私はなぜか昔から、「少女マンガ界の女王」とか、「恋愛マンガの女王」とか、「女王」呼ばわりされてきました。でも、私がなりたかったのは「姫」で、「女王」になる野望なんかまったくありませんでした。
そもそも私は、王道の少女マンガなんて描いたことないし、いつもアウトサイダーだったから、女王っていうキャラクターではないと思うのよね。なりたいのは、美空ひばりじゃなくて、浅川マキだったのよ(笑)…ってやっぱり姫じゃないなあ、この時点でもうズレてるわ。
ちょっと尖っていて、知る人ぞ知るみたいなポジションが良かったのに、気がつけばど真ん中の「女王」。
何が嫌って、「女王」は責任がとにかく重いんです。周囲が求めるものが大きいから、つねに努力しないといけないし、全体を代表する立場だから、みんなを引っ張っていかないといけない。しかも「女」だから見かけの美しさもそこそこ要求されたりして。民衆は「女王」というだけで厳しい目で見るから、たぶん王の3倍くらい能力がないと務まらないのよね。
その点、「姫」っていうのは気楽ですよ。気楽だわさ。気楽だ!
なんてたってまず責任がない!途中で「やーめた」と言っても「しょうがないなぁうちの姫は」と許してくれるし、いけ図々しいことも言える。人から与えられたものに文句を言っても許される存在が姫。そしてなおも厚かましく「もっと頂戴」と言えるのが姫なんです!(女王に比べてですよ)
お行儀の良さやかわいさは必須だから、そこは頑張らないといけないけど、女王に比べたら自由でいいわ~。まぁ簡単に言えば姫ってマスコットみたいなもんですからね、国民の運命も命もかかってない…う〜ん…現実では政略結婚に使われそうな気がするが、漫画界の話ですからね。
今度、生まれ変わったら「マンガ界の姫」を目指しますか?って聞かれたら、秒速で断ります!マジでいや!
好きだからできたけど、漫画家って、漫画家って…本当に大変な仕事で、無理のしすぎでボロボロになりました。2.0あった視力は今や0.3くらいで、おまけに乱視で白内障(これは歳だから)。両眼が緑内障で片方はほとんど見えない!腱鞘炎もあるし…ほぼ廃人コース一直線(悲)。
良いも悪いも漫画家人生は満喫したので何の悔いもありません。
「有閑倶楽部」集英社文庫<コミック版>
取材・文/佐藤裕美