ビタミンDは食品に強化される時代に
一般的なビタミンと違い、食べ物にはあまり含まれていないビタミンD。
なぜなら、ビタミンDはおもに紫外線を浴びることにより、皮膚でつくられるから。
現代人にビタミンDが足りていないことに警鐘を鳴らしたのが、米ボストン大学のマイケル・F・ホリック博士。約20年前のことです。
ホリック博士の研究に魅了された、ビタミンDに詳しい斎藤糧三先生が教えてくれます。
「ホリック博士は、ビタミンD研究の世界的権威で『ドクター・ビタミンD』と呼ばれているほど。 2005年に『The UV Advantage』を出版し、ビタミンD欠乏論を唱えて以来、がんをはじめ、さまざまな病気とビタミンDとの関係を解き明かしてきました。
アメリカでは、彼のおかげでビタミンDを積極的に補う動きが広まったんです。
日本ではビタミンDがまだあまり知られていない頃からですね。
単体のビタミンサプリメントの中で、アメリカでいちばん売れているのはビタミンDだし、ビタミンD強化食品も多い。
粉ミルクにもビタミンDを添加することが義務づけられています。
日本でも最近ようやく、ビタミンDサプリが一般的になり、添加食品も出てきましたね。もっと増えていくと思いますよ」
マイケル・F・ホリック 博士 (ドクター・ビタミンD)
Professor Michael F. Holick
Boston University School of Medicine/Professor
1946年生まれ。米国ボストン大学医学部教授。専門分野は内科、小児科、骨代謝、ビタミンD研究。⽶国内科学会専⾨医、⽶国栄養学会フェロー、⽶国医師会会員。ビタミンDや栄養学の分野で数々の賞や名誉を授与されている。内分泌学会の「ビタミンD に関する診療ガイドライン」の議⻑を務め、400 以上の査読付き出版物、200 以上の総説、多数の書籍執筆に携わる。
更年期のせいと思っているその不調、ビタミンD欠乏かも?
ビタミンDは、免疫を調整する働きをはじめ、あまりにも全身の機能にかかわることから「ビタミンというよりはホルモンに分類したほうがいい」といわれています。
つまり、ビタミンDが欠乏すると病気のリスクが増え、とても危険な状態になるということ。 以下は、ホリック博士によるビタミンD欠乏による病気のまとめから。
「特に、女性はビタミンDが不足しないように気をつけてほしいもの。
40代以降の女性は更年期特有のいろいろな症状が出ます。 ただ、その中には女性ホルモンのせいでなく、ビタミンD不足による症状や、欠乏症状そのものが起きていることもあります」
ビタミンD欠乏の可能性もある更年期症状の例としては…
■うつっぽい、やる気が起きない(セロトニンの合成力が落ちたため)
■体調をくずしやすい、風邪を引きやすい(免疫の調整不良)
■腰痛や関節痛(骨軟化症の症状かも)
■筋力低下(筋肉の合成力も落ちます)
■イライラ・怒りっぽい(ビタミンD欠乏によりマグネシウムの吸収が低下)
「特に更年期、閉経期には、急激に骨密度が減って骨粗しょう症に近づいたり、サルコペニア(筋肉量の減少・筋力の低下)のリスクも上がります。
女性ホルモンを気にするだけでなく、ビタミンDを補うことも覚えておいてくださいね」
ビタミンD不足・欠乏などの判定基準は?
体内のビタミンD不足・欠乏の目安となるのは、血液中の濃度です。
採血によって25(OH)D (25-ヒドロキシビタミンDと読みます)の量を測定します。
医療機関では1,25-(OH)2Dという活性型ビタミンDを調べることもありますが、不足・欠乏の目安になるのは25(OH)Dのほうなので間違えないようにしましょう。
【ビタミンD検査 25(OH)Dと1,25-(OH)2D】
紫外線によって合成されたビタミンDと食べ物から摂取したビタミンDは、肝臓に運ばれて25(OH)Dという物質になります。
血中の25(OH)D量はビタミンD総量とも呼ばれ、欠乏症など栄養状態の指標に。
次に25(OH)Dは腎臓で1,25-(OH)2Dという活性型ビタミンDに変わります。
血液検査で1,25-(OH)2Dを調べるのは、おもに活性型ビタミンD3剤の投与による治療効果を判定する際に用いられます。
判定に用いられるのは、25(OH)Dの数値です。実は国内ではビタミンDの欠乏・不足・充足などの判定は、2016年に基準が設けられたばかり。
骨軟化症・くる病・骨粗しょう症などの診断のため、または治療中であれば健康保険が適用に。
それでも、3カ月に1回を限度とするなどの条件付きです。
不足か否かを知りたい、病気のリスクを知りたいなどの目的で検査をする場合は自費になります。
内科でもやっているところがありますが、アンチエイジングクリニックなどで自費の検査メニューとして実施しているところが確実。
自宅でできるビタミンD検査キットは、郵送するだけで結果がわかるのでとても便利です。
「上記のような基準は、あくまで骨代謝を中心としたもの。健康リスクを調べるものではないと思いましょう。 ホリック博士は『少なくともビタミンDは30ng/mL以上、できれば40~60ng/mLを維持することが望ましい』という基準を示してくれています」
検査キットでビタミンD検査をしてみたら…!
自宅にいながらビタミンDの血中濃度が測れる検査キットがあると知って、さっそくやってみました。
98%がビタミンD不足と聞いてちょっと怖くなった5名が集合!
キットで検査にトライしてみました。
最後の1名はこの連載の担当ライター、ハスミです。
5名のうち3名がビタミンD不足という結果に騒然!。ギリギリセーフのオカダさんは、紫外線対策を日頃からまったくやっていないことが怪我の功名に。
やはり日光は大事です。
しっかり充足の判定になったハスミは、日光不足を懸念し、10年ほど前からビタミンDサプリをずっと飲んでいました。
一日の摂取量は厚生労働省の上限量、100µg(4000IU)。
ビタミンD検査は以前にも何度かしたことがあり、夏などは、驚異の80 ng/mL以上の高値を出したことがあるほど、充足しています。
普段それほど外に出ないので、これはサプリ摂取のなせる技といえそうです。
5名が使用したのはこのキット。指先からプチッと採血し、ポストに投函するだけ。検査結果などはサイトで見ることができます。とても手軽で驚き! 検査キット「ビタミンD検査」(総量 ; 25-ヒドロキシD2・D3)¥13,585/アンブロシア
斎藤先生のクリニックでは、栄養解析の検査メニューにビタミンD検査も含まれています。
患者さんのビタミンDレベルはどうでしょう?
「女性の患者さんでサプリを飲んでいない人は、ほぼもれなくビタミンD不足・欠乏と判定されますね。
欠乏レベルの方に1日100µg(4000IU)のサプリを飲んでもらうと、たいてい半年ほどで、充足レベルの30ng/mLどころか、50ng/mLを超えてきます。
日焼け止めを塗らないなんて絶対に嫌だ! という方には、やはりサプリをおすすめします」
【教えていただいた方】
1973年生まれ。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年「日本機能性医学研究所」を設立(2009年に法人化)。2017年、スーパーフードとしての牧草牛(グラスフェッドビーフ)の普及を目指し、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm」をオープン。2022年、機能性医学と再生医療を融合させた治療拠点として「斎藤クリニック」を開設。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学館)、『病気を遠ざける! 1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』(講談社+α新書)ほか多数。斎藤クリニック、Saito Farm
イラスト/内藤しなこ 取材・文・画像制作/蓮見則子