2021年7月26日、奄美大島、徳之島、沖縄北部及び西表島(鹿児島、沖縄両県)が世界自然遺産登録されました。
この中で西表島は、日本最大のマングローブ林があり、国指定特別天然記念物であるイリオモテヤマネコはじめ、数多くの絶滅危惧種が生息する島です。
一方で、原生林の奥にある豪快に水の流れ落ちる滝を訪れたり、マングローブが生い茂る川を遡っていくというダイナミックな自然のアクティビティは、他にはない魅力を持っています。
日本初のエコツーリズムホテルを目指す「星野リゾート 西表島ホテル」でのネイチャーツアーやレクチャーへの参加は、大自然での経験を通してその大切さと価値を守る姿勢 を考える機会になりました。
石垣島からフェリーで約45分、緑の島かげが見えてきます。到着した上原港から車で10分。ロビーから南国の雰囲気に包まれた「星野リゾート 西表島ホテル」。予約時に、客室には歯ブラシやヘアブラシなどのアメニティのないこと、またペットボトル入りのミネラルウォーターの代わりにウォータージャグを置き、館内にはウォーターサーバーを設置してあることなどは聞いていました。
そんな環境への配慮をしつつ、数多い固有種や絶滅危惧種が生息するこの島の「生物多様性」を知ってもらおうとホテルの敷地にあるジャングルを歩いたり、マングローブ群落を目指すイリオモテガイドウォーク(無料)やイリオモテヤマネコの学校(無料)のレクチャー、またカヤック(有料)や秘境の滝を訪れるアドベンチャーツアー(有料)など、いろいろなアクティビティが提供されています。
さっそく約45分の「イリオモテガイドウォーク ジャングルコース」に参加しました。これってホテルの敷地内?と驚くジャングルが広がっています。他の木に着生する植物オオタニワタリ、巻きひげをからみつかせるトウツルモドキ、大きな葉を広げるハブカズラなどを教えてもらい、植物や動物の共生の話を聞きながら歩くと、自然ってなんて偉大なシステムなの、とジャングルがまた違って見えてきます。
西表島も含む八重山は、食材も珍しいものがいろいろ。レストランのディナーブッフェでは、アジア諸国のいろんな料理にそんなカマイ(イノシシ)やガザミ(ワタリガニ)などが並びます。ジーマーミー豆腐や海ブドウ、沖縄和牛などおなじみの沖縄の味も満喫。
食後、西表島の固有種で島内にわずか100頭ほど、という絶滅危惧種のイリオモテヤマネコについてのレクチャー,
「イリオモテヤマネコの学校」に参加。どんな動物なのか模型や声の録音で知り、交通事故でなくなるロードキルを防ぐためにどんな注意を払うかも聞きました。なるほどそのために看板や柵、道路を横切らないで済むヤマネコトンネルなどが設けられているのですね。
翌日は、ネイチャーガイドにジャングルの奥深くにあるゲータ滝に案内してもらいます。所要時間は3時間ほど。水に入っていけるフェルトブーツや防水パックを装着して出発。原生林を分け入り、川を渡り、途中には猛毒の植物が生えていたり、ジャングルのトレッキングは、ガイドなしでは歩けません。
森の奥深く、何段にも水が流れ落ちる滝にたどり着いた時には感激。そこから見える、海の眺望にも息を呑みました。また途中、滝や小川のせせらぎを聞きながらのお弁当の時間は、森に抱かれているような気がしました。
そこまで行ってから分かる野生の森の素晴らしさ。また、植物や動物などが自然にあるべき姿を保てるように気遣ってこそ、この素晴らしさがあるのだとしみじみ。そして、ゴミを捨てない、植物などを採ったり傷つけないなど自分のできることは守ろうと思えたのでした。
取材・文 / 小野アムスデン道子