こんにちは小野アムスデン道子です。やっとまん延防止等重点措置も全面解除。北海道にも春旅の季節がやってきました。
星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」。北海道初進出と話題の「界 ポロト」は、2022年1月14日に開業したばかり。私は2月の冬シーズンに訪れましたが、日本でも珍しい「モール温泉」(植物由来の有機物を含有する、とろみのある湯が特徴)で、湯上りの肌がぐんときれいに。雪解けすれば湖面一望も近い春旅に、ぜひいかがでしょうか。
「界 ポロト」は、北海道南西部の白老郡にある、ポロト湖畔に建てられました。JR新千歳空港駅から約3分の南千歳駅で乗り換えて、そこから特急で約40分のJR白老駅へ。駅から徒歩10分で到着。車なら、新千歳空港ICより約40分で着きます。ポロト湖の水を引き込んだアプローチ、白樺林を抜けるようなエントランスは、北海道の自然に包まれた気分。
「界 ポロト」から歩いて10分のところには、「民族共生象徴空間(ウポポイ)」があります。アイヌ民族の文化や歴史を展示した、日本初の国立博物館「国立アイヌ民族博物館」も併設。イオマンテ(クマの霊を送る儀式)のことを知り、そこで着用された美しい文様の儀礼衣装などを見ると、自然と共に生きてきたアイヌ民族の風俗にとても興味がひかれます。
実際にアイヌの伝統的家屋「チセ」で口承文芸やアイヌ語が披露されたり、楽器演奏や刺繍体験などのプログラムもいろいろ開催されています。体験交流ホールでの歌や踊りの伝統芸能上演は必見。大人1,200円、高校生600円、中学生以下は無料です。
「界 ポロト」もそんなアイヌの民族文化や自然観を、館内に取り込んでいます。全室がレイクビューの客室には、チセにあったような四角の炉をイメージしたテーブルが置かれ、腰壁やクッション、壁のアート作品なども、アイヌ文化を感じさせるモチーフが飾ります。
全42室のうち3室ある特別室には、ポロト湖を見渡せるテラスと露天風呂付き。私が泊まった時は、まだ一面に氷の張ったポロト湖でしたが、それもまた幻想的で美しい光景でした。
ここから見える湯煙りの立つとんがり屋根の建物が、△湯がある「とんがり湯小屋」です。中はアイヌ建築の三角の丸太組み構造。茶褐色のモール温泉は、天然植物由来の腐植質の有機物を含んで、とろみを感じます。
内風呂は、源泉かけ流しの「あつ湯」と、ゆったり浸かれる「ぬる湯」の2つの湯舟があり、露天風呂は湖面に向かって泳ぎ出せそう!もう一つ、洞窟の中に光が差し込むようなドーム型をした円形の○湯もあります。2つの湯で、湯上りの肌がつるすべ美肌になるモール温泉をゆっくり堪能できます。
北海道の美食といえば新鮮な魚介。アイヌ民族が交易に使っていた丸太舟をイメージした器に、お造りや八寸が盛られてきます。特別会席では、北海道でも貴重な毛蟹や帆立貝を、魚介を煮込んだブイヤベーススープでいただく醍醐鍋が登場。身体に沁み入る濃厚なスープは、〆にチーズを投入して、おじやでいただくとまたおいしい!
美肌の温泉と北海の美味でゆっくりした翌朝は、湯小屋で開催される「丹頂鶴のはばたき体操」に参加しました。呼吸法と丹頂鶴の動きを取り入れた体操で爽やかに目覚めたら、そのままもう一風呂というのもおすすめ。
朝食の後に、界名物の「ご当地楽」である「イケマと花香の魔除けづくり」を。ご当地楽とは、それぞれの地域の魅力を伝統工芸、芸能、食などで満喫できるおもてなしのこと。界 ポロトでは北海道の数種類のハーブを組み合わせて、イケマと呼ばれるアイヌ民族の魔除けを作ります。ほのかな香りもして、いい思い出になります。参加は無料で、夕方から夜に3回と午前中に2回催されています。
イケマ作りをするロビーからもポロト湖は一望。ポロトは、アイヌ語で大きな沼を意味するそう。緑に囲まれた湿原の中に静かに水をたたえるポロト湖の眺めに心癒される旅となりました。
取材・文 / 小野アムスデン道子