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ホルモン分泌の変化による“フケ声”は解消できる!/由紀さおりさん「美しい声」の秘密①

自伝『明日へのスキャット』出版で話題!

デビュー50年。由紀さおりさんの変わらず美しい姿、透き通るような声は、
日々の過ごし方や心のあり方と関係がありそう。声の健康を保つ秘訣について、
絶大な信頼を寄せる主治医で、声の専門家である渡邊雄介先生と、じっくり語り合いました。

ワンピース/エスカーダ・ジャパン(エスカーダ)

 

由紀さおりさん

Saori Yuki

群馬県生まれ。子どもの頃より童謡歌手として活躍。1969年「夜明けのスキャット」でデビュー。姉の安田祥子さんとの童謡コンサートも好評。米国ジャズオーケストラPink Martiniとのコラボアルバム『1969』は50カ国以上でリリースされた。2019~20年は50年記念コンサート『感謝』を全国で公演中

 

 

渡邊雄介さん

Yusuke Watanabe

国際医療福祉大学医学部教授。山王病院国際医療福祉大学東京ボイスセンター長。一般の声トラブルから発声のプロフェッショナルまで幅広い支持を得て、新聞やテレビにも多数出演。声の悩みに応えるわかりやすく丁寧な解説、実践的なエクササイズの紹介が好評

 

「夜明けのスキャット」から50年、
変わらぬ美声をどう守っているの?

 

 

「薄くて弱い声帯」を
大切にケアして守ってきた

 

―デビュー50年の由紀さおりさん。著書によれば、今も美声が健在なのは渡邊先生の診察のおかげも大きいとか。

 

由紀 はい。先生がいらっしゃる山王病院の「東京ボイスセンター」に毎週通っています。そもそも私は幼い頃からずっと耳鼻科の先生に継続的に診ていただいているんですが、以前通っていた先生が引退される直前に、坂本冬美ちゃんに渡邊先生をご紹介いただいて。あれはいつでしたかしら。

 

渡邊 3、4年前ですか。由紀さんが通っていらした耳鼻科の先生方は皆さん一流で、僕の大先輩の先生もいらっしゃいましたね。

 

由紀 ご縁があったのね。以来毎週、口を大きくあけて喉の奥の声帯をモニターに映して診ていただいています。

 

渡邊 いろいろな歌い手さんや役者さん、声を出すプロの皆さんの声帯を診ていますが、多くの方がなんらかの気になる部分をお持ちで、悩んでいらっしゃいます。でも由紀さんの声帯はすごくきれいで、まるで少女のようです。

 

由紀 (笑)そんな、少女だなんて!でも私は幼い頃、「あなたの声帯は弱くてすごく薄いから、無理して声を出してはダメですよ」って耳鼻科の先生に警告されたんです。だから、それ以来ずっとその教えを守ってきました。

 

渡邊 由紀さんのようにご自身の喉や声のことを、意識してちゃんと考えていらっしゃる歌手の方は非常に少ない。若いときは何もしなくても、どんな声でも出ます。でもそのまま年齢を重ねると、しだいに声が出なくなるといったトラブルが出てくるのです。

 

―アワエイジ世代の一般女性にも、年齢とともに声が出しにくくなったと感じる方が多いようです。

 

渡邊 更年期を境に起こるホルモン分泌の変化に伴って声も老化するのです。声がかすれたり、以前は出せた音域が出せなくなったり。さらに閉経の影響で体は太りやすくなり、太ると胃酸が逆流しやすくなり、喉を傷めます。そして声帯が男性化して、いわゆる「黄色い声」が思うように出せなくなります。こうして加齢で衰えてしまった声を僕は「フケ声」と呼び、最近出版した本でも警鐘を鳴らしています。

 

由紀 実は私の楽屋にもいろいろな方が相談にいらっしゃるんです。「どうしたらそんなふうにきれいな声を保てるの?」とか「声を保つために何をしているの?」って真剣に悩んでいらして。私も若いときは気にしなくてもどんな声でも自然に出すことができました。でも30代半ばになって姉と童謡を歌うようになった頃、声が出しにくいと姉に相談したことがあります。姉は声楽を本格的に学んでいますし、普段から喉を守るためにファルセットで話しているぐらいですから。そのとき、「声帯に負担をかけないように、地声とファルセット、どちらでも歌えるように真ん中の中間音域を使うようにしたら?」と教わって。それ以来、どちらの歌い方でも声がうまく出せる音域を広げるように訓練しました。

 

渡邊 地声だけやファルセットばかりなど、同じ声を出し続けて歌うと、声帯に負担をかけてしまうんです。ファルセットと地声、ピアニッシモからフォルテッシモと、いろいろな声をバランスよく出すことが喉を守り、美しい声を保ちます。ちなみに世界3大テノールのある方は、コンサートのあとは、あえて普段は使わないファルセットで発声練習をするそうですよ。

 

「声筋(こえきん)」が元気だと

声帯がきちんと閉じる!

上は「声帯」と、それを取り囲む組織の図。喉の奥で大切な働きをするこれらの筋肉群を、渡邊先生は「声筋」と呼ぶ。声筋により気道が安全に閉鎖され、左右の声帯が中央で閉じた状態で呼気がその間を通り抜けると、声帯が細かく振動して声が出る。声筋が元気だと声帯がきちんと閉じ、よい声が出る。

 

『フケ声がいやなら「声筋(こえきん)」を鍛えなさい』

渡邊雄介 著/晶文社 1,200円

声と健康の密接な関係を声の専門家がわかりやすく解説。放っておくと重大な問題を引き起こすという声のトラブル解消の知恵を、声筋のトレーニングやケア方法のイラストを交えて紹介

 

 

『明日へのスキャット』

由紀さおり 著/集英社 1,389円

幼少時から歌を愛し、音と自分に真摯に向き合ってきた歌い手、由紀さおりの自伝。「歌うことは私の運命、宿命」と挑戦を続けて50年。70代を迎えた今も前向きな姿勢に感銘を受ける一冊

 

 

「声筋」の鍛え方など、次回もまた由紀さおりさんと渡邊先生の対談は続きます。

 

 

撮影/宮本直孝 ヘア&メイク/徳田郁子(竹邑事務所) スタイリスト/吉村由美子 構成・原文/浦上 優

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