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https://ourage.jp/life/interview/276312/

101歳の父・良則さんの健康法と、60歳の娘・信友直子さんの体重の話(インタビュー/後編)

信友直子監督が自分の父親と母親のありのままの姿を撮った作品『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』が3月25日に公開される。

認知症になり、脳梗塞を発症して入院した母と、その妻を微笑みながら支える夫、ふたりを見守りながら映像作家としてその姿を撮り続ける直子さんの姿は、日本中の観客に、老いと死に立ち向かうための、血の通った勇気を与えてくれるはずだ。

それにしても、現在101歳になった父・良則さんと、大病を乗り越えて創作に打ち込む直子さん、信友家の強靱な肉体と精神は、いったいどうやって培われてきたのだろう?

 

(母の病気と介護、そして作品に込めた思いを語った、インタビュー前編はコチラ

 

撮影/萩庭桂太 取材・文/岡本麻佑

「ぼけますから、よろしくお願いします。』監督・信友直子さん写真

信友直子さん
Profile

のぶとも・なおこ●1961年生まれ。広島県呉市出身。1984年東京大学文学部卒業。一般企業に入社後、取材を受けたことをきっかけに、映像制作に興味を持ち転職。制作プロダクションを経てフリーに。主にフジテレビでドキュメンタリー作品を手がけた。2007年に乳がんを発症し、その経験はセルフドキュメント『おっぱいと東京タワー~私の乳がん日記』として、フジテレビ「ザ・ノンフィクション」で放映。2018年、両親を撮ったプライベートフィルムをドキュメンタリー作品にまとめ『ぼけますから、よろしくお願いします。』として発表、高い評価を集めた。

 

「101歳の今も元気な父は、

地域の皆さんの希望の星です(笑)」

 

前作『ぼけますから、よろしくお願いします。』で認知症を発症した87歳の妻を優しく見守り、それまで全くしたことのなかった家事をしながら淡々と過ごす95歳(ともに撮影時の年齢)の良則さんの姿は、頼もしくていじらしくてカッコ良くて、観客の中にはお父さんファンになった人も多かった。

 

「別に父を元気にしようと思って作ったわけじゃないですけど、やたら元気になりました(笑)。地元で歩いていると、映画を観た方から『おとうさーん! 元気にしよるん?』と声をかけていただいて、毎日の生活に張りが出てきたんじゃないでしょうか(笑)」

 

10数年前に撮影した映像を見ても、良則さんの姿は今とは大分違っているらしく。

 

「あの頃よりも今のほうが若々しいんです(笑)。以前は本当になーんにもしない父だったんです。母がちょこまかちょこまか家中動き回って家事をしているのに、父はずっと座って新聞や本を読んでいました。

でも母が認知症になってからというもの、家事は代わりにするようになったし、ぐんぐん社会性を帯びてきて、すごく若々しくなったと思います」

 

早朝5時6時に起床、布団を畳んで片付け、朝食は玄米パンと牛乳などのヘルシーメニュー。洗濯も掃除も自分でこなし、近所の商店街へシルバーカーを押しながら、歩いて買い物へ。

「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえりお母さん~」sub6

本作の中では、100歳の誕生日に、近所のファミリーレストランでビーフシチューのかかった豪華なハンバーグ定食をペロリと完食する姿も映っていた。

 

「新聞を読むのが好きで、中でも食と健康についての記事をよく読んでいて、これが体に良いらしいと知ると、切り抜いたり線を引いたりして、食生活に取り込んでいるみたいです。ですから納豆とか海藻とか小魚とか、きちんと食べていますね。

布団の上げ下ろしを毎朝毎晩くり返しているのも筋トレになっていると思いますし、家はバリアフリーじゃなくて段差もあるし、お風呂も旧式でけっこうな深さもあり、それが逆に父の足腰には良かったのかもしれません」

 

バリアフリーに関しては信友さん、こんな話を聞かせてくれた。

 

「母が認知症とわかった時点で、火の元などは安全な仕様に変えたのですが、たとえば玄関をスロープにするという案は、ケアマネジャーさんと相談してやめました。

というのも認知症の人が徘徊するのは、今いる場所は自分の家じゃないと思い込んで、自分の家に帰りたいから出かけるそうなんです。帰りたい家というのはたいてい実家らしいです。

でも母の場合、今ここにいる家にいたいという気持ちが強いから、変に改装してしまうと、ここはウチじゃないと思ってしまうかもしれない。改装しないほうがいいだろう、と。

洗濯機も未だに古い二層式を使っていて、私は全自動に替えたかったんですけど、父が『洗濯機を替えたら、もう私は家事に参加させてもらえないんだって、おっかあが思うけん、おっかあが使おうと思ったらすぐに使えるように、そのままにしといてやれや』って言うものですから、そのままにしました」

 

さらに父の良則さん、週に3回は近所のクリニックで筋力トレーニングやエアロバイクを欠かさないという。

「ぼけますから、よろしくお願いします。おかえりお母さん」スチールmain

「エアロバイクって、使う前に年齢とか距離とか設定するじゃないですか。でも父が年齢を入力しようとしても、ふた桁しかない。仕方がないから101歳なのに99歳って入力しているそうです(笑)。

そこの作業療法士さんに『お父さんはこのエアロバイクを漕ぐ、たぶん日本で最高齢だね』って言われて、気分良くしているみたいです(笑)。

それに周りの方たちも、101歳のお父さんが頑張っているんだから私らも頑張ろうって、みんな元気になって、相互作用でいい感じになっているみたいです」

 

 

そういえば直子さんご自身も、以前インタビューしたとき、筋力をつけるべく頑張っていたはず。

 

「でも今、太っちゃったんです。コロナのせいです。

コロナ騒動が始まる前は、前作の『ぼけますから、よろしくお願いします。』の上映会と私の講演をセットにして、日本各地からお呼びがかかっていたんです。私も観客の皆さんと直に触れあえて、作品の手応えも感じられて、すごくうれしかったんですけど、コロナ禍でその予定が全部吹っ飛んでしまった。それでストレスが溜まって、暴食に走りました(笑)。

 

運動を中断したのも大きかったですね。それまで近所のスポーツジムで格闘技系のグループレッスンにはまって鍛えていたんですけど、狭いスタジオの中でみんなでハアハアやると、怖いじゃないですか。それで半年ほど休会したら、あっという間に太りました。

 

それに、やはり父が心配なので、半分くらいは呉の実家で生活するようにしたんですね。すると父は3食きっちり食べる人だし、どうしても私が作る人になるし、品数多く作ってそれを残さず食べていたら、いつのまにか人生で最大体重になっていまして。ジムに通っていた頃から比べると13キロぐらい増えていて、先日、昔の写真を見つけて痩せてる自分にびっくりしました(笑)」

「ぼけますから、よろしくお願いします。』監督・信友直子さん笑顔写真

とはいえ、映画の公開が決まった今、「舞台挨拶までに痩せる!」と誓いをたてて、現在、ダイエットと運動に励んでいるとか。

 

「でもやはり体力もなくなっているし体重が増えて体が重いし、体脂肪率がすごく増えて、ジャンプしても飛べなくなっていて。ちょっと動くとすぐ疲れちゃう。人生最大に太っているから、膝もちょっと痛いです。

60歳になったんですけど、今の自分の体力に合ったクラスを選び直すべきなのかもしれませんね。体が動けば楽しいし、ストレス発散にもなるんですけど」

 

これからもしばらくは、広島の実家と東京を行き来する生活が続く。

 

「父と母が、私のためにこれだけ身を挺して作品を作ってくれたので、今度は私が、娘としてお返しをする番だと思っているんです。広島にできるだけ帰って、娘業に徹します」

 

それもまた、ノンフィクションのドキュメンタリー。映像作家であると同時に娘でもある信友さんの毎日は、オンとオフが同時に進行して、また新たな作品へと昇華するのかもしれない。

 

「とりあえず、痩せます。全国のみなさん、舞台挨拶を見守ってください(笑)」

 

『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』

「ぼけますから、よろしくお願いします。おかえりお母さん」スチールmain

2018年。父は家事全般を取り仕切れるまでになり日々奮闘しているが、母の認知症はさらに進行し、さらに脳梗塞を発症、入院生活が始まる。一時は歩けるまでに回復した母だったが新たな脳梗塞が見つかり、病状は深刻さを極めていく・・。認知症とともに生きる大変さや苦労を含みながらも、実の娘でなければ撮れない温かな眼差しに胸を打たれるドキュメンタリー。

「ぼけますから、よろしくお願いします。おかえりお母さん」スチールmain

2022年3月25日(金)より全国順次公開

監督・撮影・語り:信友直子

配給・宣伝:アンプラグド

©2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会

公式サイト:https://bokemasu.com/

 

 

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