石井さとこ
歯科医師・口もと美容スペシャリスト。歯のホワイトニングを日本で広めた第一人者。女性歯科医師ならではの、歯と体を美しく保つための食事や、歯が美しく見える口もとメイクのアドバイスに定評がある。現在「口もとビューティ」について記した、「ご機嫌な口もと」を連載中。最新刊『マスクしたまま30秒!! マスク老け撃退顔トレ』(集英社刊)は、テレビなど各メディアで話題になっている。https://s-d-m.jp/talents/ishii-satoko/
<悩み>
夫から、起床時の口臭を指摘された時がありました。マウスウォッシュを使用しても改善せず、自分なりに調べたところ、「歯と歯の間の汚れが原因」というのを目にし、フロスを使うようになりました。起床時の口臭は改善してきたものの、最近は一本の歯の間からだけ、歯槽膿漏を疑う不快な臭いがするのが気になっています。 (40歳・会社員)
<回答>
セルフケアは続行しつつも、速やかに歯科医へ!
「朝いちばん歯磨き」を習慣に
いただいた悩みの中には、口臭にまつわる重要なポイントがいくつかありました。ひとつずつ整理して、お答えしていきますね。
まずひとつめは、朝起きた直後の口臭。これは起床時口臭という生理的な口臭で、誰にでも起こりうるものです。原因は、夜間の睡眠中に唾液が半減すること。そこから嫌気性菌と呼ばれる歯周病菌が活発になることで、臭いが発生するというメカニズムです。睡眠時、口呼吸になっている方は、特に起床時口臭が強くなる傾向にあります。
ちなみに朝の口の中は、便10g分の雑菌に相当すると言われるほど、菌の温床になっている事実をご存じですか? つまり「夜寝る前に歯磨きをしたから、起床時は汚れていないはず」というのは大きな間違い! 私はクリニックの患者さんにはいつも、朝いちばんの歯磨きを推奨しています。
相談者さんは現在、起床時口臭は改善されているとのこと。でも朝いちばんに歯磨きをし、口腔内に刺激を与えると、唾液量が増えて細菌も減らせるという一石二鳥の効果があります。今後の口臭予防のためにも、ぜひ習慣にしていただきたいなと思います。
マウスウォッシュやフロスの活用は◎
ただし、あくまでも「プラスアルファ」
ご自身で積極的にお調べになり、いろいろと活用されているのはすばらしいことですね。起床時口臭については、フロスの使用で改善されたようですね。私も日々、いろいろなケア用品をあれこれ試して使っています!
↑仕事柄、いろいろな口もとケアグッズをお持ちのさとこ先生。こちらは世界各国のフロス。カワいくて思わず集めたくなる⁉
↑こちらは歯ブラシ。ひと口に歯ブラシといっても、様々な形状が
ただ、間違えてほしくないのは、マウスウォッシュは、あくまでもプラスアルファのケアである、ということ。起床時口臭について、また次に書かれている歯槽膿漏疑いの歯についても、自己診断をされている点がとても気になりました。「一本の歯の間からだけ、歯槽膿漏を疑うような不快な匂いがする」とのことですが、まずは速やかに、歯科医を受診してください!
なぜならば、口腔内トラブルの自己診断は、非常に危険だから。ご自身では「この歯!」とは思っても、実際に医師が診ると、その前後の歯が虫歯になっていたり、歯茎の炎症だったり、実にさまざまな原因が見つかるもの。文面から推察しますが、おそらく定期的な検診をされていないのかもしれませんね。もし、口臭について気になったら、歯科医の検診を受けるのもいいでしょう。痛みなど具体的な症状のないときこそ、早期発見につながります。
受診して歯石をとるクリーニングやブラッシング指導、歯周ポケットの深さを測ってもらうプロービングを行うなど、口臭の原因は医師と共に探るようにしましょう。
口臭の原因はこんなにたくさん
さて、甘く見てはいけない口臭ですが、その原因にはどんなものがあると思いますか? 実は、皆さんが思うよりも多岐にわたっています。今回の相談者さんのように、口臭対策が自己診断になりがちなのも情報不足が原因ですから、仕方のない側面もありますよね。
そこで最後に、口臭の代表的な原因、種類についても、お伝えさせてください。
1)病的口臭
体の病気が原因で口臭が強くなる。糖尿病に罹っているときは、甘酸っぱいアセトン臭が特徴。
2)生理的口臭
起床時の口臭など、日内変動する口臭は朝食後や歯磨き後など、自然に消失していく口臭。誰にでも起こりうるもの。
3)歯周病
歯槽膿漏によって、歯周ポケット内で増殖した細菌が口臭のもとになる。口臭で最も疑われがちな原因ではあるものの、中等度以下(4度以下)では臭いは出にくい(歯槽膿漏が相当進行していない限りは口臭もひどくならないため、病気自体の発見が遅れることも)。
4)心理的な原因
ストレスによって唾液がネバつき、臭いの原因になる「ストレス口臭」や、実際は臭くないのに、口臭を気にしすぎてしまう「自臭症」など。
たんに口臭といっても、これだけの原因が挙げられます。最近では、歯周病や虫歯などの口腔内環境が、糖尿病や心臓病、脳梗塞、がんなど大病のリスクとも関連すると言われているほど。決して脅しているわけではありませんが、口臭も自己診断したり放置したりせず、どうか定期的な歯科検診の動機づけにしていただけたら…と願うばかりです。
取材・文/井尾淳子
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