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デザイナー島田順子さんのゴージャスな白髪の秘密とは?(インタビュー/後編)

島田順子さんの今にいたるヒストリーと、人生を貫く美意識をまとめた一冊の本が出版された。

OurAge のインタビューでは、そのゴージャスな白髪の秘密や、美しさ、若々しさの理由までもが明らかに!

(料理や暮らしぶりについて語った、インタビュー前編はコチラ

 

撮影/萩庭桂太 取材・文/岡本麻佑

島田順子さん

Profile

しまだ じゅんこ●1941年7月7日、千葉県館山市生まれ。杉野学園ドレスメーカー女学院デザイナー科卒業。1966年、渡仏。1968年、パリの百貨店「プランタン」の研修室に入る。1970年、デザイナー集団マフィアに参加。1975年、「キャシャレル」に入社後、チーフデザイナーとして活躍。1976年、女児出産。1981年、パリに『JUNKO SHIMADA DESIGN STUDIO』設立。パリおよび東京で初めてのコレクションを発表。1988年、2歳年下の日本人男性と結婚。2012年、フランス共和国芸術文化勲章(シュバリエ)受章。

 

「けっこう野蛮なのよ、私(笑)」

インタビュー当日、島田順子さんが着ていたのは、プリントのブラウスにレザーのスカート。とてもチャーミングなコーディネートだ。

「そう? 大昔に作ったヤツなんだけど、これ、実はワンピースなの。ちょうどいいブラウスが見つからなかったから、代わりに(笑)。しょっちゅうこういうことするの。けっこう野蛮なのよ、私」

ほらね、と、スカートをたくし上げてワンピースの裾を見せてくれる島田さん。パリコレのレジェンドみたいな大物デザイナーなのに! まるでイタズラっ子みたいな表情だ。そういえば、今やトレードマークとも言えるゴージャスな白い髪も、自前のケアが発端だとか。

「美容院が苦手なんです。大きな鏡があってライトがついていて、その前に座る自分がイヤなのね。髪の毛なんか染めたら、そこにしょっちゅう行かなきゃならないでしょ? だから染めずにいたらこうなったし、伸びたら切るのも自分です。

ずっと昔、占い師のオバアサンが私に言ったのよ、“満月の夜に髪の毛を切ると、幸せが来るよ”って。そんなことで幸せになれるのならそうしようと思って、それ以来、満月の夜に気が向くと、髪の毛をこう持って、裁ちばさみでザクっと切るの。それだけ(笑)」

スキンケアも自己流、そして最低限だという。

「私の祖母が明治の人で、84歳で亡くなるまで、背中のきりっとした、毅然とした人でした。自分で繭から糸を取って、野草を集めて染色し、布を織って着物を作ってしまうような、すごい人。私は彼女から相当影響を受けていると思います。

その彼女がヘチマの水で顔をタッタッと叩いたり、鶯のフンで肌を揉んでいたりするのを小さい頃見ていて、それですごくツヤツヤとキレイだったから、あまりいろいろしないほうがいいのかな、と思ったのね。だから私はあまりやらないんです。それでお日さまに当たってばかりいたから、今はシミだらけでしょ? でも自分では自分の顔なんて、見やしませんから。たまに明るいところで鏡を見ると、ぎゃって思いますけどね(笑)」

と、いうことは。健康のために何かすることもなく?

「歩くことはすごく大事だと思うけど、アスファルトの上を歩くのがイヤなのね。森の中を、緑がキレイだね、なんて言いながら歩くのもガラじゃないというか、気が進みません(笑)。だからゴルフ場を歩くようにしています。白い球を追いかけて歩くのは、苦じゃないの。多いときには週に2~3回、早朝に。冬だって、雪が降るまでは行くし、わりとちゃんと行ってます。

あと、そうね、お風呂には入ります。1日3回くらい入る日も。湯船に浸かってぐーっと全身を伸ばしてリラックスするから、それは身体にいいんじゃないかしら。お風呂上がりに全身をドライオイルでマッサージするから、血行にいいと思うのよ」

あれもしてこれもして、その結果の若々しさ、美しさではないようだ。今の彼女の姿は、今まで生きてきた時間の積み重ねそのもの。

「私、40代になっても50代になっても、年齢ってあまり意識しなかった。若い頃は、早く大人になりたいと思いましたけど。更年期? それはもちろん人間だもの、あったと思いますけど、それなりに過ぎていったというか。自然に終わって、いつの間にか老年になっていました(笑)。今は、たまに自分の年齢を思い出すと我ながら驚いてしまうけど、ふだんは忘れています。

だってフランスにいると、女友だちなんかみんな、すごくルンルンしているの。ミニスカートやショートパンツで、真っ黒になってゴルフをしているから“あなたいくつ?”って聞くと“82よ”って。そういう中にいますから(笑)。歳なんて、そんなこといちいち気にしていたら、何もできないじゃない? 1年過ぎればひとつ歳を重ねるのは当たり前のことだし、一瞬一瞬を大事に生きてればそれでいいのかなって思います」

40代半ばで日本人男性と結婚。パリに本拠地を置く島田さんは遠距離結婚生活を続けていたが、8年前に夫は逝去。22年で結婚生活は終わってしまった。けれど、

「今でもときどき、いるような気がします。毎日ずっと一緒に暮らしていたわけではないから、それが今結果として、寂しくない理由なのかもしれませんね。

私、相手がいるとうるさかったり、いないとさみしかったり。だってほら、夜中にふと目を覚まして本を読みたくなったときに、隣に誰かいると、明るくて迷惑かけるかしらとか、気を遣うじゃない? あれこれやりたいことがいっぱいある人間だから、そういうのって相棒にとっては迷惑じゃないかなって。誰かそばにいるのはいいことだけど、ひとりでも気が楽でいいかな」

芯を貫いているのは、インデペンデントな精神。ひとりですっくと立つ、その心意気と覚悟がそのまま、彼女の立ち姿と重なっている。いたずらっぽい笑顔やウィットに富んだ表情が、アクセサリーとしてニュアンスを添える。

「私が子どもの頃、お祖母さんに憧れたみたいに、この本の読者も私の中の良いところだけ真似してくれるのかしら。だとしたらうれしいけれど、ね(笑)」

 

『パリ-東京 今日、今を生きる美しい人 島田順子』

パリを拠点に、そして東京でも、ファッション・デザイナーとして活躍し続ける島田順子さん。彼女自身がその半生を、いつもの暮らしを、今を、そしてこれからを、長時間のインタビューを通して語り尽くした。島田順子という、チャーミングでひたむきに生きるひとりの女性の魅力をさまざまな写真とともに紹介する。(2019年9月26日発売。1800円+税/集英社インターナショナル)

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