放っておくと知らず知らずのうちに健康をむしばむ「高血圧」。高血圧治療の第一人者・市原淳弘先生に、アワエイジ世代の女性が高血圧になりやすいワケをお伺いしました。
お話を伺ったのは
市原淳弘さん
Atsuhiro Ichihara
東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科教授。日本内分泌学会内分泌代謝科専門医。日本高血圧学会理事。高血圧治療の第一人者として、日々患者に向き合う。著書に『食べ方、座り方、眠り方で下がる! 血圧リセット術』(世界文化社)など
アワエイジ世代の女性が高血圧になりやすいワケ
そもそも血圧とは何でしょう?
「心臓から送り出される血液が血管を押す圧力が血圧です。その数値は、心臓から押し出される血液量と血管の弾力によって決まります。血液は全身をくまなく巡り、老廃物を回収しながら酸素や栄養を細胞に届けますが、血圧は、その血液を運ぶ列車のようなもの。健康のためには、この列車をつねにスムーズに走らせることが大切なのです」
よく聞く「上の血圧」は、血液を送るため心臓が収縮し、血管に最も強い圧力がかかったときの値(収縮期血圧)で、「下の血圧」は、収縮した心臓が元に戻ったときに血管にかかる圧力(拡張期血圧)です。
かつて、高血圧は中高年男性や高齢者に多い生活習慣病と考えられていましたが、更年期世代の女性もリスクが高いことがわかってきました。高血圧の原因として挙げられるのは、塩分のとりすぎや運動不足、ストレスなどですが、現代は女性が社会的にも活躍し、育児や介護も抱えて、より大きなストレスにさらされています。更年期世代の女性には、これに加えてホルモンの減少が大きくかかわっているのです。
「女性ホルモンのひとつ、エストロゲンは血管をしなやかに保つ働きを持っています。閉経期を迎えると、女性ホルモンが減少して血管の柔軟性が失われることから血圧が上がってしまうのです。また、閉経後の女性は男性より降圧剤が効きにくく、血圧コントロールもしにくいことがわかっています。ちなみに、女性ホルモンは閉経前後、上がったり下がったりしながら徐々に減少していきますが、血圧もそれに反比例するように、乱高下を繰り返しながら徐々に上昇していきます。
更年期世代の女性はこのことを自覚して、今までより自分の血圧に注意を向けてほしいですね。おすすめは、毎朝同じ時間に家で血圧を測ること。これをぜひ40代からの習慣に」
危険ゾーン
「上の血圧」が180㎜Hgを超えたら血管リスク大! 脳卒中や大動脈疾患など大きな病気の可能性も高まっているので治療が必要です。すぐにでも専門医へ!
要注意ゾーン
140/90㎜Hg以上の人はズバリ、治療が必要な「高血圧」。日本には約4300万人の高血圧患者がいて、そのうちなんと1400万人もの人が自分を高血圧だと気づいていないのだとか。もしや、あなたもその一人?
心配ゾーン
収縮期血圧が120㎜Hg以上は「正常値血圧」、130〜139㎜Hgは「高値血圧」といい、すぐに治療の必要はないものの、高血圧予備軍として生活指導の対象に。脳心血管病や腎臓病のリスクが大きくなる数値です。
[参考文献]
『食べ方、座り方、眠り方で下がる! 血圧リセット術』(市原淳弘著/世界文化社)、『「治せる高血圧」を見逃すな!』(市原淳弘著/学研プラス)、『高血圧 最高の治し方大全』(市原淳弘共著/文響社)
イラスト/寺田久美 取材・原文/安齋喜美子