どう見られたいかではなく、
「自分軸」で選んだ服を着たい
黒田 こういう状況で過ごすのは、後にも先にもなかなかないこと。とろさん(愛犬)の散歩をして本を読み、ごはんを作るとなんとなく一日が終わってしまう…これでいいの? そんなことを考える毎日でした。
小倉 私も、唯一の外出といえばダッシュですませる買い物くらい。でもある日、スーパーで真っ白なレースのワンピースを着た人を見かけたんです。その瞬間、“ああでなくては!”と猛省。自分を含めて周囲がカジュアルだったから、すごく際立っていたしかっこよかった。それをきっかけに、自分にとって心地よいおしゃれとは、と改めて考えました。
黒田 私はつい先日、あるお店でワンピースを試着したとき、丈が長めで細身でかっこよくて、大好きなデザインなのに、なぜか急に疲れを感じてしまって。服に対してこんなふうに思うなんて年をとったのかな、と自分に驚きましたが、頑張って服を着る気持ちになれないんだと気がつきました。今は疲れない服が着たい。だからといって、ただ緩いだけの服が着たいわけではなくて…。
小倉 同感です。この先しばらくは着飾って食事会などへ行くのが難しいし、そんな気持ちにもなれないですよね。
黒田 そうなんです。今、私が着たいのは、ラクそうに見えてただラクなだけじゃなく、自分を助けてくれるデザイン性や、素材に質感がある服。だらしなく見えたくはないので、こぎれいで着心地がラクで、でもかわいい格好がしたいな。そういう意味では、今日着た白いオールインワンも素敵でしたね。
小倉 つなぎのカジュアルさとはまた違いますし、ワントーンの着こなしがお似合いでした。今日はタンクトップでしたが、寒くなったら下にニットを重ねるのもいいですね。
黒田 以前買った黒いオールインワンがあるんです。一枚で着るには胸元のあきがやや深めで持て余していたんですが、今年はさっそく黒のタートルニットを合わせよう!
小倉 ステイホーム中に家の中の整理をした人も多かったと聞きますが、黒田さんは?
黒田 はい、私も。クローゼットを眺めて、この春はトレンチを着なかったとか、温暖化が進んでブラウスや薄手ニットのような中間服がいらなくなるのかな…といろいろと考えたし、“おしゃれは自分のため”という言葉の意味も再認識しました。
小倉 これからは、人の目を意識したファッションから、心地よくリラックスでき、着ることで元気になれる、自分の心持ちに軸足を置いたおしゃれにシフトしていくでしょう。とても楽しみですね。
サイズ感に今が薫る、
リブ編みのセットアップでリラックス
ゆったり体を包むカーディガンとおそろいのパンツは、ストレスのない着心地でありながら部屋着感のないスタイル。素材とリブ編みの加減で体の丸みを拾わないのもうれしい。黒田さん曰く「休日のお父さんのようなゆとりのある着こなし」を目指したい。
黒田知永子さん Chieko Kuroda
1961年生まれ。学生時代に「JJ」でモデルデビュー。その後「VERY」「STORY」「éclat」の表紙キャラクターを務め、女性誌やテレビ、カタログなどで活躍中。単行本『CHICO MY FAVORITES』VOL.1〜3、私服スタイルや愛犬・愛猫との暮らしぶりが人気のインスタグラム@kuroda_chiekoも必見!
撮影/浅井佳代子 モデル/黒田知永子 ヘア&メイク/福沢京子 スタイリスト/小倉真希 取材・原文/向井真樹