一条は、よく人からこう言われる。 「いいですよねぇ、一条さんは。いつもおいしいものばかり食べて」「おいしいものばっ かり食べているから、さすがに舌が肥えてますね」って。
確かに、舌も肥えたが体も肥えましたぞ。なので人生死ぬまでダイエットなのだ。 仕事の会食で、若い頃から年に不似合いな店に連れていってもらったし、旅行はいつも、おいしい国のおいしいものを食する旅と決めているから、舌にはそこそこ自信がありまする。
この前見ていた YouTubeの話だけど、「海外旅行のいちばんの目的は?」というアンケー トを世界中から取ったら、日本だけいちばんが違うって。他の国は文化とか景色とかだけ ど、日本だけダントツで「食事」!! えっ?当然でしょ!? それとコレも納得。「普段穏やかでめったに怒らない日本人を怒らせるには?」ふん ふん、なんだろ? 「まずい飯を一週間食べさせる」ぐえぇ━━‼️いやいやいや、一条は2食目もまずければ怒るな。少なくとも機嫌はかぁなり悪くなると思う。
ということで、日本人の食に関するこだわりと執念は異常らしく、そういう意味でいうと 一条は平均的な日本人だと思います。まあとにかく、舌が肥えるのは幸せなことなのか…といわれればね…う〰〰微妙と言うか。結果、ちょっと淋しい人生にだんだんなっていくというか。好きが増えると人生は 幸せで、好きが減ると寂しいわよね。 それは不幸じゃない?
その定義に従って考えると、おいしいものを食べれば食べるほど、おいしいものが普通になって、今までおいしいと思っていたものがたいしておいしくなくなるのよ。つまり 舌が肥えるということは、どうでもいいかまずいものがどんどん増えていくのよ━━‼️
子どもの頃、「なんておいしいんだろう!」と思っていたあの七色のチョコレート。大人になって食べてみると、なんかザラザラしてカカオ率低いし、人工甘味料の甘さは鼻をつくし、全然おいしくなかった。子どもの時は経験値がないから何を食べてもおいしい けど、大人になって経験値が増えると、ちょっとやそっとじゃ感動しなくなるのよ━━!! 不幸だ。
昔は感動した本場のフレンチやイタリアンが、何と今じゃ日本の方がおいしいし、チョコレートだってベルギーより日本の方がおいしいのよ! アイスクリームやクロワッサンもそうだし、どこまでもおいしさに創意工夫研究を重ねまくる、食の変態日本人はすでに無敵の存在です。 ミシュランガイドの星の数は、今や食の本場であったパリより、東京の方が多いのよ! 世界一よ! ちなみにダントツ1位東京、2位パリ、3位京都、4位大阪、5位ロンドン、6位ニューヨーク、7位香港、8位シンガポール、9位上海、10位北京です(編集部注 2023年のデータによる)。どや〰〰
海外旅行に行く必要なしだよ。それにしてもパリ、ニューヨークは納得だけど、まずいと評判だったロンドンが大健闘です。東アジアも頑張ってるね。シンガポールが急においしくなったのは、イギリスから香港が中国へ返還された時に、嫌がった香港の名シェフがシンガポールにたくさん逃げたからみたい。
このように、おいしいのが当たり前の日本で舌が肥えるということは、不幸なことなのです! とても寂しいことなのよ!
ようするに幸せって、うっかり次元が上がると、たいしたものでは満足できなくなって、 どんどん贅沢に溺れ傲慢になって、より高い次元を目指したくなるか、こんなものかと諦めて、結局不満が溜まり、不幸が増えるという話。だから大金持ちは変態が多いのね…、人の業というものはなんと罪深いのであろうと、つくづく思う一条でした。ああ今、夜中の2時、鰻が食いたい。
ダイエット 知らずで、いくら食べても太らない こいつが羨ましい
トーク集「おしゃべりな唇」1998年10月刊より
取材・文/佐藤裕美
記事が続きます
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