気持ちよく暮らす「生活のしきたり」
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすため、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
ここでは、各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【おいしく正しく食べるための「習慣」】では、食べ物をしっかり、そして楽しく食べることに関するしきたり22~43をご紹介します。
今回は、しきたり22:四季折々の、旬の出盛りの食べ物を味わう、についてです。
●おいしく正しく食べるための「習慣」●
四季があることは、食材にも四季があるということです。四季は身体にも影響があり、身体をスムーズに動かすためにも、四季に合わせた食べ物を身体に取り入れることが必要です。
食べられればなんでもいいのではなく、四季に合わせた食べ方、取り入れ方を考えなければなりません。食べ物に困らないからこそ、食べ方、食材の選び方が大切になっているのです。
食べ物をおいしく、楽しく食べることも大切です。姿勢、 箸の持ち方、食べる順序なども、昔から伝えられた習慣です。これらを守ってこそ、おいしく、そして楽しくいただくことができるのです。
食べるのは、基本的な生きる姿勢です。食べることは身体を維持する当たり前の行為です。生きること=食べることともいえるわけですから、シッカリ、キチンと選んで、最後まで残さず食べる、これは、なにより大切な家庭のしきたりとしなければならないでしょう。
しきたり22
四季折々の、旬の出盛りの食べ物を味わう
自然界の四季は、食べ物にも四季をもたらしてきました。最も収穫量の多い時期を旬とも呼び習わしてきました。それは自然を相手に食べ物を生産し、それとともに暮らしも循環させていたからです。
いまは科学技術及び化学が進歩、発展し、自然を相手にして食べ物を生産してはいるものの、そこに人工的な手も加えながら、より生産量を増やしたり、旬以外の季節にも収穫ができるようにしてきました。
おかげで、さまざまな食べ物が年間通して生産、収穫が可能になり、それは流通を経て、店頭にいつでも並ぶようになったのです。自然とともに暮らしていたときには、店頭に並ばない食べ物もあったわけですが、どの食べ物もいつも店頭に並んでいるとなると、この食べ物はいつが旬だったのか? さえ忘れてしまうことにもなってしまったのです。
ところで、旬とはいったいなんでしょうか? 食べ物の最も味がよく、食べごろの時期のことで、それは出盛り時期でもあるのです。出盛り、つまり収穫量の多いときで、価格も安いということです。さらに旬の食べ物は、四季とも、身体とも関係が深く、密接に関わり合っています。食べ物が昔は薬であったことを思い起こすとよくわかります。旬の食べ物を身体に取り込むことで、身体がイキイキしてくるという働きをもたらしてくれるのです。
例えば、晩冬から初春に出盛りとなる、梅、レモン、柚子といった酸味の豊富なかんきつ類には、肝機能を高める働きがありますし、晩春から初夏にかけて旬のよもぎ、うど、筍、たらの芽、お茶など苦味を多く含む食べ物は、心機能に影響をもたらす働きがあるといいます。
このように、食べ物の旬には、身体を養うだけではなく、身体の機能を高める働きがありますから、昔から四季に合った旬の食べ物を味わうのが、私たちの食生活だったわけです。旬を見失ったいまでは、何を食べてもいいように思われますが、旬の食べ物は身体にとって、栄養でもあり、薬でもあり、機能強化でもあるのですから、つとめて旬を選び、味わいたいものです。
四季と旬の食べ物と機能の関係
●晩冬〜初春 かんきつ類、レモン、梅、柚子、酢、ヨーグルトなど…肝機能を養います
●晩春〜初夏〜夏 よもぎ、うど、筍、たらの芽、お茶、春菊、蕗、牛蒡、高菜、青菜、ビール、コーヒーなど…心機能を高めます
●通年(土用) 米、大豆、麦、小豆、芋類、人参、蓮根、茄子、胡瓜、トマト、キャベツ、レタス、鰻、牛乳、肉類など甘味のある食べ物…滋養となり身体をつくります
●晩夏〜初秋 大根、白菜、葱、にら、生姜、紫蘇、酒など辛味のある食べ物…肺機能をよくします
●晩秋〜初冬 魚類、海藻類、貝類など塩辛い味のある食べ物…腎機能に働きます
次回は、しきたり23:身体も気持ちも養う旬の初物を取り入れた食卓を心がける、についてご紹介します。