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【鏡リュウジ×真木あかり対談】タイパ・コスパの時代に不運(シャドウ)に向き合う意味とは?

占い本の聖地で行われた出版記念イべント。敬愛する鏡リュウジさんの巧みなリードで、真木さんが『「ツイてない」「もう無理」に効く占いと技術 ~不運の救急箱~』を書くに至ったいきさつや自身の過去、占い本としては型破りな内容と構成の理由が明らかに。今、なぜ自分の「不運(シャドウ)と向き合う必要性があるのかを語り合いました。

#不運本が話題の真木あかりさんが、敬愛する鏡リュウジさんと占い本の聖地で対談しました

新刊『「ツイてない」「もう無理」に効く占いと技術 ~不運の救急箱~』(集英社、以降は“不運本”)が話題の占い師真木あかりさん。1月に『シャドウワーク・ジャーナル ”本当のあなた”になるためのガイド』(すばる舎)を出版した鏡リュウジさん(鏡さんは翻訳を担当)と、神保町の書泉グランデで対談イベントを開催しました。テーマは「不運(シャドウ)に向き合う」

対談前半では、鏡先生が驚いた“不運本”の中身を取り上げながら、近代の占い史と社会的背景について話しました。途中、真木先生が過去の体験を打ち開け、鏡先生がレスキューする場面も。SNS時代、タイパの時代にこそ必要な、出来事を体験に深めるための時間、考える時間とは。

『「ツイてない」「もう無理」に効く占いと技術 ~不運の救急箱~』『シャドウワーク・ジャーナル』の出版記念に開催された鏡リュウジ先生と真木あかりさんが登壇した書泉グランデのイベント

 

(右)真木あかりさん プロフィール:占い師。学習院大学卒業後、フリーライターなどを経て占いの道に。モットーは「占いを使って、自分の人生を能動的に生きる」。主な著書に『タロットであの人の気持ちがわかる本』(説話社)、『真木あかりの超実践 星占い入門』、『シンプル四柱推命 最強の人生をプランニングできる』(ともに主婦の友社)、『金運星占い』(KADOKAWA)等。他、女性誌やウェブメディアでの連載、アプリ監修などを手掛ける。

 

(左)鏡リュウジさん プロフィール:心理占星術研究家、翻訳家。国際基督教大学卒業、同大学院修士課程修了(比較文化)。占星術の心理学的アプローチを日本に紹介し、従来の「占い」のイメージを一新。英国占星術協会会員。日本トランスパーソナル学会理事。京都文教大学客員教授、東京アストロロジースクール代表講師、NPO法人東京自由大学顧問も務める。著書に『鏡リュウジの占星術の教科書』シリーズ、訳書に『ユングと占星術』『サターン』(ともに青土社)など多数https://kagamiryuji.jp/

 

不運にフォーカスした本を作りたい。企画した当初は『どん底占い』でした(笑)(真木)

鏡リュウジ先生(以降:鏡) この本『「ツイてない」「もう無理」に効く占いと技術 ~不運の救急箱~』を読ませていただいて、びっくりしたんです。最近占いの本って、たくさん出ているんですよ。似たような表紙の本、類書もたくさんあります。だけど、この本は構成がほんとにオリジナル。第一、占い本といいながら読み進んでも占いがなかなか出てこない。

2部構成になっていて、前半は「不運」なるものの正体を分析していく作業。ここでサイコロジカルに不運を見極めてそのあとでやっと占いが出て来るというしかけになっている。よくこの本が出せたな、そのエネルギーとアイデアが素晴らしいなと思いました。この本は、どんなプロセスで作られたのでしょうか。

 

真木あかり先生(以降:真木) ありがとうございます。占いの本と言えば、開運とか運気アゲアゲみたいな本が多いのですが、私としては不運にフォーカスしないと開運も運気アップもできないと思っていて。どんなテクニックも不運グセがついていると、手先のことに過ぎなくなってしまう。自分の経験でもありますし、個人鑑定でもあり危ういなと感じていました。

 

そこから不運にフォーカスした本を作りたい、不運グセを知ることで解消・改善して、自然に開運していく流れを作りたいと思ったのが企画の出発点です。

『「ツイてない」「もう無理」に効く占いと技術 ~不運の救急箱~』『シャドウワーク・ジャーナル』の出版記念に開催された鏡リュウジ先生と真木あかりさんが登壇した書泉グランデのイベント

鏡 制作にはどれくらいの期間かかりましたか? 前半のアプローチがすごくサイコロジカルだなと思いました。

 

真木 1年くらいです。最初は本を出す予定もなく、編集者さんと“いつか出たらいいね”くらいで話していて。その時は『どん底占い』と言ってました(笑)。サイコロジカルとおっしゃるのは、私が心理学を学んでいたからかもしれません。ですが占いと心理学を混ぜてはいけない、考えています。占いだけでは救われない、技術だけでは生きられない。私自身に強い思いがあったので、この形になりました

 

 なるほど、前半のアプローチがなぜこうなったのか分かりました。イベントが始まる前、バックヤードでちらっと話を聞きましたが、真木さんはかなり苦労されているんですよね。

『「ツイてない」「もう無理」に効く占いと技術 ~不運の救急箱~』『シャドウワーク・ジャーナル』の出版記念に開催された鏡リュウジ先生と真木あかりさんが登壇した書泉グランデのイベント

真木 氷河期世代で大学は2000年卒、先輩から“100社受けても受からない”と聞いて就職活動をせず、就職から逃げて結婚しました。ですが結婚生活はうまくいかず逃げるような形で家出をしました。就職・結婚から逃げて、逃げまくった人生でした。家出を振り返れば、高校時代にも父親と関係が悪くなってしまい、夜中に風呂場の窓から逃げたことがあります。

 

鏡 それは「逃げた」ということではなく、本来の自分がいるべきでないところから出ていく決断をしたんじゃないかしら。無意識的にであれ、本書の前半に出て来るような、嫌なことを自分だけの責任にしないという見方の萌芽があるんじゃない? それに、衝動的で大胆な行動をとられたとも見えますが、どれも実際にやるにはすごいエネルギーが必要なことでしょう。

記事が続きます

社会に合わせて占いも変化する。行政などの問い合わせ先が書いてある、新しい占い本(のさいんさ

真木 2000年代って、自己責任という言葉がよく使われました。そんな中でなんとか自分で生きていかないといけなくて。私自身すごく貧乏な生活をして、雑草を食べてサバイブしていた時期もありました(笑)。

 

自己責任という考え方だと周りの人を不幸にしたり厳しくなってしまうし、“私の運が悪いせいだ”と逃げてしまう。それで人生がうまくいかなくなった人もいると思います。解像度を上げて向き合う、運だけじゃないと気づかないといけなかったということですね。

鏡リュウジさん

 僕の青春時代80年代90年代では、“心”が大ブームで心理学者の河合隼雄先生が大活躍されていました。僕も心理占星術にハマりました。その後、社会学のブームが始まり、社会の問題という視点が強くなり、さらにその後、“ケア”という言葉が出てきます。いわゆる心理学は大変役にたつけれど、下手をするとすべて内面の問題にしてしまうことになりかねない。ある種の自己責任ですよね。社会と向き合うことから目を背けてしまう心配もあるんですよ。

 

その中ですごいと思ったのが、“不運本”62ページに収録されている『自分では解決しがたい不運に見舞われた時の連絡先リスト』。行政や弁護士、警察などの問い合わせ先が書いてあります。これは新しいですよね。

 

真木 この注意書きだけは、最初から“絶対に入れたい”と伝えていました。個人鑑定をやっている時にも、“それは占いじゃないよ”とお伝えするケースが何度かあったんです。そんな時に“1人じゃない”、お金やDVの問題は行政や公共の機関に頼ってもいいということを知ってもらいたいと思って入れました。

 

 80年代90年代は日本が豊かだったので心上位で良かったのかもしれませんが、社会も変わってきましたから変えていかないといけない。だから新しい視点が出てきたんだと思います。

 

僕は社会の問題と心の問題は浸透しあっているもので、分ける必要はないと考えています。起こっていることは全部心が体験しているわけだから、心の問題でもあるんです。その心の動きに巻き込まれてしまうと、周りが見えない・頼れる人がいないと思ってしまうんですね」

真木さんの過去の行動は“逃げる”ではなく“自分を守る”ためだった(鏡)

『「ツイてない」「もう無理」に効く占いと技術 ~不運の救急箱~』『シャドウワーク・ジャーナル』の出版記念に開催された鏡リュウジ先生と真木あかりさんが登壇した書泉グランデのイベント

真木 私自身パートナーから暴力を受けた経験がありますが、“そんな大事(おおごと)じゃない”と思ってしまうんです。“そうではない”“これは誰かを頼らないといけない”と気づくきっかけになれば、この本を作ったかいがあります。

 

“不運本”は当たり前のことしか書いていないかもしれませんが、言われてみないと分からないことってたくさんあると思います。1つは気づけたけれど他3つは気づけなかったとか。

 

 あの河合隼雄先生(編集注:臨床心理学を拓いた日本のユング派心理学者)の本だって、見方を変えれば「当たり前のこと」を書いておられる。でもね、「当たり前」に改めて、あるいは深く気がつくってすごいことでしょう。「当たり前」って、言い換えれば「普遍的」ってことじゃないですか。さまざまな事例を通して普遍性へとたどり着くとしたら、それは大変なことですよ。

 

真木先生は自分の体験を“逃げる”とおっしゃっていましたが、それは自分に起こっていることから距離を置くということ。僕のアプローチからすると逃げるではなく、自分を守っているんですよね

 

そのままの状況だと、自分が破壊されてしまう、だから自分を守るんです。自分の中の大事なものを守るために居場所を変えているんですね。自分のスペースを作るための行動だと僕はとらえます。

『「ツイてない」「もう無理」に効く占いと技術 ~不運の救急箱~』『シャドウワーク・ジャーナル』の出版記念に開催された鏡リュウジ先生と真木あかりさんが登壇した書泉グランデのイベント

真木 うう、泣いてしまいそうです。親にまだ言えていませんが、スーツを買うために親からもらったお金で文学全集を買ったこともあります。

 

 なけなしのお金を目先のことに必要なことでない、他のために使った。自分の中でのバリューを明確にしたということですね。それは自分の心、魂が選んでいることなんですよね。頭では、つまり小さな自我を超えた自分が動き出しているのかもしれない。それを運命あるいはシャドウと言ってもいいかもしれないし。そういう大きな流れがあるというのが僕のこころや占いにたいしてのスタンスです。

 

真木 今思うと、否定されることがすごく怖かったんだと思います。それが私のシャドウですよね。面接で“ダメだ”と言われたり、圧迫面接を受けたり。その後も私はあらゆる面接から逃げ続け、離婚してフリーライターになりました。

 

当時のライターは“出版社に原稿を持ち込め”と言われていましたが、それも怖くてできず。口コミサイトで好きに文章を書いていたら、それを見つけてもらって仕事をいただけるようになりました。その流れで就職できて、これまで一度も面接を受けずにきました。逃げ切りました(笑)。

 

そう言えば最近ちょっと気になっているのが、出来事が起きてから書くまでのタイミングです。SNSやブログに起こったことをすぐに書く方がいて、10年20年経つと書くことに枯渇しているように見えます。深く考える前に書いてしまうと感情をすり減らすことが多い気がしており、書き手としてすごく不安なことだなと思っています。

 

 X民の僕としては、聞き捨てならない話ですね。詳しく教えてください。

 

記事が続きます

出来事や経験を時間をかけて深めることでシャドウ(不運)だと気づく(真木)

『「ツイてない」「もう無理」に効く占いと技術 ~不運の救急箱~』『シャドウワーク・ジャーナル』の出版記念に開催された鏡リュウジ先生と真木あかりさんが登壇した書泉グランデのイベント

真木 自分に起きたことを時間をかけて“こういうことだったのか”“シャドウだったんだ”と気づく経験ってあると思うんですけど、今の時代はすぐに出して終わりにし新陳代謝していく。それもありだとは思いますが、そうやって脚光を浴びた人が感情をすり減らして、新しいものが生み出せなくなる。そのサイクルに入ってしまう人がたまにいらっしゃるんです。

 

ネガティブケイパビリティ(不確実性や不快感、疑問、矛盾、そして答えのない状況に耐え、受け入れる能力)ではないですが、自分の中で抱え続ける時間も大事だと思います」

 

 人生は短いから、タイパ・コスパを考えてしまうというのもわかります。一方、この話を聞いて思い出したのは、心理学者ジェイムズ・ヒルマンが書いた本『魂のコード』で、彼は心理学者なのに魂という言葉をよく使うんです。

 

オーソドックスな心理学では魂は扱えない領域なのですが彼は、魂は“知性と肉体をつなぐもの”“出来事を経験に深めるもの”と言っています。起こったことをすぐに表に出してしまうと経験に深まっていかないんですよね。

 

真木 SNSで起こったことを発信すると賛同してくれて嬉しいのもありますが、それで気が済んでしまうんですよね。終わった後も考え続けることが軽視されすぎていると思います。

 

 それがSNS時代の功罪でもありますよね。その流れで言えば、過去の体験を書く、昔の出来事を掘り起こし経験に深めていくことの価値が見直されてきているとも言えます。ジャーナリングが今アメリカのZ世代や若い世代に流行っているのは、そういう社会的背景があるのかもしれません。(後半へと続く)

真木あかりさん

撮影/高村瑞穂

取材・文/武田由紀子

書泉グランデ 

https://www.shosen.co.jp/

〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-3-2 TEL:03-3295-0011

【(株)書泉】「書泉」「芳林堂書店」の2つの屋号の書店を展開。「鉄道」「アイドル」「プロレス」をはじめ、「数学」「占い」など様々なジャンルの本・雑貨を深く考察しています。関連イベントも多数実施。

 

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