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介護食は作る側も受け取る側も「負担感なく」が大事

東京・表参道で料理教室「アトリエ・グー」を主宰する料理研究家の林幸子さん。数ある著書の中でも、「親に作って届けたい、つくりおき(大和書房)」は、離れて暮らす高齢親の食事を心配する人たちに人気の1冊です。林さんのお届けごはんは、ゆるく、楽しくがモットー。ユニークな介護食のアイディアが見つかります!

お話を伺ったのは

林幸子
林幸子さん
料理研究家
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「グー先生」の愛称で親しまれる、料理研究家。科学的な分析と確かな技術から、個性豊かな創作料理を次々と考案。食材の新たな魅力を引き出している。 明るく親しみやすい人柄にファンも多く、TVや雑誌等のメディアにも多数、出演。主宰する料理教室「アトリエ・グー」もキャンセル待ちが出る大人気

 

「親つく」はときどき娘から届くお楽しみ

林さんは、結婚後、東京で同居していた夫の両親と、大阪に住む実父を見送りました。現在、親と呼ぶ存在は、大阪の介護施設で暮らす96歳の母親のみに。両親が健在で二人暮らしをしていた頃から、母親が一人暮らしとなり、介護施設に入るまでの20年余り、林さんは「親に作って届けたい、つくりおき」、略して「親つく」を届けていたそうです。

 

「と言っても、私の『親つく』は、定期的に送り続けていたわけではないんです。母も、それがないと食べるものに困る、というわけではありませんでしたから。義務となってしまったら、つらくなるので、私が都合のいいときに「おいしかったから食べてみて」というくらいの感覚で、勝手に送り付けていただけなんです」

 

母親は2年前、94歳まで自宅で一人暮らしをしていたそう。当時は「腰が痛い…」というような不調はあるものの、認知機能に衰えはまったくなく、身の回りのことは自分でできる、元気なおばあちゃんだったそうです。食事も、ふだんは自分で調理をしたり、近所に買い物に行って、自分好みのお惣菜を買ったりもしていたようです。

 

ゆえに、林さんがクール便でお母様に送る「親つく」は、言ってみれば、「娘からときどき届くお楽しみ」のようなもの。高齢になると、作る料理はどうしても同じものばかりになってしまうし、栄養も偏りがちなので、林さんは「母親が作らないだろうな」と思うものを作って送っていたそうです。

 

手軽に作れて栄養バランスのよいおかずを

林さんおすすめの、お楽しみ感覚でゆる~く続けられる、「親つく」メニューをいくつかご紹介しましょう。

 

「牛肉とれんこんの味噌炒め」
牛肉とれんこんの味噌炒め
メインになるおかずは、肉や魚などのタンパク質源に野菜もプラス。これ1品あれば副菜や付け合わせがなくてもOKというのがうれしい

 

「鮭のねぎチーズ焼き」
鮭のねぎチーズ焼き
保存容器にじゃがいも、鮭、青ねぎの香味を添えたチーズを重ねて入れて、電子レンジで加熱。冷めたらそのまま保存できるので、手軽に作れる

 

「あさりとセロリと春雨のアジア蒸し」

あさりとセロリと春雨のアジア蒸し

オイスターソースとナンプラーを使ったアジアンテイスト。普段の味付けとはちょっと違ったものも喜ばれます。シャキシャキとした噛み応えがあり、咀嚼力アップ

 

 

なお、「親つく」には気をつけたいポイントがいくつかあります。

 

1)冷凍はせず、基本、冷蔵で

 

林さんの「親つく」は基本的に冷蔵で。冷凍にすると「解凍が面倒」だったり、「まだ食べなくてもいいか」と冷凍庫に入れっぱなしになってしまったりします。久々に実家にいくと、「いつ作ったのか不明のおかず」が冷凍庫からたくさん出てくる…なんてことにも。

 

2)分量は原則少なく。臨機応変に調節できるとベター

 

基本は少量ずつ、食べきれるサイズにします。「おいしかった」「もう少し食べたいな」というくらいの量に。ハンバーグは、体調によって大きさを選べるように、大小さまざまなサイズを作るようにしました。

 

3)容器はあえて「使い捨て」でストレスフリー

 

電子レンジOKの使い捨て容器を使用するようにしました。容器を洗うのは高齢の親の場合、負担になることもあります。また、使用済みの容器を回収するのは、自分の負担に。安価な百均のタッパーでもよいのでは?と聞かれることもありますが、物を捨てるのが苦手な年代の親だと、それさえも捨てられず、どんどんたまっていく傾向があるので要注意。また、ふたが開けやすいものを選ぶことも大切です。

 

4)食べ方の手順は容器に貼り付けて

 

温め方や、たれをどう使うか、など。別添の手紙に食べ方の指示を書いても、高齢の親は見落としたり、食べる際には忘れていたりすることも多いようです。ちょっとした手順の伝言は、マスキングテープに書いて、おかずを詰めたふたに貼って。

食べ方の手順は容器に貼り付けて

和菓子に添えられた「手作りやで~♪」のメッセージが楽しい

 

5)食べ慣れた味つけに

 

ベースはかつおぶしと昆布でとっただしを使用。特別凝った料理ではない、ごく普通の家庭料理ですが、だしにはこだわり、粉末だしやブイヨンキューブや化学調味料は使いません。ミネストローネなどの洋風の料理もベースは和のだし。実家の食事は基本、和食だったため、親にとってなじみのある味に。たまに、少し冒険した味つけにするのもよいですが、基本は食べ慣れている味に。また、意外といちばん喜ばれたのは、ペットボトルに入れただし。だしがあると、ちょこちょこっと、自分で好きなおかず作れる、と重宝したようです。

 

6)自分に無理がなく、親に押しつけにならないように

 

そして、「親つく」でいちばん大切なことは、親に対して「押しつけにならないこと」だと林さんは言います。「せっかく作ったのに!」とか「なんで食べなかったの!」などと言うのはNG。こうした言葉をつい言ってしまわないようにするためにも、「自分が無理しないこと」が何よりも大切です。

 

親の三食を賄おうということではなく、親の気分で食べても食べなくてもOK、くらいに。自分にも無理のないスタイルで。「おいしくできたから食べてみて」「自分のうちの分を作るついでに」といった感覚で、気楽に取り組むのがよいようです。

 

取材・文/瀬戸由美子

 

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