私の知っているお兄さんは、かつて大学の試合中にジャージのなかにボールを隠して、味方もみんな同じようにボールをお腹に隠しているフリをして走ってゴールまでいったところレフリーに怒られて反則をとられたことがあるそうです。
その反則の理由、わかりますか?
さて、どんなスポーツにも、ルールが存在しますよね。もちろん社会にも!あ、ちょっと法学者っぽいこと言うてしもた。
ちょっと法学者っぽくウンチク言いますと、ラグビーでは競技するときの規則をルール(Rule=規則)といわず、ロウ(Law=法律)といいます。いや、別に知らんでも死にません。そして、ルールとロウの違いを説明しようと思ったら、大学の授業になってしまうので、この連載では無理です(笑)日本では、これらの言葉を明確には区別してないので、ルールで問題ありません。
ラグビーには「ラグビー憲章」というものがあります。細かいルールを知らなくても、哲学であるこのラグビー憲章を知っていると、がぜん楽しくなるかもしれません。ルールの前に、ラグビーをする原則として、すべての競技者が大切にしないといけない5つのこと、「品位(Integrity)」「情熱(Passion)」「結束(Solidarity)」「規律(Discipline)」「尊重(Respect)」です。細かいルールを知らなくても、この5つのことに照らしてみると、レフリーになった気分になれます。
というわけで、そのお兄さんが反則をとられたのは「情熱がない!」から。
「あれ?あの選手、やる気(情熱)がないように見えるなぁ」、とか「うわ、あんな風に相手の選手をののしって、品位がないなぁ」とかは、場合によっては反則をとられます。
ラグビーのレフリーの世界では、こんな言葉があります。「ルールよりゲーム」。ん?ルールよりゲームが大事なの?って、ちょっと意味がわからないですよね。じゃあ何のためにルールがあるのよー!って。これは、実際の試合でもよくあるのですが、決まり事であるルールに照らして判断するのではなくて、ゲーム自体を尊重することがよくあります。ラグビーのルールに違反していても、ゲームに参加している味方と相手方がお互いに納得できるなら、そしてレフリーがそれを認めるのなら、反則の笛は吹かないんです。
そしたらレフリーいらんやん!と思うかもしれませんが、そもそもレフリーって仲裁人みたいなもんです。野球やテニスの審判はアンパイアといいますが、これは二者択一のことを白黒つける人っていう意味なんです。線から出たか出てないか、みたいな。ラグビーにはタッチジャッジという人もいますが、これはボールが線の外に出たのかどうか、またHポールといわれる棒のなかにゴールキックが入ったかどうかなどの二者択一を判断(ジャッジ)する人です。これに対してレフリーは、もめた時に両者の仲裁をしながら、試合がスムーズに続けられる手助けをする人なんですよ。
そんなわけで、ラグビーのルールは、わかりにくいってよく言われますが、大らかに観ていただくのが一番楽しいと思います。知らんけど(笑)。
イラスト/村上テツヤ