なぜか体の調子が乱れる気がするので、ふだん甘いものはほとんど食べません。
おまけに今はダイエット中(一ヶ月で4キロの減量を達成した方法を先日書きましたので、そちらもお読みいただけますとうれしいです)。
「ぐーぴたっ」以外の甘いものは、ますます食べなくなりました。
けれど「これなら食べる」というものがあります。
それはよねむらのクッキーと銀座千疋屋のフルーツを使ったケーキ。
このふたつは私にとって体調が乱れる危険(?)を冒してでも、そしてたとえダイエット中でも食べる価値があるくらい、おいしいのです。
しばらくの間、それは変わらなかったのですが、そこへ最近みっつ目が加わりました。
それが散歩の途中に出会ったこのお菓子。
パッと見、よくあるクッキーの詰め合わせですが、食べてみたら他とは違った。
単においしいというのとは違う、なにか不思議な感じ……。
何が不思議かというと、食べているときに「あ、私の心が今よろこんでるぞ!」とわかったのです。
父が突然亡くなったとき、3日くらい食事がのどを通らなかったことがありました。
おなかは空かないし、それでも「とりあえず何か食べなきゃ」と思って食べ物を口にしても、どうしてなのか飲み込むことができないのです。
そんな折り、葬儀会社との打ち合せを終えての帰路、通りかかった移動販売のお弁当屋さんで売られていた「鶏手羽の煮物弁当」。
なんとなく買い、家に帰って「一口だけでものどを通ればいい」と口に入れてみたら……おいしくておいしくて。
〝おいしさが体中にしみる〟ってこういうことなんだ、と50年近く生きてきて初めて知ったのです。
そして自分でもびっくりしたのですが、なぜか涙が溢れてきて、泣きながら一口だけどころか全部食べたのです。
この散歩の途中に出会ったクッキーを食べたときに起こった不思議な感じ。
それは、あの鶏手羽のお弁当を食べたときの感覚に似ていると思いました。
だから大事に一枚一枚味わって食べることにしています。
コロナ禍で旅行にいけなくなり、在宅ワークで一日中家にいることが増えました。
そんな私のここ数ヶ月の楽しみは緑が豊かな東京郊外の住宅街を散歩すること。
東京・多摩地区で育ち、雑木林を遊び場にして子ども時代を過ごしたせいか、大人になっても木々のある場所へ行くと、ほっとするのです。
残念なことに私の実家の周りはどんどん宅地開発され雑木林はなくなってしまいましたが、隣町には住宅が建ち並ぶ中、今も素晴しい自然がかろうじて残されています。
そこで息抜きのため、週末には実家の隣町を歩くようになりました。
(↑散歩の風景① 湧き水のある雑木林。いくつかの湧き水が集まり、このような小川となる。シーンとした林の中、聞こえるのは虫の声と水の音だけ。この小川はここから歩いて数分の川と合流。その川原で初めてカワセミを目撃したときはとてもうれしかった)
(↑散歩の風景② 昔話に出てきそうな鬱蒼とした竹林。ここもいつもシーンとしているが、時折風が吹くと竹がザアッと迫力のある音を立てて葉を揺らす)
木や小川だけではなく子どもの頃に通った塾、家族で行ったショッピングセンターなど懐かしい場所も眺めながら歩く毎回小一時間程度の散歩ですが、その中で新しい発見もありました。
素敵な雰囲気のカフェがあったのです。
(元は自由学園の学生寮。そこを地域の住民や社会との交流の拠点として改修し、2011年オープン。カフェだけではなく、多目的ルームや展示室なども館内に備えているそう)
コーヒーも、試しに頼んでみたアイスクリームを巻いたロールケーキもおいしく、このカフェを知って週末の散歩の楽しみがさらに増えました。
ここまで読んでくださった方はもうおわかりでしょうが、冒頭でご紹介したクッキーは自由学園食事研究グループという団体が作ったもので、このしののめ茶寮で販売されていたのです。
ギリコが買ったのは一番小さいサイズで値段は税込み2900円。
販売台のそばに過去に新聞の取材を受けたときの記事が貼られていたのですが、それによれば作り手は自由学園の卒業生を中心とした方々だそう。そしてクッキーのレシピは70年間不変(!)とのこと。
〝70年間不変の味〟と知って食べてみたい気持ちがムクムク……好奇心から買ってみたのです。
そして食べた結果は……あの不思議な感じ。
口福という言葉がありますが、私にとってこのクッキーは口だけではなく心にも何か響くものをもたらしてくれるように思います。
●缶入りクッキーは電話やファックスでも注文できるそうです。全国への発送も可能。詳しくは自由学園食事研究グループ 製品案内をごらんください
※『しののめ茶寮』の外観写真は許可を得てHPよりお借りしました