6月目前、いよいよ緊急事態宣言の解除も全国に出され、コロナ禍もようやく一段落という感じに。まだまだ第二波、第三波に油断できないとはいえ、経済活動や社会生活は段階的に再開されつつありますね。
とはいえ、“コロナ以前”には、しばらく戻れなさそうです。近所の商店街を歩いていても、以前なら何も気にならなかった混雑でさえ「きゃー、密!」ってヒヤっとしてしまう。マスクなしで外出すると、すれ違う人に冷ややかに見られている気がする…何の屈託も、心配もなく暮らしていた“コロナ以前”と今とでは、大違いです。
コロナの危険が薄まるまで、ニューノーマル(新しい生活様式)に即して生活をし、いつしかそれに慣れる日も来るのだろう、とは思いますが、その時に読み返したら、どんな気持ちになるのかと思ったのがこの本です。
津村記久子さんの『ディス・イズ・ザ・デイ』です。
ふみっちーがこの本に出合ったのは、OurAge連載『読書で「ワクワク!アンチエイジング」』で、山本圭子さんがこの本を紹介していたから。主人公は、22のサッカーJ2チーム(すべて架空)のサポーターたち。贔屓のサッカーチームを応援する人々の、それぞれの悩みや心情を描いています。笑いあり涙あり、人生のペーソスありの、とにかく楽しい1冊です。サッカーの知識がまったくない(といっていい)ふみっちーですら楽しめました。
22チームのサポーターたちの、それぞれのストーリーなのですが、唯一の共通点があります。それは、シーズン最終節(その年の最後の試合)の試合を観戦中の話であること。架空ではありますが全国のさまざまなスタジアムが登場します。揃いのユニフォームを着てシャトルバスから次々降りてくるサポーターたち。スタグル(スタジアムグルメ)を求めて店に並ぶ人々、試合前からアンセム(応援歌)を歌って盛り上がる演奏隊、チームのマスコットキャラクターと撮影する人々などが描かれ、スタジアムに多くの人たちが集って楽しんでいる情景がイキイキと描かれます。まるでその場にいるようなワクワク感!
でも、しばらく私たちにそれとまったく同じ感動を味わうことはできなさそうです。先日、高校野球の中止が決定し、球児たちの悔し涙に思わずもらい泣きしてしまったふみっちーですが、各種スポーツだけでなく、音楽や演劇なども、多くの観客が集うライブはしばらく難しそう。
今はこの本のスタジアムの興奮を読みながら、バーチャル観戦気分を味わうしかありません。スタジアムに集うことがごく当たり前だったのは、ほんの数カ月前。なのに、この本に描かれているスタジアムの喧噪も、今では懐かしく遠く感じられてしまいます。
でも“アフター・コロナ”は、もしかしたら、今まで想像もしなかった“新しい興奮”が待っているのかもしれない。その日を夢見て、油断することなく、毎日を頑張っていきましょう。そしてその時、この本を読み返したらどんな気持ちになるのか、ちょっと楽しみです。