が高めですね」と言われたり、最近、立ちくらみや耳鳴り、動悸(どうき)を感じたことはありますか? 心当たりのある人は要注意です。
「『血圧高め』では病院に行っても病名はつきません。ですがこれは5年後、10年後に起きる病気のタイマーが点灯した合図なのです」と市原淳弘先生。
今、日本の高血圧患者の人口は約4300万人。高齢者に限らず、30代では5人に1人、40代では3人に1人という高い割合です。加えて“患者未満”の「高値血圧者」は推定1500万人もいるそう。
ちなみに、日本高血圧学会の“高血圧診断基準”は「上の血圧が140㎜Hg以上、下の血圧が90㎜Hg以上」。このどちらかひとつでも当てはまれば高血圧と診断されます(家庭血圧では135㎜Hg/85㎜Hg以上で高血圧)。
また、高血圧には大きく分けて「本態性高血圧」と「二次性高血圧」のふたつのタイプがあります。前者は特定の病気など明らかな原因がないもので、生活習慣や遺伝、更年期など、さまざまな原因が考えられます。後者はなんらかの病気を起因とするもの。「血圧高め」と言われたら、まずはその原因をはっきりさせることも大事です。
危険ゾーン
「上の血圧」が180㎜Hgを超えたら血管リスク大! 脳卒中や大動脈疾患など大きな病気の可能性も高まっているので治療が必要です。すぐにでも専門医へ!
要注意ゾーン
140/90㎜Hg以上の人はズバリ、治療が必要な「高血圧」。日本には約4300万人の高血圧患者がいて、そのうちなんと1400万人もの人が自分を高血圧だと気づいていないのだとか。もしや、あなたもその一人?
心配ゾーン
収縮期血圧が120㎜Hg以上は「正常値血圧」、130〜139㎜Hgは「高値血圧」といい、すぐに治療の必要はないものの、高血圧予備軍として生活指導の対象に。脳心血管病や腎臓病のリスクが大きくなる数値です。
安全ゾーン
120/80㎜Hg未満が正常血圧(※診察室血圧の基準値。家庭血圧は115/75㎜Hg未満)。血管に弾力性があり、血液もサラサラ流れています。体調も万全で健康な状態! ちなみに、上と下の血圧差(脈差)の理想は40~60。差が開きすぎていると血管が硬くなっている可能性があります。
低血圧ゾーン
「上の血圧」が80㎜Hg以下だと、血液の量が少なく、全身に酸素や栄養が届きにくい状態。血圧が低すぎても健康とはいえません。適正な血圧を保つ努力を。
[参考文献]
『食べ方、座り方、眠り方で下がる! 血圧リセット術』(市原淳弘著/世界文化社)、『「治せる高血圧」を見逃すな!』(市原淳弘著/学研プラス)、『高血圧 最高の治し方大全』(市原淳弘共著/文響社)
イラスト/寺田久美 取材・原文/安齋喜美子