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40代、50代は最も不幸な世代⁉ だから「幸福学」を学ぼう

「どうすれば人は幸せになれるのか?」という人類の命題ともいえる研究を行っているのは、「幸福学」の第一人者、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司さん。では、悩み多きOurAge世代が幸せを手に入れる方法とは?前野先生、教えてください!

前野隆司
前野隆司さん
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授兼武蔵野大学ウェルビーイング学部長
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1984年東京工業大学卒業、86年同大学修士課程修了。キヤノン株式会社入社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。2024年より武蔵野大学ウェルビーイング学部長兼任。研究領域は、幸福学、イノベーションなど。

幸せも健康と同じ。気をつけることで、不幸は予防できる!

 

――幸福について、科学的に解明するのが「幸福学」ですよね。前野先生、もう少し詳しく教えていただけますか?

 

幸福学は、統計解析という、アンケート結果をもとにした科学的手法を用いて、幸福感が高い人はどのような人なのかを導き出す学問です。

 

心理学の領域では、1980年頃から主観的ウェルビーイングと呼ばれる研究が始まっていました。そこでは、「自己肯定感の高い人は幸せである」「笑顔になると幸せになる」「感謝をすると幸せになる」といったことが判明していて、科学的にも説明できるようになっていったのです。

 

ただわかってはいたのですが、一般の人にはあまり広まっていなかった。私が研究している幸福学は、そういう心理学による基礎的な幸福の分野と、そこからさらに人々を幸せにするための製品や職場、街づくりといったところにも応用できるものです。

 

――なるほど。前野先生はもともとキヤノンで、カメラのモーターを開発するエンジニアだったそうですね。そこからなぜ、幸福学をご専門とするようになったのですか?

 

私はもともと工学系出身なので、科学でわかったことを世の中に広めることに興味があったんです。例えばカメラにも、快適な心地よさに加えて、人が幸せを感じるような心の設計も入れるべきではないか、と。もちろんカメラのような物体ではなく、職場でもサービスでも同じです。「快適な家」が設計できるように、「幸せな家」というものも設計可能ではないかと思ったのです。

 

――設計できる、ということは、幸福は目に見えない曖昧な概念ではなく、能動的につくっていくことができるもの、ということですか。

 

はい。例えば健康については、多くの人が体にいいものを食べたほうがいいとか、適度な運動が必要とか、いろいろな知識をお持ちですよね。予防医学のように幸福も、どんなことに気をつけていけばいいのかがわかり、さらにつくっていくことができる時代が来た、ということだと思います。健康という視点のある人とない人では、「ある人」のほうが生きやすいように、漠然としていると思われていた心の幸せも、視点を持つことで生きやすくなるわけです。

 

――健康と同じ、というのはわかりやすいですね! ぼんやりと受け身で生きているより、人生に幸せの要素を能動的に組み込んでいく視点を持つほうが、確かに幸せになれる気がしてきました!

40代、50代は「最も不幸な世代」!?

 

――では、人生不安だらけの40代、50代女性も、幸福学を学べば幸せになれるでしょうか?中高年というと、年齢を重ねるほど変化に弱くなって、心も頑固になって、素直さも失われていくイメージですが…。幸福学的には、そのへんは問題ですよね?

 

そうですよね。素直な人のほうがもちろん幸せです。変化を拒む頑固さというのは、幸せを諦めているのと同じことですから。先ほどの健康でいえば、「太っちゃったからもう仕方ない」という人と、「運動して痩せよう」という人、あとはもともと気をつけていて、太っていない人とがいます。そういうふうに、健康には格差が生まれる。幸せも同じで、諦めている人は残念ながら不幸せなままですし、運動をするように気をつけて、周囲の人に挨拶をしたり感謝をしたり、ポジティブになろうと気をつけて目指していれば、幸せになっていくことはできるわけです。

 

――先生のおっしゃることは理解できます。ただ、40代、50代の人の多くは、ストレスが多くて疲れてもいて、「ポジティブに」とか「自己肯定感を高めよう」というワード自体に「そんなこと言ったって!」と抵抗感が出る世代でもある気がします。ああ言えばこう言うというか…素直じゃなくてすみません(汗)。

 

いえいえ(笑)。おっしゃる通り、40代、50代は「最も不幸な世代」という研究データもちゃんとあるんですよ。

 

【年齢と幸福度の関係】

幸福度グラフ

 

イギリス経済誌「The Economist」で紹介された「The U-bend of life」。出典はアメリカのサイエンス誌「PNAS」

 

――わぁ〜!40代、50代はまさに「底」じゃないですか。

 

そうです。諦めず、気をつけなければならない世代です。要は、「中年以降は太りやすいから、健康に気をつけましょう」ということと、まったく同じ構造です。中高年というと、仕事も大変、子育てや介護も大変、地域社会の付き合いも大変、そして経済的なことへの不安など、社会のちょうど真ん中で頑張っているからこそ、不幸に陥りやすい人たちなんですよね。それだけに、どうか投げやりにならず、気をつけていきましょう、という点は強調したいですね。

60代以降、幸福度が上がるメカニズム

 

――先ほどのグラフをもう一度よく見ると、40代、50代は確かに不幸のどん底ですが、60代からどんどんアップしていっていますよね?これはどういうことなのでしょう?

 

年を重ねるほど、楽観的になれることが、理由のひとつでしょう。これは脳の仕組みからもいえると考えています。どういうことかというと、脳は若いときほど、細かいことが気になる神経回路の構造を持っていて、何かと完璧主義に走りやすい。しかし年をとると、悪く言えば脳の働きが老化するため、細かいことを考える神経回路は劣化していくんですよ。その代わり、今度は全体がよく見えるようになってくる。つまり、細かいことが考えられない脳機能を獲得して、より楽観的になっていけるということですね。

40代~50代は不幸だが60代以降幸福になる

 

――楽観性は性格だと思っていました。でも、獲得していくことができるんですね!私たちOurAge世代は、今は不幸のどん底かもしれませんが、これから幸福を取り戻して、幸福をつくっていく権利があるのだと思っていいのかも?

 

そうですよ!底の世代とは申し上げましたが、言葉を変えれば「伸びしろ世代」です。幸福学の見地では、科学的に見ても、OurAge世代の人はここから幸せの曲線が上がるようになっているんです。だから自信と勇気を持って、どうぞ安心してください。あとはいかに早く幸福を取り戻すのか。そこは積極的に学んでいただくことをおすすめします。

 

――健康も幸福も、自分でつくることができるのであれば、取りかかるのは早いほうがいいですよね。ぜひ、40代、50代女性のための幸福学を教えてください!

 

 

イラスト/midorichan 取材・文/井尾淳子

 

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